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9 (翔平視点)
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男達の注目の的だった香澄を俺はとても丁寧にレクチャーした。
資料作りや電話対応、時には接待のような場にも一緒に連れていった。
そして半年位が経ったある日。
「ささっ、部長」
俺は香澄を連れ高級料亭に出向いた。
なぜならある建設会社との大型契約を結べるかどうかの瀬戸際にいたから。
今回この契約を結ぶ事ができたら昇進することを密約されており、より力を入れていた。
そうすれば今以上に稼げるし、そこから得られる情報を使えば他よりも優位に仕事を進められるからだ。
「おいおい、もう飲めないぞ」
「……なら、俺が代わりに!」
半分ほど残ったビールを自身のコップへと注ごうとした時だった。
「先輩」
隣にいた香澄が持っていたビール瓶をそっと取り上げると、俺のコップへと注ぎ始めてきた。
その仕草に俺は目を奪われた。
華奢な腕で支えられた瓶は少しカタカタと震えているが、真剣な眼差しで注ぐ彼女を見て部長は声をかけてきた。
「斉藤くん。こちらの方は?」
「あ、……あぁ。僕のサポートをしてくれる伊藤です。先程見せた資料も彼女が作ってくれて」
「そうか」
座敷に置いた茶封筒の中身はショッピングモールを建設した際に、どれくらい集客出来そうかを示したデータだ。
周辺住人の数や移動する際の車の数など緻密に調査を行った努力の賜物。
それらを香澄が分かりやすく纏めてくれた。
「向こうさんとはデータの濃さは違うな」
その言葉を受け、こちらに揺らいでいると思った俺は、すぐに付け加えた。
「もし、お決めになって貰えるならご相談には乗れます。そこはお約束します!」
気付くと値下げ交渉を自身から提案していたが、それは支店長からの許可は得ている。
難航するなら使え、と。
「……そうか」
もう一押しだと思うが、なかなか首を縦に振ってくれない。
(……何か無いのか)
焦る俺は頭を巡らせていると、ビールを注ぎ終えた香澄が口を開いてくる。
「……下の人間が口を出して申し訳ありませんが、斉藤にお任せ頂けたら必ず貴社に大きな利益を齎します」
見た目とは裏腹に大人びた口調で話す様子に俺と部長は口を閉ざした。
(なんだ、この子は……)
真っ直ぐ部長を見る姿に、すぐハッと我に戻り、土下座をして謝った。
「申し訳ありません!まだ入って1年と経たない者をお連れして」
畳に額をこすりつけ謝っていると、部長が急に笑い出してくる。
「なかなか肝が据わっているじゃないか。そんな女性、向こうさんにはいなかった。……来週、うちに来てくれ。そこで」
「あ、ありがとうございます!!」
料亭に呼んだタクシーを見送ると大きく俺は息を吐いた。と、同時に香澄は地面へとへたり込んだ。
「大丈夫?」
「……ごめんなさい、なんとかお手伝いしたいと思って」
「いや、助かったよ。あの言葉がなかったら無理だった。……支店長に連絡したら明日は休んでいいって。
もし良かったらお礼にご飯でも。……あっ、でも彼氏いるよね?」
こんな可愛い見た目だ。
俺じゃなくても男ならほっとくわけがない。
「……いいえ、今はいません」
「いまは、って事は」
「……振られちゃって」
「こんな可愛い子を振るなんて最低だな、俺だったら」
するとへたり込んでいた香澄は立ち上がり問いてきた。
「先輩はいないんですか?」
その質問にドキッとしたけど、すぐに俺はいないと嘘をついた。
だって彩の事は少し冷めており、気持ちが離れつつあったから。
「じゃあ食べにいきましょう。急に明日休みになってしまったから予定もないので」
「じゃ、じゃあ」
俺らは料亭近くの居酒屋に入ると、お酒を飲んだ。
契約を取った祝いと先程のお礼を兼ねて。
香澄は俺のペースに合わせカクテルを飲み、俺は少し強めのワインを飲む。
すると、白かった肌は少しずつ赤くなっていき、目はとろんと虚ろになってくる。
「……いつからいないんですか、彼女」
「1年前かな。伊藤さんはいつ彼氏と?」
「先輩、……香澄でいいですよ」
「えっ」
「先輩ってかっこいいし、初めて見た時、ドキッとしちゃいました」
「……本当に?」
「はい」
次第に隣に座る香澄は俺に体を預けてくる。
その際にオレンジのような柑橘系の匂いが鼻を刺激してくるから、つい肩を抱いていた。
「……先輩」
軽く上目で見る香澄に俺はもう耐えれなくなり、個室内でキスをした。
「……ごめん」
「謝らないで、……今日は一緒にいて欲しい」
