龍神様のお食事処。 

月の涙白き花弁。

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三十七 白蒲公英が染める刻。

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これは、とある街にある小さな神社に祀られている龍神様とお友達のお話。ここには龍之介と太郎という神様が住んでいる。二人は仙人や精霊や人間の子供、もちろん神様たちが気軽に遊びに来られるようにお食事処を始めてみた。そんな小さな神社のたくさんの、おはなし。




この身を消すことができるならばどんな地獄に堕ちようともかまわない。
私を、見つけないで。



春一番の吹き荒れるある朝、龍之介はいつものように春御膳をどうしようかな試行錯誤していた。
水切りした豆腐をすり鉢で当てて、人参、木耳、絹さやを細かく刻んで混ぜると小さく丸めて米油で揚げて飛竜頭を作り熱々の出汁であんかけにしてみた。タンポポの葉と花と川蝦のかき揚げとそばにしよう。それに大豆飯で御膳にしようか、そんなふうに考えていると入り口から風に乗って声が聞こえた気がした。
外を眺めてみたけれどそこには誰もいなかった。
ただ、哀しみが凝り固まったような気配が残るばかりだった。

「太郎さん、少し出かけてくる。誰か来たら台所に鶯餅があるゆえお茶など出してもてなしてくれぬかの。そんなに長く掛からぬとは思うがこの気配が気になっての。」
龍之介はそう言うと背負子を担げて出ていってしまった。
残された太郎は試作された蕎麦をすすりながら「あいわかった」と告げた。


探さないで。
見咎められるのは嫌なの。
このまま朽ちて土に還るしかないの。
私の存在は誰にも知られていないはずなのに。
この足元に光るこれは何?
私を照らさないで。
どうか私をみんな忘れて。
私の罪は重すぎて取り返しがつかない。
そうっとしておいて。おねがい。



どうどうと吹き荒れる風が森の木々を揺らしているが、それでもそこかしこに春の息吹が目覚め始めている。
この森は封印の中にあった。季節は移ろうけれど動物たちが入れぬようにしたのである。
あの冬の日に雌鹿の百野と一緒に祠に封じ黒松の精霊の黒曜が浄化されるようにと、そしてこれ以上動物たちの命が無駄に果てぬようにと。
しかしここから声がする。黒曜は眠りに落ち、百野に護られているはずである。ならば一体誰の嘆きなのだろう?龍之介は辺り一体をくまなく歩き、しめ縄が切れた箇所がないか結界に抜け道ができていないかを見て回った。
あの時は一面の雪で気が付かなかったのか、そこには一輪の白花蒲公英が頭を垂れて咲いていた。淡いその香りに思念を込めて。黒曜の毒気が根を満たしていて根拠のない哀しみと虚無感に囚われてしまっているのだ。
「眠っておるわけではあるまい?出てきなされ。それとも力が出ぬかな?掘り返してかまわぬか?我が家に持ち帰るゆえしばらく我慢するのじゃよ。」
龍之介は背負子のカゴの中から小手を出すと大きく蒲公英の周りに輪をかいて深く掘り起こしカゴに丁寧に入れて穴には周りから集めた土を戻して帰路についた。

哀しみも苦しさも深く降り積もってしまって、今更私はなぜ芽を出したのだろう?なぜ花をつけたのだろう。
この闇に、甘やかで艶やかな常闇に飲み込まれてしまいたい。私が此処に在ることが間違いなのだから。


