今さらやり直しは出来ません

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その後、私達は部屋の中でテレビを見ながら過ごした。
この時期にやっているのはほとんど特番ばかりで、二人で笑ったり、クイズに挑戦したりしながら過ごしていくとあっという間に日は傾き、西陽が部屋の中へと入り込むと影を伸ばしていった。

「ねぇ、先輩」
「なに?」
「明日、先輩の家に行って良いですか?お互いフリーになっちゃったし、一人で年を越すのもなんかなぁって思って。
……それと忘れたとは言わせませんけど、私に貸しがあるんですからね!」
「いいけど、……お酒は無しね」

軽い釘を刺すと、すずは小さく舌打ちをして見せたが了承すると、私達は解散した。



そして翌日、すずは昼過ぎに家を訪ねてきた。
その際、一泊するにしては多いと思えるほど詰まった鞄を手に持っていた。

「お邪魔します」
「どうぞ」

敢えて私はそこには触れず、部屋を上らせると二人の年越しはスタートした。

一緒に食材を買いに行くが、その際、カゴにお酒を入れようとするすずに鋭く目を送ると、すごすごと棚へと戻し家へと帰る。
夕方、前回の詫びも兼ねて簡単な鍋料理を振る舞った。

「おぉー!美味しそう!!」
「味は保証できないけど、良かったら」
「いただきます!!……んーっ、美味しい!!」

満面の笑みで舌鼓を打つ所を見て、ホッと胸を撫で下ろした。
どうやら好評のようで、私も一緒に食べ、お風呂に入ると日付が変わる前に一つのシングルベッドに二人で入った。

「えへへっ。先輩、良い匂い」
「すずだって」

お互い横を向き、軽く抱き合っていると、すずはスッと私の背中に手を回し、少しだけ自身の方へと引き寄せてきた。

「はぁ……。私、男だったら絶対先輩と結婚しちゃうな。可愛いし、優しいし、料理だって上手だし。
なんで振るんですかね??その元カレ、見る目無さすぎですね」
「……」
「来年も一緒にいて下さいね」
「もちろん」

すると、ゴーンッと鈍い鐘の音が部屋の中へと響いてきた。

「先輩、あけおめ!」
「うん、あけおめ」

私達は鐘の余韻を聞きつつ、新たな一年を迎えたのを確認すると、眠りについた。




ーーーーーー



そして、年末休みも終わり、いつもの日常に戻り2週間が経ったある日。
私はすずに貸してもらった名刺を手に健人くんがいる興信所へと向かった。

電車に30分ほど揺られ、降り立った駅前の雑居ビルの中にその興信所はあった。
5階建てのビルには他に入居している会社の看板が掲げられているが、3階だけはポッカリと空欄のままだった。
でも、そこが健人くんがいる興信所の所在地だった。

「本当にここなのかな……」

一抹の不安を抱えながらも私はその雑居ビルへと入り、エレベーターのボタンを押す。

(……どんな風になっているんだろう)

幼かった時の印象しか持ち合わせていない私は25年ぶりの再会の嬉しさよりも、大きく変わっていて欲しくないという期待の方が強かった。

そして、3階に着くと、銀色で無機質な扉が私を出迎えた。

(この先に、健人くんが……)

丸ノブを回せば入れるのに、私はそのノブを掴んだまましばらく立ち尽くしていた。
が、次の瞬間…。

「うちに何か??」

若い男性の声だった。
すぐにノブから手を離し、振り返るとビニール袋を下げた金髪ショート髪の男の子が立っていた。

「あ、あの」

私は扉に一歩後退りして身を引いた。
まさかこんな人に出会うなんて思ってなかったから。
でも、この人はどう考えても健人くんではない。
若過ぎる。

「うちに用があるんですよね?入って良いっすよ」

初対面でこの物言い…。
すると、私に近寄ってくるのでサッと、横に身を躱すと先程まで開けることが出来なかった扉をいとも簡単に開け、中へといざなう。

一つ息を呑んだ後、私は開かれた興信所の中へと入った。

部屋の中はとても簡素だった。
目の前には応対するための台があり、その先には向かい合って並べられた机、そして右に目を移すとパーテーションが置かれ、そこで話を聞くんだなと容易に想像が付く。

「……誰?」

私に目を送る人物は女性だった。
伸びた黒髪ロングの隙間から見える目はとても冷たく、突然来た訪問者の私を睨みつけてくる。

「さぁ、知らない人っすね。依頼者じゃないっすか?とりあえず所長呼んできます」

男の子は女性の机にビニール袋を置くとパーテーションの奥の方へ移動し、扉が開く音を鳴らす。
いまだに私を睨むその女性は置かれたビニール袋に手を伸ばしたかと思うと、その中から赤い包装紙のお菓子を口にし、目の前のパソコンへと目を向き変えた。

(なんだ……この場所は……)

やってきた私の事など空気かと思うほど興味を示さず、普通の企業ではあり得ない対応を見せてくる。

(すず……あなた、とても良い人って言ったよね……)

こんな二人を見て、私はこれから現れる健人くんが期待外れになる事を予想した。





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