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その後ろ姿は翔平にとても似ていた。
刈り上げた後ろ髪と寒さから両肩を少しだけ上げ縮こまった背中。
見れば見るほど本人としか思えず、私はつい声を上げていた。
「しょ……」
だけど、そんな声を隣にいる白いコートの女性がかき消していった。
「ねぇ、翔くん。こんな高いお店、大丈夫?」
「大丈夫だって!この日のためにめっちゃ働いたんだし。それに今日は二人の記念日だろ?少しくらい贅沢しても構わないさ」
「嬉しいっ!今日はうんと楽しもうね!」
「あぁ!」
気付くと二人は手を恋人繋ぎしており、そのままフロントへと移動していった。
(いま、翔くんっていったよね?それに記念日だと……)
普段呼ぶあだ名を目の前で耳にするとますます疑惑は深まってしまい、真偽を確かめるために私はまたホテルへと入ると、柱に身を潜め様子を窺うことにした。
手続きをしている所からあらかじめ部屋を予約しているみたいだけど、私はレストランの予約以外聞かされていない。
つまり、泊まる相手は私ではなく、その白いコートの女性ってことになる。
浮気…。
すぐにその言葉が頭に浮かび、目には涙が溜まってしまっていた。
でも泣いてはいられない。
本人かどうかちゃんと確かめないと。
二人はフロントでキーを貰いエレベーターへと向かったので、意を決し二人の前に行こうとした。
しかし、普段履き慣れていないピンヒールを滑らせ転けてしまうと私は注目を浴びる事になった。
鞄の落ちる音が響くとロビーにいた客が一斉に私に目を向け、その中には疑惑の翔平の姿もあった。
転びつつも私はエレベーターの前にいる翔平に目を向けると確信へと変わっていった。
(……本人だ)
それは相手も同じようで、目を見開いたかと思うとすぐに白いコートの女性を連れ、開いたエレベーターの中へと逃げるように消えていった。
「待って!」
私の声を無視し、エレベーターの扉は閉まっていく。
すぐに体を起こし、鞄もそのままに私は上がっていくエレベーターの階数を見ていくと、止まる事なく最上階まで上がっていった。
それを確認すると、居ても立ってもいられず早く降りてくるように願いつつ、ボタンを連打していた。
「あの……」
ホテルの係りが私に声を掛けてきた。
「なんですか?」
「鞄……お客様のですよね?」
手には私が落とした鞄を持ちつつ、低姿勢で見上げてくる。
「そうですが」
「……あの、失礼ですが、どうかなさいましたか?」
「私達の問題です!」
声を荒げる私は持ってくれていた鞄を奪い取ると、再びエレベーターのボタンを押し始めた。
すると、今度は支配人と思わしき人物が私に声を掛けてきた。
「お客様、何があったか分かりませんが、少し事情をお聞かせ願いませんか?」
二人とも低姿勢で対応してくれているのに、私はそんな人達にキツイ態度を示すばかりか、持っていた鞄を振っていた。
「邪魔しないで!」
気付くと私はパトカーの中に入れられ事情を聞かされていた。
刈り上げた後ろ髪と寒さから両肩を少しだけ上げ縮こまった背中。
見れば見るほど本人としか思えず、私はつい声を上げていた。
「しょ……」
だけど、そんな声を隣にいる白いコートの女性がかき消していった。
「ねぇ、翔くん。こんな高いお店、大丈夫?」
「大丈夫だって!この日のためにめっちゃ働いたんだし。それに今日は二人の記念日だろ?少しくらい贅沢しても構わないさ」
「嬉しいっ!今日はうんと楽しもうね!」
「あぁ!」
気付くと二人は手を恋人繋ぎしており、そのままフロントへと移動していった。
(いま、翔くんっていったよね?それに記念日だと……)
普段呼ぶあだ名を目の前で耳にするとますます疑惑は深まってしまい、真偽を確かめるために私はまたホテルへと入ると、柱に身を潜め様子を窺うことにした。
手続きをしている所からあらかじめ部屋を予約しているみたいだけど、私はレストランの予約以外聞かされていない。
つまり、泊まる相手は私ではなく、その白いコートの女性ってことになる。
浮気…。
すぐにその言葉が頭に浮かび、目には涙が溜まってしまっていた。
でも泣いてはいられない。
本人かどうかちゃんと確かめないと。
二人はフロントでキーを貰いエレベーターへと向かったので、意を決し二人の前に行こうとした。
しかし、普段履き慣れていないピンヒールを滑らせ転けてしまうと私は注目を浴びる事になった。
鞄の落ちる音が響くとロビーにいた客が一斉に私に目を向け、その中には疑惑の翔平の姿もあった。
転びつつも私はエレベーターの前にいる翔平に目を向けると確信へと変わっていった。
(……本人だ)
それは相手も同じようで、目を見開いたかと思うとすぐに白いコートの女性を連れ、開いたエレベーターの中へと逃げるように消えていった。
「待って!」
私の声を無視し、エレベーターの扉は閉まっていく。
すぐに体を起こし、鞄もそのままに私は上がっていくエレベーターの階数を見ていくと、止まる事なく最上階まで上がっていった。
それを確認すると、居ても立ってもいられず早く降りてくるように願いつつ、ボタンを連打していた。
「あの……」
ホテルの係りが私に声を掛けてきた。
「なんですか?」
「鞄……お客様のですよね?」
手には私が落とした鞄を持ちつつ、低姿勢で見上げてくる。
「そうですが」
「……あの、失礼ですが、どうかなさいましたか?」
「私達の問題です!」
声を荒げる私は持ってくれていた鞄を奪い取ると、再びエレベーターのボタンを押し始めた。
すると、今度は支配人と思わしき人物が私に声を掛けてきた。
「お客様、何があったか分かりませんが、少し事情をお聞かせ願いませんか?」
二人とも低姿勢で対応してくれているのに、私はそんな人達にキツイ態度を示すばかりか、持っていた鞄を振っていた。
「邪魔しないで!」
気付くと私はパトカーの中に入れられ事情を聞かされていた。
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