この恋は飴より甘し。 〜 飴よりも甘いツンデレ騎士に愛されてます。〜

渚乃雫

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第1部 恋ってなあに

第14話 布の男、現る。後編 ラグス目線

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「ラグス隊長」
「ああ、ジノか。怪我は」
「ありません。ですが、一人だけ取り逃がしました」

 そう言いながら駆け寄ってきたジノに、「顔に布を巻いた男か?」と問いかければジノが「え、あ、はい!」と驚いた様子で大きく頷く。

「ソイツならさっき接触した」
「え?!」

 隣に並んだジノにそう告げれば、彼は驚いた顔をしたあとすぐに、「アイツ」と悔しそうな表情へと切り替わる。

「どうした?」
「お前じゃ相手にならないとか言いやがって」
「……それで?」
「他の奴らを捕らえている隙に、姿を見失いました……」
「なるほど」
「申し訳ありません」
「いや、いい。俺も取り逃がしたんだ。それよりもジノに怪我がなくて良かった」

 暗い表情をして落ち込むジノの頭を手を置きながら言えば、彼は一瞬、俯いたあと、自身の手で頬を叩き、顔をあげる。

「次は必ず捕らえます」
「それは俺もだな」
「ではラグス隊長よりも先に!」

 グッと拳を握りながら言うジノに、さきほど対峙した布の男を思い出す。

「……無茶はするな」
「隊長?」
「アイツは、危険だ」

 それだけを告げた俺に、「……了解しました」とジノは静かに頷いた。


「なるほどね。確かに危険そうだね、ソイツ」
「……ああ」
「隊員たちには極力、戦わないよう伝えておくよ」
「……頼む」
「任された」

 べレックス卿の邸宅に着き、邸宅警護にあたっていたマノンにさきほどの事を伝えれば、マノンも俺と同様に、布の男の話に眉間にシワを刻む。

「ラグス、一旦、その報告も含めて宿舎に戻る?」
「いや今もどっても確証のない報告をするだけになる。あと少しだけ時間をおくか……」
「でもさーぁ? 時間おいても変っわないんじゃなーい?」
「時間おくくらいなら、情報あげよっかー?」
「おわっ?! ビックリしたあ?!」
「わーぉ、マノンすごい驚いてる」
「マノン、いま飛び跳ねたよ」
「なんでいんの?! てかその格好なに?!」

 俺とマノンが話していた最中、突然あらわれた二人の人物に驚き、マノンが軽く飛び跳ねる。
 いや、俺も結構おどろいたが。
 だが、どうやらマノンの驚きかたのほうが彼らのツボに入ったらしい。うひゃひゃひゃひゃ! と相変わらずよく分からない笑い声を悪戯をしかけた張本人たちはあげている。

「……びっ、くりしたぁぁ」
「ごめんごめーん」
「そんな驚くと思わなくて!」
「いや、驚くでしょ?! どう考えても!!」
「そう?」
「そうかな?」
「そうだよ!」

 マノンの言葉に、謝ってはいるものの、三番隊副隊長の双子の二人組レットもレッソ悪びれる様子など一切見受けられない。

 そんな二人の様子に、マノンは大きなため息を吐き、「で?」と言って改めて彼らを見る。

「ここにいないはずの君たちがなんで此処にいるのさ? 団長たちとツァザに向かっていたはずだろう?」

 そう問いかけたマノンに、「当初の予定はね」とレットが笑って答える。

「当初の、ってことは、何かあったのか?」

 そう問いかけた俺に、レッソは「サイラスさんに行かなくていいって言われた」と笑って答える。

「筆頭が?」
「うん。で、ツァザにはオスト達がついてったよ」
「五番隊が?」
「そう。だから今はこっちで仕事中ー」
「なるほど」

 サイラス筆頭からの指示であれば、意味があっての采配なのだろう。特にその指示に異論があるわけでもない。

 レッソの返答に頷いていれば、「で、なんでその格好?」とマノンが不思議そうな表情で彼らに問いかける。

 その疑問のとおり、目の前に現れた双子の服装は騎士団の隊服ではなく、街中によくとけ込めそうな一般人の服装をしている。

「なに、って潜入捜査中?」
「潜入はしてないけど捜査中?」
「潜入……なるほど」

 潜入捜査。
 頭脳部隊だとか、工作部隊だとか、そんな呼び名をつけられる三番隊ならではの任務内容らしい。
 現に、いま二人が立っている場所は確かに俺たちのすぐ傍ではあるものの、植わっている木と木の間へと身を潜めていた。

「……保護者は……イハツはどこ……」

 二人のカラリとした返答に、驚き疲れたらしいマノンが周囲を見渡しながら言う。

「イハツは今はさっき言ってた変なやつがいる団体を調べてるとこ」
「接触するのはもうちょっと先かな。流石に隊長班だけで行くのは危険だし!」
「ハモンド卿のほうは?」
「ハモンド卿のほうはとりあえず、泳がせてるところ」
「あの人ちょろ卿で、やっぱりちょっと頭弱そう」
「……ちょろ卿ってお前ら……」
「だって実際ちょろかったから」
「まぁでも、もっとちょろかったのがいるんだけどねぇー」
「……もっと……?」
「そ、もっと!」

 双子の言葉に思わず問いかけた俺に、レットとレッソの二人は、声を揃えて答えた。


 情報を提供してくれた双子が去ったあとすぐに、べレックス家の執事が姿を現し、「お嬢様がお屋敷にお呼びです」と屋敷内に呼び出され、どうやら中庭方面に向かっているらしい。
 執事のあとを歩きながらマノンと声を潜めながら廊下を進む。

「それにしてもまんまと騙されちゃってるとはねぇ……」
「ああ」
「ま、その辺の片付けはたぶん三番隊とサイラス筆頭の部隊がするでしょ」
「たぶんな」

 レットとレッソいわく、イハツからの伝言の『後始末はこっちでするからお気になさらず』とのいう言葉の通りに受け取れば、背後にある諸々はアチラが処理をするらしい。

「……どちらかといえば、そっちを担当したい……」
「まぁねぇ」
「……というか、何でわざわざ呼ばれたんだ? いくらなんでも俺たちの任務くらいは理解してるだろ」
「オレはなんとなく検討ついてるけど」
「は?」

 俺の抱えた疑問に、思いきり苦笑いを浮かべて答えたマノンに軽く首を傾げる。

「おい、マノン、どういう」
「ラグス様ぁぁぁぁ!」
「……うわ」

 マノンに問いかけた返事を待つ間に、前方から聞こえた俺の名前を呼ぶ高い声色に、思わず顔を顰めれば、「やっぱり」とマノンが呆れたような表情を浮かべた。




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