その一言で俺の心は完全に香澄へと傾き、店を出るとホテル街へと向かっていた。
資料作りや電話対応、時には接待のような場にも一緒に連れていった。
そして半年位が経ったある日。
「ささっ、部長」
俺は香澄を連れ高級料亭に出向いた。
なぜならある建設会社との大型契約を結べるかどうかの瀬戸際にいたから。
今回この契約を結ぶ事ができたら昇進することを密約されており、より力を入れていた。
そうすれば今以上に稼げるし、そこから得られる情報を使えば他よりも優位に仕事を進められるからだ。
「おいおい、もう飲めないぞ」
「……なら、俺が代わりに!」
半分ほど残ったビールを自身のコップへと注ごうとした時だった。
「先輩」
隣にいた香澄が持っていたビール瓶をそっと取り上げると、俺のコップへと注ぎ始めてきた。
その仕草に俺は目を奪われた。
華奢な腕で支えられた瓶は少しカタカタと震えているが、真剣な眼差しで注ぐ彼女を見て部長は声をかけてきた。
「斉藤くん。こちらの方は?」
「あ、……あぁ。僕のサポートをしてくれる伊藤です。先程見せた資料も彼女が作ってくれて」
「そうか」
座敷に置いた茶封筒の中身はショッピングモールを建設した際に、どれくらい集客出来そうかを示したデータだ。
周辺住人の数や移動する際の車の数など緻密に調査を行った努力の賜物。
それらを香澄が分かりやすく纏めてくれた。
「向こうさんとはデータの濃さは違うな」
その言葉を受け、こちらに揺らいでいると思った俺は、すぐに付け加えた。
「もし、お決めになって貰えるならご相談には乗れます。そこはお約束します!」
気付くと値下げ交渉を自身から提案していたが、それは支店長からの許可は得ている。
難航するなら使え、と。
「……そうか」
もう一押しだと思うが、なかなか首を縦に振ってくれない。
(……何か無いのか)
焦る俺は頭を巡らせていると、ビールを注ぎ終えた香澄が口を開いてくる。
「……下の人間が口を出して申し訳ありませんが、斉藤にお任せ頂けたら必ず貴社に大きな利益を齎します」
見た目とは裏腹に大人びた口調で話す様子に俺と部長は口を閉ざした。
(なんだ、この子は……)
真っ直ぐ部長を見る姿に、すぐハッと我に戻り、土下座をして謝った。
「申し訳ありません!まだ入って1年と経たない者をお連れして」
畳に額をこすりつけ謝っていると、部長が急に笑い出してくる。
「なかなか肝が据わっているじゃないか。そんな女性、向こうさんにはいなかった。……来週、うちに来てくれ。そこで」
「あ、ありがとうございます!!」
料亭に呼んだタクシーを見送ると大きく俺は息を吐いた。と、同時に香澄は地面へとへたり込んだ。
「大丈夫?」
「……ごめんなさい、なんとかお手伝いしたいと思って」
「いや、助かったよ。あの言葉がなかったら無理だった。……支店長に連絡したら明日は休んでいいって。
もし良かったらお礼にご飯でも。……あっ、でも彼氏いるよね?」
こんな可愛い見た目だ。
俺じゃなくても男ならほっとくわけがない。
「……いいえ、今はいません」
「いまは、って事は」
「……振られちゃって」
「こんな可愛い子を振るなんて最低だな、俺だったら」
するとへたり込んでいた香澄は立ち上がり問いてきた。
「先輩はいないんですか?」
その質問にドキッとしたけど、すぐに俺はいないと嘘をついた。
だって彩の事は少し冷めており、気持ちが離れつつあったから。
「じゃあ食べにいきましょう。急に明日休みになってしまったから予定もないので」
「じゃ、じゃあ」
俺らは料亭近くの居酒屋に入ると、お酒を飲んだ。
契約を取った祝いと先程のお礼を兼ねて。
香澄は俺のペースに合わせカクテルを飲み、俺は少し強めのワインを飲む。
すると、白かった肌は少しずつ赤くなっていき、目はとろんと虚ろになってくる。
「……いつからいないんですか、彼女」
「1年前かな。伊藤さんはいつ彼氏と?」
「先輩、……香澄でいいですよ」
「えっ」
「先輩ってかっこいいし、初めて見た時、ドキッとしちゃいました」
「……本当に?」
「はい」
次第に隣に座る香澄は俺に体を預けてくる。
その際にオレンジのような柑橘系の匂いが鼻を刺激してくるから、つい肩を抱いていた。
「……先輩」
軽く上目で見る香澄に俺はもう耐えれなくなり、個室内でキスをした。
「……ごめん」
「謝らないで、……今日は一緒にいて欲しい」
その一言で俺の心は完全に香澄へと傾き、店を出るとホテル街へと向かっていた。
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