雨を見て僕が思い出すもの

kiruki

文字の大きさ
4 / 10

4

しおりを挟む
彼女の監視を誰もやりたがる人がいなかったため、結局僕に押し付けられることになった。

それは僕へのちょっとした嫌がらせも含まれていたらしい。だが彼女のことを胸に支えていた僕にとってぴったりの仕事だった。

その日から僕はハンターではなくなった。

少女の監視員となったのだ。

僕と彼女は村外れの山の奥にある拘束所に送り出された。少女は首と両腕に枷を着けられて地下の牢屋に入れられ、僕は一日中その檻の側に配置された。

僕の食事は食事は朝と晩の二回ほど下っ端の職員が僕がいる地下まで運んでくれる。

まあ当然だが、彼女の食事は用意されていない。

誰かと交代することもできないその監視任務は、休む暇などないくらい過酷なものだった。

四六時中監視を続けなければならない状況で、僕が休むことができたのは彼女が深い息を吐きながら眠っているときくらいだ。

まあそれも彼女に異変が起きたときに素早く気づくために浅い睡眠しか取れなかったのだが。

けれど二人の空間は思ったよりも心地が良かった。

何か談笑をしているわけでもトランプやチェスで遊んでいるわけでもないが、僕は彼女との時折の会話にとても癒やされていた。

そして二人の生活を通して、少しずつ彼女のことを知っていった。

そう例えば……ある日の少女は、僕に配分された安っぽいパンを凝視していた。

相変わらず無表情だが、どこか驚いているような気がして僕は寡黙な彼女に話しかけた。

「どうしたんだい」
「…これは、なに」
「ああ、それはパンだな。小麦粉を練って熱で焼いて膨らませた食べ物だよ。……吸血鬼は、人間の食べ物を食べれるのかい」
「……食べれないことは、ない。けれど、吸血鬼にとってはなんの意味もない行為。だから普通は、食べない」
「そうなんだ。……コレに興味があるのなら、よければこれ、食べてみるか?」
「なんで?」
「なんでって、知らないさ。ほら、食べるかどうかは君が決めてくれ。人間の食べ物は吸血鬼に何の影響も及ぼさないのだろう?」
「…わかった。たべる」
「……どうだい?」
「…んー。普通」
「そうか。その、やっぱり血のほうが美味しいのか?」
「……うーん……私はそういうの、よくわからない」
「そ、そうか」

その日から僕は、彼女の分の食事も料理人に頼むことにした。少女に人間の食事を与えるのは少し不安なところがあったが、物珍しそうに料理を眺める彼女の姿を見てそんな心配は霧散した。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

側妃の愛

まるねこ
恋愛
ここは女神を信仰する国。極まれに女神が祝福を与え、癒しの力が使える者が現れるからだ。 王太子妃となる予定の令嬢は力が弱いが癒しの力が使えた。突然強い癒しの力を持つ女性が異世界より現れた。 力が強い女性は聖女と呼ばれ、王太子妃になり、彼女を支えるために令嬢は側妃となった。 Copyright©︎2025-まるねこ

処理中です...