龍之介は戻ってくると奥から美しい青磁に雫彫で蒲公英を描いた鉢を持ってくるとそこに丁寧に白蒲公英を植え直してやった。


「こんにちは。たくみとこうきと坊です。外で遊ぼうと思ったけど風がきつくて砂埃と花粉で目が開けられへんねん、一休みさせてください。」
子供達が駆け込んでくると、ちょうど鉢植えが出来上がったところだった。土の上に苔を乗せてふんわりと深緑の苔の上に白い蒲公英の花が浮かんでいるように見える。
「うわぁ!白花蒲公英や!可愛いなぁ。蒲公英って、黄色いのでも日本蒲公英と西洋蒲公英で雰囲気違うし、でも白花蒲公英はなんか別格な気がする。優しい感じがするやん?」
こうきがそう言うと、たくみが
「僕白い蒲公英初めて見た。綺麗で可愛いなぁ。龍之介さん、なんでこの蒲公英さんは鉢植えにしてるの?精霊さん疲れはった?」
たくみとこうきと坊は龍之介の顔を覗き込んだ。
「まずは手を洗わせておくれ。その後お茶でも飲みながら話をしようかの。」
龍之介は手を洗うと鶯餅と熱い豆茶を五人分用意していつもの席に着いた。
「この子はの、多分精霊にはなれぬ。黒曜の禁足地に生えておったんじゃよ。結界を張る前の春の間にタネが飛んできたんじゃろ。そして雪に埋もれて気がつかなんだ。悪いことをしてしもうた。結界の中はいくら清浄な風や光を送っても黒曜の思いがとてもとても強いゆえ芽吹いた時からあの闇に取り込まれておったのかも知れぬ。強い悲しみと自己憐憫で頭を上げることができぬのじゃよ。」
「じこれんびん?て何?」
たくみは聞いたことのない言葉に思わず聞き返した。
「そうじゃな、自分のことを可哀想じゃと憐れむ心のことじゃよ。必要以上にの。」
坊は苔に広がる葉を優しく撫でながら
「元気出して。おいらあのしめ縄頑張ってなったんだよ。あの結界の外に出たんだからもう大丈夫。龍之介さんも太郎さんも、たくみとこうきとおいらもいるからね。蒲公英さんは可哀想じゃないよ。とても綺麗だし、とてもかわいいし。」
と囁くように言いました。
子供達は植木鉢の蒲公英を愛おしげに眺めながらお茶やお菓子を食べ、また蒲公英の話題に戻っていきました。
「龍之介さん。蒲公英は根が下に長く伸びるやん?こんな小さな植木鉢やったら伸び伸び育たへんのと違う?それか、根っこがぐるぐる巻になるんかな?」
こうきが興味本位からそんなことを尋ねました。
「この鉢はな、この蒲公英が育つとともに長く伸びるんじゃよ。じゃが、元気が出てきたら地面に植えてやるつもりじゃ。やはり伸び伸びと育つ方がいいゆえにの。」
龍之介はそういうとお茶のおかわりを持ってきた。
「ねえ龍之介さん。この蒲公英さんは精霊さんはいいひんの?お話がしてみたいって思ったねん。悲しいんやったらなんでそんなに悲しいんか、僕らに助けられへんのか、聞いてみたらあかんかな?僕らでは力になれへん?」
たくみは心配そうに蒲公英の葉を撫でながらそう言った。
三人はこの蒲公英の悲しみを和らげてあげたいと心から思った。
龍之介は三人の顔を見ながら考えた。この子達ならもしかしたらこの蒲公英を元気付けられるかもしれん。
そんな力を、この子達はこの数年で持ち始めているとそう思った。
「明日、またここに来れるかの?この子に少しだけ力を与えてお前たちにも声が届くようにしよう。話を聞いてやっておくれ。もちろん毒気が抜ければ元気に咲くとは思うのじゃがの。お前たちならば毒を抜くのに力がかせるかも知れぬ。」

夕暮れとともにたくみとこうきが家路につき、坊と龍之介と太郎は、三人で夕食の用意をしていた。
野蒜の天ぷらと野蒜の葉と油揚げの卵とじ、温かい蕎麦とカラスノエンドウと川蝦のごま油炒め。そして酒をぐい呑みに注ぎ、坊にはお茶を入れてやった。
坊が蒲公英のそばを離れたくないと駄々をこねたのだ。
優しく温かな心を持った良い精霊になってきた。この子が大人になるにはどれほどの時間がかかるのだろう。たくみとこうきはきっとこの子が大人になる姿を見ることは出来まい。それでもいい、いつも仲良くあって欲しいと思うのは身勝手なのだろうか。
龍之介は酒を少しだけ含むとそんな考えを巡らせていた。
「龍之介さん、この子達はきっと大丈夫ですよ。わしらが思うよりずっと強い絆で結ばれております。わしらはただ、見守りましょう。」
太郎はそういうと野蒜の天ぷらを口に放り込んだ。
坊は卵とじを食べながらも蒲公英を撫でていた。


ここはどこ?私は、なぜこんなにも温かな手に触れられているのだろう?
私はあの寒い暗闇で、朽ちるだけの存在のはずなのに。
どうしてここはこんなにも優しい風が吹いているのだろう。
あの闇は、あのまとわりつくような闇はどこへ行ったんだろう。
私はここに在ってもいいのだろうか。


