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第6話 見えないモノ見えるモノ
憤慨・和解
しおりを挟む「なんだあのでっけぇ月は!?」
ガルムを撃破し館へと到着したグレンは、館の一帯をドーム状に覆った疑似的な夜空に目を奪われていた。
(エルザの魔術・・・ではなさそうだな。中でいったい何が起きてるんだ)
所々崩れている館の中を突き進み、浮かんでいる月の真下の部屋へと辿り着く。
その部屋には、檻の前で二人並んで立っているイルザと、そのイルザを連れ去ったスミレ。疲弊した表情を見せつつ魔術を発動しているエルザ。そして、紫電を纏った天馬と共に月へと貫かれようとしている男がいた。
(まさかもう決着がついたのか? しかしなぜスミレが何ともないようにイルザの横に? この短時間で何があった?)
物陰から様子を伺っていたグレンは、部屋の中で起きている状況を整理できずにいた。それ以上に自分が役に立てなかったことにかげりを覚えていた。
(・・・ほんと情けねぇぜ)
悔やみつつも再び部屋の様子を伺う。
男が月と共に打ち砕かれた後、血まみれのエルザはその場に倒れこんだ。
「エルザ!」
「エルザ!!」
グレンとイルザは同時にエルザの元へ駆け寄った。
「なんだよこれ・・・! 酷い怪我じゃねぇか!」
「私たちを助けるために頑張ってくれたのよ。すぐ治癒魔術をかけるからグレンはエルザを支えて」
グレンはしっかりとエルザの肩を支え、イルザは治癒魔術で傷を塞ぐ。
「・・・ありがと、姉さん。・・・グレン、あなたの真似をして罠にかけてやったわ」
「馬鹿野郎、そんな自分が傷だらけになるような無茶な罠のかけ方は罠じゃねえよ!」
「・・・手厳しいのね、また帰ったら罠のこと教えてね」
弱々しい声で話していたエルザは瞳を閉じた。
「エルザ!」
「大丈夫よ、気を失っただけだわ」
冷静にグレンを鎮めるイルザ。
グレンは檻の前で立っているスミレを睨み、イルザへ状況の説明を求めた。
「私の紋章は主様によって隠して貰っていたのです」
マントを枕代わりにエルザを横にし、グレンに事の顛末を説明し終わったイルザは、スミレに神界器について質問していた。
初めて出会った時にスミレを着替えさせたが、体のどこにもそれらしき紋章は見当たらなかった。
スミレはブランによって紋章を見えないように隠されており、正体を隠してイルザ達に接触したという。その証拠に自身の左腕を見せ、カムフラージュを解いて百合の花の紋章を浮かばせる。
「待てよ、紋章が残っているってことは、ブランっていう野郎は・・・」
同じ人間であるグレンは紋章が残っている意味を理解していた。
「はいです。主様は生きています・・・です」
イルザとグレンは驚愕した。
確かにエルザの魔術によって月と共に打ち砕かれたはずなのに、まだ生きている。
「そんな・・・確かにエルザが倒したはずよ?」
「いえ、エルザさんが召喚した天馬に貫かれる直前、“極光の月弓”で自身を矢にして館の外へと撃ち、離脱しましたです。貫かれた肉体は“隷属の鍵”で呼び寄せたダミーです」
ブランとの神界器を巡る戦いはまだ終わってはいなかった。
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