ダークエルフ姉妹と召喚人間

山鳥心士

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第5話 隷属の鍵(エスクラブ・オブ・キー)

神界器(デュ・レザムス) 前編

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 気を失っていたイルザは、瞳を開いた。

 その視界にはぼんやりと黒い縦棒が何本も並んでおり、暗く冷たかった。
 
 「・・・っ痛い」
 
 後頭部が痛む。

 (この痛みはいったい・・・? それよりここは・・・?)

 少しずつ意識がはっきりとしてくる。

 スミレを奴隷商人から逃がした人を救うために森を進んでいた。

 (・・・確か、途中で魔獣ガルムが現れて・・・)

 そこから思い出せない。何者かに後頭部に衝撃を加えられて気絶してしまったのだろう。

 鮮明になっていく視界。

 黒い縦棒は無機質な金属棒だった。

 手足は拘束され立つこともままならない、冷たい鉄でできた檻に閉じ込められていた。

 (・・・! 動けない。)

 試しに“妖精の輝剣アロンダイト”を出現させた。短剣型であれば手に持つことはできるが、手を後ろに拘束されており、手首が動かないように固定されている。

 「お目覚めかね、ダークエルフの女よ」

 大地が唸るような低い声、焦げ茶色のスーツを着た長身の男が姿を現した。

 「おっと、そんな怖い目で見ないで送れよ。興奮するだろ?」

 「気持ち悪いこと言わないで。みんなは無事なんでしょうね!」

 鋭く男を睨みつける。

 「ふっ、そんな状況で仲間の心配とは感心するよ。だが、無事かどうかは私にはわからないね」

 「・・・っ!」

 「あ、そうそう。一人だけ無事なのは教えてあげよう。何ならここに連れてこよう」

 苦虫を嚙み潰したような最悪な気分だった。妹やグレン、スミレの安否がわからない上に、その中の一人があの男の手の中にある。

 「入ってきなさい、そして彼女に改めて自己紹介を」

 扉が金属の擦れる音を立てる。静かに歩くその足音はイルザの目の前で止まり、虚ろな瞳をこちらに向けて口を開く。

 「我が主、ブラン様によって召喚されし人間。スミレでございます」

 「スミレ・・・あなた、人間だったの!? ・・・いえ、そんなことより、私たちを騙していたのね!」

 「・・・・・・」

虚ろな瞳のまま口を閉じる。その姿はまるで、操り人形パペットのようだった。


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