追放された最高神は元凶と地上で暮らす

天霧 ロウ

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 紺色の空が町の明かりで淡く照らされ、酒の匂いと酔っ払いの大合唱で満たされる頃、ケイオスが風呂の準備をしている間にそっと家を抜け出す。
 ケイオスが案内してくれたおかげで町の構造は頭に入った。いくら神でも万能ではない。扱える力は基本的に自らの権能のみだ。そして不浄の権能は使いどころが限られている。
 幸い教会はまだ開いていた。弾む息を無理矢理整えて急いで中に入ると、祭壇の奥へ駆け寄る。ケイオスの家からはさほど離れていないとはいえ、今のアエリオスは肉体こそ神だが、それ以外はただの人だ。
 薄暗い中なんとか石像の足下に来ると、光の玉へ手を突っ込んだ。瞬間、冷たかった核がカッと燃え上がり、先ほどまで重かった体は嘘のように軽く、薄暗い教会の中も昼間のごとくはっきり見える。なにより自分の後を追ってきたケイオスをしっかり感知できた。
 扉が開かれると同時に振り返れば、月光を背にケイオスの影がアエリオスまで細長く伸びた。

「アエリオス様……」

 状況を察したのかケイオスの声は絶望に濡れていた。
 これでかつて無機質だった自分に近づいたはずだ。しかし、その声になぜか核が痛み、戸惑っている自分がいる。自分のことよりも立ちすくんでいるケイオスが心配になり、まっすぐ歩み寄る。
 目の前までくるとそっとケイオスの頬に手を当て、優しく撫でた。

「心配をかけてすまない」
「……いえ、それよりもお体の調子はどうですか」
 
 力が戻れば淫らな肉体が元に戻ると思ったのは誤算だったようだ。それどころか、ケイオスを前にすると、力を取り戻す前よりも切なく感じるのだ。
 とはいえ、力が大幅に下がったものの万能の権能を取り戻した以上、自分で神力を生成できるようになった。
 それを伝えたらケイオスとのふれあいがなくなる。改めてそのことを考えると核を握りつぶされている錯覚を覚えた。一拍おいた後、できるかぎり平静を装いながら続けた。

「問題はない……が、生成する力が足りぬせいか少し不安ではある。だから、ケイオスさえよければ、今まで通り手助けがほしいのだが、どうだ?」

 嘘を見抜くことに長けているケイオスにとって、この嘘はたわごともいいところだ。それでもじっと見つめてくるケイオスをドキドキしながら見上げる。
 アエリオスの提案はケイオスにとって思いもよらなかったのだろう。教会に飾られている彫像のごとく固まっているケイオスはぎこちなく瞬きをした。

「ア、エリオス様が、望まれるのなら。ぜひ、協力します」
「うむ!」

 いつも迷いがない言葉遣いのケイオスが、ほんのり顔を赤くしてぎこちなく話す姿は新鮮だ。
 甘く微笑み返せば、ますますケイオスの顔が赤くなる。ケイオスが久しぶりに見せるうぶな表情は愛おしさだけでなく、キュンと甘く胸がうずいた。
 頬を撫でるのを止める代わり首に腕を回すと背伸びをしてケイオスの唇に唇を押し当てた。そうすれば、ケイオスがアエリオスを力強く抱きしめてくる。

「ふっ、…、ん、ぅ」

 ぺちゃぺちゃと音を立てて舌を絡めるたびに、お互いの神力が交わる。一方的に与えられた時もじゅうぶん気持ちよかったが、今はその比でない。
 じわっと足の間がぬれそぼり、ズボンに染みていくのがわかる。ちゅっと強く舌を吸われて、ケイオスの唇が離れた。物足りなさに目で追えば、ケイオスが黒い瞳を細めて微笑んだ。

