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第3話 鷲と蛇
剣と弓
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「くそッ! やっぱり間に合わなかったか」
ホルグを罠にかけるつもりが逆に罠を仕掛けられ、ダークエルフの姉妹の元へ戻るのに時間がかかってしまったグレン。
二重に仕掛けられた罠が全て、姉妹と別れた場所へ向かう方向へ大量に設置されていた。
グレンが扱う物理的な罠ではなく、魔力によって仕掛けられたものなので破壊力が凄まじかった。
少しでも掠れば、肉体は吹き飛んでいたであろう。
そんな罠を解除しながら、怪我することなく戻ってきた。しかし、当の姉妹はおらず、そこには地面がクレーターの様にへこみ、木々は何本か折れていた。
すると、北から激しい突風と共に轟音が響き渡った。
「な、なんだ!?」
地面が揺れ、態勢を崩す。右手の紋章が蒼白に輝きだした。まるで、遠くで起きている何かと共鳴するように。
(きっとイルザだな。無事だろうが心配だ。急いで向かわねぇと)
グレンは北へ走り出す。自分に課された使命の為、全力で大地を蹴る。
「・・・“アクアデトーナ”!」
杖を振ると魔界文字が浮かびあがり、魔法陣が湖の水面へ浮かぶ。水属性上位魔術であるアクアデトーナは魔法陣を介して湖の水は空中で圧縮し、小さな玉となる。
その圧縮された水の玉から鋭い水の槍となり、夜空を飛び回るホルグに向かって一直線に突き抜ける。
「このような単調な攻撃当たらぬわ!」
猛スピードで空中を飛び回るホルグにとっては目を瞑っていても簡単避けられる。
「ならこれはどうかしら? “ブラスト”!」
通り抜けたエルザの水槍に向かってイルザは火属性の下位魔術を放つ。
爆発四散した水槍は、細かい棘となり広範囲にホルグに向かって豪雨の様に降り注ぐ。
「ふん! この程度」
ホルグは弓を引き、魔力弾を射る。その挙動は、水槍と同じように分散し、大量のつぶとなってイルザの攻撃を全て撃ち落とした。
「攻撃が当たらないって本当にムカツクわね! エルザ! 大丈夫?」
次々と攻撃を繰り出してもいとも容易く避けられてしまう。体力だけが無駄に消耗していく中、エルザに疲れの表情が見え始めた。
「・・・はぁ、はぁ、ちょっと、厳しいかも」
エルザは息を切らして返事をする。
「わかったわ! 後ろに下がって防御魔術を最小限でいいから使ってなさい! 私があいつを墜とす!」
魔力量は強力だが体力面はひ弱なエルザ。静かにうなずき、湖から少し離れて体の周囲に光属性中位魔術“プロテクション”をかける。
「ふん、そっちの娘はもうダウンか。であればトドメをさしてやろう」
「そうはさせないわ! “ディストート・ロビスクリッド”」
イルザは魔法を唱えると、黒色の魔界文字が浮かび上がり全身に闇が覆いはじめた。
魔力を大幅に消費する代わりに身体能力を底上げさせる闇属性中位魔術の身体強化である。
「行くわよ!」
「今度こそは当ててくれよ?」
イルザは脚にめいいっぱい力を込めて飛び上がる。空中で剣を構え、鋭い突進突きを繰り出す。
「はっはっ! なんだ! さっきの魔術と変わらんではないか!」
あまりの単調な攻撃にひらりと身をかわすホルグ。
「“カデージ”」
小声でイルザは空中での突進突きの中呟いた。その魔術は初めにホルグに仕掛けた時の補助魔術、足場を作るものだった。
“ディストート・ロビスクリッド”による魔力消費とエルザほどの才能はないイルザだったので精々足場を一つ作りだすのが限度だったが、今はそれで充分だった。
足場を壁蹴りし、攻撃を避けたホルグに向かって速度を落とさず方向変換する。
「なんだと!?」
予想外の動きをしたイルザに驚愕するホルグ。
「はあああぁぁぁ! 真空斬!」
蒼白に輝く“妖精の輝剣”を振り下ろし衝撃波を飛ばす。突進の速度によって加速された衝撃波は竜巻を一刀両断したときの威力とは比にならないぐらい増している。
(あの攻撃はまずい!)
