クズ過ぎる仲間に濡れ衣を着せられた上に、獄中でもDQNからいじめられている不遇冒険者ですが、前に助けた美少女から助けて貰えるようです

タダノヒト

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第六話

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 この日の冒険者ギルドのカウンターには、見慣れない少女の姿があった。その容姿は、首もとで切り揃えたボブショートの黒髪が特徴的な、華奢な体型の美少女といった感じで、男を中心に少なくない視線を集めている。



 そんな少女は、周りの視線を特に気にすることもなく、大きな声で姿の見えない受付嬢を呼び出した。



「すいませ~ん!!」



「あっ、はーい」



少女の大声に、少し眉をひそめた受付嬢だったが、いつもと変わらない声色でそれに答える。



「本日はいかがなさいましたか?」



「えっと、実は、先日あるお方に大変お世話になりましてね。その身なりから、恐らく冒険者のお方だと踏んだ私はこうして冒険者ギルドを訪れた訳です!!」



 何かを演じているとでも言わんばかりに大げさな口調で話す少女に対して、受付嬢は冷ややかな視線を送りながらも、話を進める。 



「それで、そのお方というのはどなたのことなのでしょうか」



「それが、お名前を聞き忘れてしまったので、分からんのです……直接お会いしたら分かると思うのですが……」  



 その返答に、受付嬢は少し考え込むように顎下に手を添えため。少しして、考えがまとまると少女に対してその人間の特徴を問うた。



「……その方の特徴を覚えていらっしゃいますか?」  



 それを受けた少女は、記憶の中の青年の容姿を想像し、おもむろに話し出す。



「えっと確か、髪と目の色は黒で、体格は大体平均位。後、服装は……アレ何て言うんですかね? 覚えてはいるんですがオシャレには疎いもので説明が難しくて……。まぁ少なくとも鎧が露出したガチガチの重装備ではなかったですね。むしろ、軽そうな布地が目立つ感じでした。後は、とにかく笑顔が素敵な青年でしたね……」



 思い出に浸る少女に特に関心を示すこともなく、その特徴に当てはまる人物を紙に書き出した。



「ありがとうございます。何人かそれらしい方がいらっしゃいますので、一応声をかけてみますね」











「……はぁ」



 少女は分かりやすくため息をついた。その様子からは落胆以外の感情を感じとることはできない。そんな少女に対して、受付嬢はもっともらしい口調で早くこの場を去るように促す。



「残念ですが、他を当たってください……」



「……はい。ありがとうございました」



 元々下がっていた頭を軽く下げ、力のない足取りでその場を去ろうとしていた少女の足を、とある男の柔らかい声が止めた。



「どうかしましたか? 何かお困りのようですが……」



 少女が声のした方を見上げると、そこには優しげな笑顔で少女を見下ろす、青年を裏切ったあの男の姿があった。もちろん、そんな事情を知るわけもない少女は素直にその好意に感謝の意を示し、これまでの経緯を話し始めた。



「あぁ。わざわざご親切にありがとうございます。それが……」











 少女の話の途中で、男が当然口を開いた。



「そいつのこと知ってますよ。多分ですけど僕の元パーティーメンバーだったやつなんで」



 男の言葉を聞いた受付嬢も、その存在を思い出したように男の言葉を肯定する。



「あっ確かに、言われてみればそうですね」



 その流れから、自分の探している青年がその人物であると察した少女は当然、男に対して飛びかからんばかりの勢いでその居場所を聞き出そうとする。



「……本当ですか!? じゃあ、今どこにいるのかも知ってたりしますか!?」



「……あぁはい」



 しかし、男の返事は何か事情があることを感じざるをえないようなものだった。



「?」



 「どうかしましたか?」と言わんばかりに首をかしげた少女に、男がゆっくりとその口を開いた。



「……そいつ、ギルドの金を盗んでいたのがばれて、今牢獄にいるんです」



「……えっ? いやいや、一度助けられただけの人間である私がこんなことを言うのは変ですが。あんなに無欲で他人思いな人がそんなことするわけないですよ」



「えぇ。俺だって信じたくはなかったですよ。まさかあいつがそんなことするやつだなんて思ってませんでしたから」



「……そうですか。教えていただきありがとうございます」



 男に頭も下げずに礼を告げ、再びカウンターの前まで戻った少女は、受付嬢の前に名刺のようなものを置いた。



「……私、こう見えてもつい先日から探偵業をしている者でしてね。ここから先は完全に私のわがままなんですが、その盗難事件について調査させて頂けませんか? どうしても彼がそんなことをするようには思えない。いや、思いたくないのです」
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