「こんにちは。たくみとこうきです。坊が見つからなくて、ここにいますか?お母さんがクッキー持って行きって作ってくれたんです。」
たくみとこうきが駆け込んでくると坊は蒲公英の鉢を大切そうに撫でながら待っていた。
「よう来たの。さて、ほんの少しの間この子に姿を与えよう。話してごらん?色々なことがわかるかも知れぬし、わからぬかも知れぬ。この子自身まだ芽吹いて間なしの株じゃ、何も 解らず闇に取り込まれたと思うのじゃ。じゃが、聞いてみねばわからぬこともあるゆえにの。」
そういうと龍之介は手のひらをかざし何か祝詞を唱え力を込めた。
雪のように白い大振り袖に菜の花色の帯を締め若草色の帯締めをして長い髪を桃割れに結い上げた可愛らしい精霊がふんわりと春の陽射しのような光の中に現れた。
「あ、あの初めまして。私まだ名もない白蒲公英です。どうして突然ここに現れたのでしょうか?私は姿を現すつもりはなかったのです。闇の中で消えるつもりでおりました。龍神様、私など捨て置いてください。」
白蒲公英はそういうと俯いてしまった。
「龍之介さん、この子に名前は付けたらあかんの?精霊さんじゃないからあかんのかな?今だけ白ちゃんって呼んでもいい?」
たくみはそう尋ねた。
本来名を持ってはならぬ存在、つまり精霊にはなれぬこの花に仮とはいえそのように呼ぶのは相応しいとは言えぬ。しかし、心を開かせるためには仮の名を与えても良いかも知れぬ。龍之介はしばし悩んで黙り込んだ。
三人の目が、そして白蒲公英の目が龍之介を見つめている。
「わかったわかった、今だけじゃよ。お前は仮の名前だと心に刻むのじゃよ?子供達がこれから先この名で呼びかけることもあるじゃろう、じゃが仮の名であることを忘れてはならぬよ。」
そう言うと皆を見回した。
「じゃあ、白ちゃんなんで悲しくなったん?白ちゃんはまだ小さな蒲公英やん?悲しくなるようなことあったんかな?」
こうきは白を座らせてからそう聞いた。
白は自分がなぜ悲しいのかなどと、そんなこと考えたこともなかった。
目をぱちくりとさせて困った顔をした白に今度はたくみが話しかけた。
「白ちゃんは結界に取り残されて悲しかったんちゃうかな?みんな誰もこなくなっちゃったやん?あの松は僕らも後から見に行ったけど、結界の外側でも淋しくて悲しくて涙が出そうになったからきっと白ちゃんもそう思ったんやと思う。結界の中はもっと濃い黒曜さんの気持ちが閉じ込められてるからね。だから独りぼっちみたいな気分になったんやないかなぁ。」
たくみは白の頭を撫でながらそう言った。
そして坊が
「おいらね、あのしめ縄を作ったんだ。みんなが幸せになりますようにって。黒曜さんや百野さんがいつか光の中に行けますようにって。だからさ、白ちゃんも光の中で咲いていいんだよ?おいらがそう願ったの。だから闇に溶けないで欲しいんだ。こんなに綺麗で可愛いのに闇なんて似合わないよ。」
と語りかけた。
「龍神様、私種でした。あの地に降りた時は小さな小さな種だったのです。根を張り葉を茂られると土の中から声が聞こえてきたのです。『哀しや、淋しや。』って。そうしたら目の前の光が歪むように消えていったんです。私は枯れてしまうと思っていました。周りの草花はその闇にあてられたように枯れて土に還ってしまったから。そして冷たい雪が私を包み込んだんです。ああ、土に帰るのだなぁと考えていたのに何故か春が来て花をつけました。ですがそれがまた哀しくて申し訳なくて。でもこれは幻想だったということですか?黒曜様という精霊にあてられたということですか?心が少しずつほころぶように温もりを感じます。坊さんが昨夜ずっと抱きしめて眠ってくださったからでしょうか。」
白は少し頬を赤らめ棒にはにかんだように微笑んだ。
「わしのことは龍之介と呼んでおくれ。相棒は太郎というのだよ。そうじゃな。坊がお前を抱きしめて眠ったのは大きいじゃろう。肌の温もりというものは心の闇や痛みを溶かすことがあるゆえにの。この坊もたくみやこうきに会えたことでいい精霊になったのじゃ。お前がこの先花をつけたいと願うならしばらくはこの鉢に置いて闇の毒気を抜いてからこの杜に植えてやろうかの。」
坊は表情を明らめたくみとこうきを嬉しそうに見た。たくみとこうきも嬉しそうに坊を抱きしめて、そして白を鉢ごと抱きしめた。

「えね龍之介さん、白ちゃんクッキー食べてもかまへん?みんなでお祝いしようよ。元気になったお祝い!」
たくみがそう言うと龍之介は申し訳なさそうに
「精霊でないこの子には人の食べ物は食べられんのじゃよ。水と光と良い土だけしか与えられんのじゃ。もしこの子が精霊になった時にはたくみのお母さんのクッキーを一緒に食べようの。」
そう言うと三人には豆茶と椿餅とクッキーを皿に盛り出してくれた。
白には水を小さな湯呑みに出してくれた。


つくしの天ぷらと、カラスノエンドウを油揚げと煮浸しにして器に盛るとぐい呑みを二つお膳に出して奥で蒲公英の鉢を抱えて眠る坊を見ながら太郎と酒を飲んでいた。
子供達は少しずつ成長している。
優しさや思いやりをたくさん抱えて、この先も成長を続けるだろう。
蒲公英が、精霊となることがあったならたくみとこうきは会えるだろうか。
刻がほんの少し動き出した。


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