「続きは家でしましょう」
「んむ……」

 ズボン越しに蕾を撫でられれば、じわっと口の中に唾液が溢れる。
 興奮しそうになる息をなんとか飲み込んで、アエリオスは頷いた。



 家につくなり、ケイオスの手がアエリオスのズボンを下ろせば、つーっと糸が引く。ごくっと唾を飲み込む音が耳元で響き、濡れきっている蕾へ早急に二本の指が入ってきた。

「んっ…、ぁ、あっ! んぅう…っ」

 ぬぽっぬぽっと抜き差しされるたびに、愛液がたれ落ち、アエリオスの先端からも滴が滲んだ。
 体はあっけなくほてり、じわっと汗が滲んでくる。ゴツゴツした無骨なケイオスの指の感触に自然と足を広げ、より深く快感を味わおうと腰を突き出してしまう。
 快楽をおしげもなく求めるアエリオスの姿にケイオスが熱のこもった吐息を漏らしながら、耳をやんわり噛んできた。

「あぁ、アエリオス様……、愛液を滴らせるほど俺の指を気に入ってくださったんですね」
「ん、ぅ…っ、ァ、ぃいっ! ぃく、ィくッ」

 無機物のようにいなければと考えても、抜き差しをされるほど思考がドロドロと溶け、早くケイオスのもので中をたくさんついてほしいというはしたない本音があらわになっていく。
 奥歯を噛みしめ、ケイオスの指をぎゅうぅっと締め付ければ、はっきりと伝わってくるケイオスの指の形に興奮して、声にならない嬌声を上げながら中心から盛大に潮を吹いてしまう。荒れた呼吸を整えている間も、子宮がきゅんきゅんと疼いてしょうがない。
 ケイオスに力なくもたれ、甘苦いにもかかわらずすっきりした香り――ケイオスの匂いを堪能していると、ケイオスがアエリオスの耳の先をやんわり噛み、中から指を引き抜いた。ついで愛液が伝うアエリオスのももを撫でた。

「ここで最後までするのもいいですが、続きはベッドでしませんか?」
「う、うむ……。運んでくれるか?」

 ケイオスを見上げれば、ケイオスは玉虫色の光彩をきらめかせながら黒い瞳をうっとりと細めた。

「アエリオス様の望みならもちろんです。ただ、せっかくですから気持ちよくなりながら行きましょう」

 興奮気味にケイオスが告げると前を手早く広げ、アエリオスの膝の下に手を入れると軽々と抱き上げた。そして、滴をポタポタと垂らして無防備にひくつく蕾へ高ぶりぐんっと突き入れてきた。

「ぁあっ! そんな、ぃきなりっ」
「上手に絡みついてきて心地がいいですよ。さぁ、しっかり掴まってください」

 嬉々として告げるとともにケイオスが歩き出す。一歩、また一歩と進むたびに振動が下腹部にズンと伝わった。
 さらに敏感になっている中をケイオスの高ぶりがこすれ、これでもかと張ったケイオスの先端が早く中に出したい言わんばかりに、とちゅとちゅと執拗に子宮を小突いてくる。

「ま、へ…こんな、ぁあ! ぃくの、とまらな、ぃ、~~~~っ」
「とまる必要なんてありません。アエリオス様、わかりますか? 小突く度にアエリオス様の子宮が賢明に吸い付いてるんですよ」

 ケイオスはうっとりと目を細めるとそのことを教えるように軽く腰を打ち付けてきた。
 そうすればすっかり発情した子宮が答えるように、ちゅぱちゅぱとケイオスの先端にしゃぶりつく。さらにアエリオスの高ぶりがケイオスの服に擦れ、より高みへ上り詰めた。

「ぁひっ、ふっ、ぅう゛ぅ! はーっ…、ぁ」

 ぎゅうと爪先を丸めて力強くケイオスに抱きついて耐えるものの、すかさずケイオスが「我慢はだめですよ」と優しくたしなめながら、先端を子宮にぴったりと密着させて揺さぶってくる。すっかり発情している体には強すぎる刺激だ。

