今さらやり直しは出来ません

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「ハッカーって……それ、犯罪じゃ……」

咄嗟に出た言葉に、健人くんは口元に人差し指を持ってくると、それ以上先は…と示してきた。

「伊藤香澄、じゃあまずはこいつをターゲットに進めようか。……とりあえず10日程時間くれる?ある程度は集めとくから」
「う、うん……」

すずの言った少ない日数で、と言う意味が今、分かった気がする…。


その後、私たちはお互いの連絡先を交換し、興信所を出るとエレベーターが上がってくるまでの短い時間に、健人くんが話しかけてきた。

「いやぁ、25年か、長いね」
「そうだね、最初は帰りたいと思ったよ。変わりすぎていたから」
「ははっ!まぁね。……彩ちゃん」
「なに?」

だけど、エレベーターが上がってきて扉が開くと『いや、いい』と口を濁してきた。

何か言いたい事があるのかと思い、開く扉には入らず待ったが入る事を促してくるので、軽く首を傾げつつも中に入り、手を振って別れた。



(変わってる部分が多かったけど、変わらないとこもあって良かった)

駅のロータリーで立ち止まり、雑居ビルの方を振り返りつつ思い返していると携帯が振動した。
健人くんからだ。

【そんなとこで立ち止まらないで気をつけて帰りなよ】

画面を見て、すぐに顔を上げた。
でも3階には人影はなく、不思議に思っていると続けてもう1通入ってくる。

【上だよ、上】

上と言われ、目線を上げていくと屋上の柵辺りにその姿があり、見つけた私に手を軽く上げてくる。
どうやらタバコを吸っているようで、空には薄い灰色の煙が見えた。

【ありがとう、連絡待ってる】

そう送ると、私は改札を通った。




ーーーーー




3日後、勤務が終わると私はある場所を訪れていた。

「どうでした?先輩」

目の前には出来上がったばかりのチーズハンバーグを頬張りつつ話す、すずの姿があった。
そう、あの時行けなかった洋食屋へと来ている。

「うん、色々あった……」
「良い人だったでしょ?」
「……すずは会った事ないでしょ」

再会した際に受けた衝撃の皮肉をいいつつ、私もハンバーグに手を付ける。

「それで、いつ分かるんですか?」
「10日ほど時間が欲しいと言っていたからもう少し先かな」
「ふーん。それで分かったらどうするんですか?」
「えっ」
「だって復讐ですよね?先輩なりに色々考えているんだと思ってますけど?……もしかして何も??」

そう言われ、図星だった。
だってこんな感情を持った事は今までなかったので、自ら調べたりする事はしていなかった。

「もうっ、甘過ぎですよ!私だったら、まずその女にいきますね。だって、盗ったんですから!」

すずは健人くんと同じ事を言ってきた。
標的はまず女だと。
だから私は問いた。

「……じゃあすずはどう復讐するの?」
「そうですねー。んーっ……」

フォークを置き、腕を組んで考えるすずは目を瞑り、しきりに首を左右に動かしては悩んでいるようだった。
そんな姿を見て私は、『ふっ』と笑う。

「どうして笑うんです??」
「いや、表情が豊かだなぁって思って」
「もうっ!私より先輩が考えなきゃダメなんですよ。分かってます??」
「ごめん……。そんなに怒らないで」

すると、すずは『あっ』と声を出してくる。

「どうしたの?」
「決めました。私だったらその女と仲良くなります」
「えっ!!なんで!!バレちゃうよ?」

すると今度は、すずが『ふふーん』と笑う。

「先輩だったら、ね」
「……言ってる意味が分からないんだけど」

おもむろにフォークを掴んだかと思えば、プレートに乗ったブロッコリーに突き刺し、半分に切り分けたハンバーグの間にねじ込んでいく。
そしてブロッコリーを自分だと仮定して話を続けていく。

「仲良くなった相手が当事者と繋がっているなんて普通考えませんよね?」
「まぁ、……そうだね」
「だから機が熟すまで身分をひた隠し、親友になりすます。で、頃合いを見て二人で復讐するんです」
「二人??」

首を傾げた私に、すずはとんとんと自分の胸を指す。

「……すず」
「言ったでしょ?先輩がやるんなら協力するって」

話し終えると、刺さったブロッコリーを口へと運んでいた。

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