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第3話 鷲と蛇

鍵穴

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 (意識が遠のく・・・)
 
 命からがらでイルザから逃げたホルグ。“極光の月弓アルテミス”手元からなくなっていた。

 “蛇咬閃(じゃこうせん)”で拘束・爆破された後、“極光の月弓アルテミス”を湖へ落としてしまったのである。

 毒に侵されもう飛ぶ力を失ってしまった。地上へ降りどこへ行くということでもなく、ただひたすら森を歩む。

 音も風の気配もわからない。唯一分かることは、このまま毒によって衰弱死する運命にあるということだけだった。

 (くそ・・・なんて・・・毒を・・・仕込みやがるんだ)

 歩く力ももうない。木陰に腰を下ろすと幾分か楽だったが、全身を駆け巡る焼けるような激痛は治まらない。

 誰かが近づいてきている。足音が地面を伝ってくる。

 視力ももうない。視界は霞み、輪郭はぼやけ、色でしか判断がつかない。

 顔をあげて近づいてきたものを確認する。

 サファイアのような美しい青色をした人間。見覚えがある。

 “極光の月弓アルテミス”をホルグに託した少女。

 「ああ・・・お前か、悪・・・い。弓・・・失くし・・・ちまった」

 「・・・・・・。 ・・・・・・。」

 何か話しているのは分かる。だが、聴力もほぼ残っていない。

 「・・・・・・。 ・・・・・・。」

 (心配・・・。してくれているのだろうか。ほんの少しの間の付き合いだったのにな・・・)

 ホルグは今にも力尽きそうだった。しかし、心は温かい気持ちに包まれていた。

 「・・・」

 (なにを言っているんだろうか)

 少女がポツリと何かを呟いた。その呟きは黄金の光となり少女の周囲を包む。

 するとホルグの首筋に鍵穴の形をした模様が浮かぶ。

 「・・・」

 (なにか・・・光って・・・っ!?)

 鍵穴を中心に輪が構成され、ホルグの首を締め付ける。

 (なんだ!? なんなんだこの輪っかは!?)

 「・・・です」

 温かい気持で包まれていた心は冷たい恐怖に支配される。

 首を締め付ける輪は、少女に纏う同じ黄金の光を放つ。

 (ぐっ・・・!)

 ホルグは音もなく爆発した。遺体は跡形もなく消え去っていた。

 「お疲れ様・・・です」

 巫女装束の少女は氷のように冷たい声と虚ろな瞳でそう言い残し、その場を去った。


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