「ぃグっ! いっ、く…ぅ!」

 ケイオスの背中に爪を立て、歯を食いしばり強烈な快感を感じ入っていれば、とろけきった中がケイオスの高ぶりをねっとりと締めあげる。そうすれば逞しい雄を余計に感じてしまいアエリオスの中心から勢いを失った熱がとぴゅっと控えめに吹き出す。
 ケイオスの高ぶりを存分に味わいながら、わずかにできた隙間からとろぉっと泡だった滴がたれ落ち、それすら快感となってガクガクと体を震わしてさらに極めていれば、ケイオスが熱のこもった息を吐いた。
 ようやくベッドにつく頃には、アエリオスの理性は溶けてしまいそうなほどグズグズで、汗ばんでべったりと肌に吸い付く服や髪が不愉快だった。
 そのことを察したように、名残惜しげに一度引き抜いたケイオスはアエリオスと一緒にベッドへなだれ込むなり、アエリオスをあっという間に裸にした。そしてケイオスも同じように裸になれば、ほんのり顔を赤くしているアエリオスに覆い被さり、唇を重ねてくる。

「ん……」

 吹きすさぶような快感とは一転、じんわりと染みこんでくる温もりに自然と体から力が抜けていく。舌をたっぷり絡ませて短く息をつく。ついで見つめ合えば、どちらとともなく力なく微笑んだ。

「アエリオス様、愛しています」
「我が輩も愛してるぞ」
 
 今まで何度も耳にした言葉だ。それが今はむしょうに嬉しくてしょうがない。
 慈しみと欲情があいまぜの瞳と目が合えば、アエリオスの核もジワジワ熱くなる。脈打つ核に全身が火照るのを覚えながら、そっと両手でケイオスの首に腕を回して、今一度深く繋がるために引き寄せた。





「アエリオス様、お体の方はどうですか?」
「うむ、問題ない」

 柔らかな日差しが差し込む部屋は心地がよい。大きなふかふかのクッションを背にベッドへくつろいでいたアエリオスはイスを引いてベッドサイドへ腰を下ろしたケイオスに微笑んだ。
 思いが通じたからか、アエリオスの体は新たな命を宿していた。

「ふふ、まさか我が輩が子というものを宿すとは不思議なものだ。我が輩の神力を受けて大きく育つのだぞ」

 真っ平らな腹だが、かすかに感じる新たな核の鼓動に自然と頬がほころぶ。
 神界にいた頃ですら、子を宿した神などいなかった。片割れがいれど、神は個にして完全なのだ。そして、その最たる自分がケイオスとの交じりによって体内に新たな命――本来存在しない神を誕生させようとしている。なにより嬉しいのが、紛れもなくケイオスと愛し合った結果の奇跡と言うことだ。
 自身の腹に手を当てているとケイオスの手が重なり、やんわりと指を絡めてきた。

「ところで、アエリオス様。俺たちの子――ひいてはこの新たな神の名はいかがいたしますか?」
「ふむ、名か……。ケイオスは案があるか?」

 子ができたこととケイオスと改めて家族になれた嬉しさで名前はまだ考えていなかった。ケイオスの指に指を絡め返して尋ねると、ケイオスは「そうですね」と呟いた後おもむろに告げた。

「ヌーサ、というのはどうでしょうか? かつて知恵の神から教えていただいたのですが、わかちあうという意味があるみたいです」
「うむうむ、素晴らしい名だな。では、この子の名はヌーサにしよう」

 これからは様々な種族たちの時代が到来する。神だからと驕らず、そんな彼らと打ち解けともに歩んでいってほしい。そんな思いでアエリオスは空いてる手で自身の腹を撫でた。
 それからしばらくして綺麗に縦半分に別れた白黒の髪をした赤子が生まれた。
 ヌーサは大人になった後、極端すぎる人間たちを見かねてアエリオスのもとから巣立ってしまうが、しばらくすると『放っておけない相手ができた。そのうち紹介する』という簡素な知らせが届いた。
 その吉報にアエリオスとケイオスは大いに喜んだのだった。
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