物理の竜巻と魔力の矢を一刀両断した技。どちらか片方の攻撃では競り負ける。ホルグは翼を細かく振動させ始めた。それと同時に“極光の月弓”にも魔力を込める。
「俺様の翼のより屠る翼! “音翼の極光”!」
振動させた翼を大きく振り、鋭い羽根を複数体の周囲に出現させる。魔力がすでに込められた弓を引こうとすると、弦が周囲の羽を結ぶように繋がっていく。
引いた手を離すと黄金の矢が射出され、その後を追うように羽が一筋の矢となる。
“真空斬”による音速の衝撃波と“音翼の極光”の巨大な黄金の矢が激しくぶつかる。
「はあああぁぁぁぁぁっっっっっ!」
イルザは残りの魔力を絞り出すよう“妖精の輝剣”を強く握る。
「うおおおおぉぉぉぉっっっっっ!」
ホルグも競り負けぬよう、“極光の月弓”に魔力を送り込む。
徐々に巨大化していく二つの塊は、激しくぶつかり合い空気を揺らす。
「・・・なんて威力。姉さん・・・負けないで!」
風圧に押されそうになるエルザは木の裏へ逃げ込み、力を振り絞る姉を想う。
「墜ちろぉぉぉぉぉぉっっっ!」
魔力を一気に注ぎ込むイルザ。
二つの破壊のエネルギーは凄まじい爆発を巻き起こし、煙がイルザとホルグを包み込んだ。
ホルグを罠にかけるつもりが逆に罠を仕掛けられ、ダークエルフの姉妹の元へ戻るのに時間がかかってしまったグレン。
二重に仕掛けられた罠が全て、姉妹と別れた場所へ向かう方向へ大量に設置されていた。
グレンが扱う物理的な罠ではなく、魔力によって仕掛けられたものなので破壊力が凄まじかった。
少しでも掠れば、肉体は吹き飛んでいたであろう。
そんな罠を解除しながら、怪我することなく戻ってきた。しかし、当の姉妹はおらず、そこには地面がクレーターの様にへこみ、木々は何本か折れていた。
すると、北から激しい突風と共に轟音が響き渡った。
「な、なんだ!?」
地面が揺れ、態勢を崩す。右手の紋章が蒼白に輝きだした。まるで、遠くで起きている何かと共鳴するように。
(きっとイルザだな。無事だろうが心配だ。急いで向かわねぇと)
グレンは北へ走り出す。自分に課された使命の為、全力で大地を蹴る。
「・・・“アクアデトーナ”!」
杖を振ると魔界文字が浮かびあがり、魔法陣が湖の水面へ浮かぶ。水属性上位魔術であるアクアデトーナは魔法陣を介して湖の水は空中で圧縮し、小さな玉となる。
その圧縮された水の玉から鋭い水の槍となり、夜空を飛び回るホルグに向かって一直線に突き抜ける。
「このような単調な攻撃当たらぬわ!」
猛スピードで空中を飛び回るホルグにとっては目を瞑っていても簡単避けられる。
「ならこれはどうかしら? “ブラスト”!」
通り抜けたエルザの水槍に向かってイルザは火属性の下位魔術を放つ。
爆発四散した水槍は、細かい棘となり広範囲にホルグに向かって豪雨の様に降り注ぐ。
「ふん! この程度」
ホルグは弓を引き、魔力弾を射る。その挙動は、水槍と同じように分散し、大量のつぶとなってイルザの攻撃を全て撃ち落とした。
「攻撃が当たらないって本当にムカツクわね! エルザ! 大丈夫?」
次々と攻撃を繰り出してもいとも容易く避けられてしまう。体力だけが無駄に消耗していく中、エルザに疲れの表情が見え始めた。
「・・・はぁ、はぁ、ちょっと、厳しいかも」
エルザは息を切らして返事をする。
「わかったわ! 後ろに下がって防御魔術を最小限でいいから使ってなさい! 私があいつを墜とす!」
魔力量は強力だが体力面はひ弱なエルザ。静かにうなずき、湖から少し離れて体の周囲に光属性中位魔術“プロテクション”をかける。
「ふん、そっちの娘はもうダウンか。であればトドメをさしてやろう」
「そうはさせないわ! “ディストート・ロビスクリッド”」
イルザは魔法を唱えると、黒色の魔界文字が浮かび上がり全身に闇が覆いはじめた。
魔力を大幅に消費する代わりに身体能力を底上げさせる闇属性中位魔術の身体強化である。
「行くわよ!」
「今度こそは当ててくれよ?」
イルザは脚にめいいっぱい力を込めて飛び上がる。空中で剣を構え、鋭い突進突きを繰り出す。
「はっはっ! なんだ! さっきの魔術と変わらんではないか!」
あまりの単調な攻撃にひらりと身をかわすホルグ。
「“カデージ”」
小声でイルザは空中での突進突きの中呟いた。その魔術は初めにホルグに仕掛けた時の補助魔術、足場を作るものだった。
“ディストート・ロビスクリッド”による魔力消費とエルザほどの才能はないイルザだったので精々足場を一つ作りだすのが限度だったが、今はそれで充分だった。
足場を壁蹴りし、攻撃を避けたホルグに向かって速度を落とさず方向変換する。
「なんだと!?」
予想外の動きをしたイルザに驚愕するホルグ。
「はあああぁぁぁ! 真空斬!」
蒼白に輝く“妖精の輝剣”を振り下ろし衝撃波を飛ばす。突進の速度によって加速された衝撃波は竜巻を一刀両断したときの威力とは比にならないぐらい増している。
(あの攻撃はまずい!)
物理の竜巻と魔力の矢を一刀両断した技。どちらか片方の攻撃では競り負ける。ホルグは翼を細かく振動させ始めた。それと同時に“極光の月弓”にも魔力を込める。
「俺様の翼のより屠る翼! “音翼の極光”!」
振動させた翼を大きく振り、鋭い羽根を複数体の周囲に出現させる。魔力がすでに込められた弓を引こうとすると、弦が周囲の羽を結ぶように繋がっていく。
引いた手を離すと黄金の矢が射出され、その後を追うように羽が一筋の矢となる。
“真空斬”による音速の衝撃波と“音翼の極光”の巨大な黄金の矢が激しくぶつかる。
「はあああぁぁぁぁぁっっっっっ!」
イルザは残りの魔力を絞り出すよう“妖精の輝剣”を強く握る。
「うおおおおぉぉぉぉっっっっっ!」
ホルグも競り負けぬよう、“極光の月弓”に魔力を送り込む。
徐々に巨大化していく二つの塊は、激しくぶつかり合い空気を揺らす。
「・・・なんて威力。姉さん・・・負けないで!」
風圧に押されそうになるエルザは木の裏へ逃げ込み、力を振り絞る姉を想う。
「墜ちろぉぉぉぉぉぉっっっ!」
魔力を一気に注ぎ込むイルザ。
二つの破壊のエネルギーは凄まじい爆発を巻き起こし、煙がイルザとホルグを包み込んだ。
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