今さらやり直しは出来ません

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「あれ?たけるくんは?」
「あぁ。あいつは……」

健人くんはパーテーションの方へと目を向け、キリさんに見えないように指を指す。
そういえば初めて会った時もお菓子を買っていたこと思い出す。

「そっか」
「じゃあ、コレが集めた資料」

テーブルに茶封筒を出してくるが、中心部分がかなり盛り上がっていることに気付く。

「こんなに?」
「まぁね。で、なんていうか、この女、なかなかだねぇ」

少しニヤついたかと思ったら、茶封筒を軽くあげ、そして逆さにする。
ドサドサッと音を鳴らし出てくる写真を見て私は言葉を失った。

元カレである翔平と共に歩く姿はもちろんだが、他にも二人の男性と手を繋ぎ歩く写真もあったからだ。
一人は中年のスーツ姿、もう一人はラフなパーカーを着る若い男性。
そのいずれともホテルへと入る場面が証拠として出されている。

「うわぁ……尻軽……」

すずは目の前に広がる写真を一つ取り、まじまじと見ては、さらに置かれた写真へと手を伸ばす。



「まぁな、この後楽しんでいるようで朝まで出てこなかったぞ」
「朝まで!」
「そう、よほどテクニックが上手いんだろうねぇ、普通なら終わったらさっさと出てくるだろ?でもこいつは朝まで出てこなかった」
「……」

私たちはしばし出された写真を一つ一つ見ては黙っていると、健人くんがテーブルに銀色のボイスレコーダーを置いてくる。

「それは?」
「彩ちゃんには刺激が強いかもなぁ。……聞いてみる?」
「はい!聞きたいです!!」

なぜか、すずが元気よく返事をしていく。
もう健人くんに対する怖さは消え失せているようで、逆にこの状況を楽しんでいるかのようだった。

「……いい?」

私に許可を求めてくるので頷く他なかった。
再生ボタンを押すと、そこには男女の荒い呼吸から始まり、愛を囁きつつ盛り上がっている様子が分かる声へと続き、静かな室内に情事の声がイヤらしく響いていく。

『大好き、愛してる』  

男性の囁きに嬉しいと感謝を述べる声。

それが終わると、時に激しくが当たる音もそこには鮮明に残されており、私達はカァァ……ッと顔を赤くして俯いていく。
でも健人くんは楽しんでいるようで、ふふっと笑ってくる。

「も、もう……やめて」

私は耐えれなかった。
すぐに置かれたボイスレコーダーの停止ボタンを押し、再生を止めた。

「あら、もう少ししたら面白かったんだけどなぁ」

一度最後まで聞いたようで、後の顛末をネタバレしようとしているが、それだけは…と断りを入れた。




少し落ち着かない私達の元に扉が開く音が届く。

「買ってきましたよ。……今回ちょっと多くねぇっすか?こんなに喰ったら体に悪いっすよ」
「……別にあんたの体じゃないでしょ」
「まぁ、……そうっすけど」

二つのビニール袋がテーブルに乗ったようで、置くなりガサガサッと中を物色していく音が続いた。

「釣りはいつもみたいに良いんっすよね?」
「……」

答えずにいるキリさんにたけるくんのため息が漏れ聞こえてきた。

「あれ、いたんすね。……って健さん、お茶くらい出した方が良くねぇっすか?」
「あぁ……悪い。忘れてた」

腰を浮かせようとする健人くんの両肩に手を置き、座るように押しつけていく。

「まぁ、俺がやるから良いっすよ」
「わりぃ」

見た目は派手だが、ちゃんと常識をわきまえている所を見て、私は少しギャップを感じた。

「あの、今の人、誰ですか??」

すずが尋ねると何を思ったのか、あいつはやめとけと諭してくる。

「ち、違いますよ!そういう意味で言ったんじゃ」
「なら何故赤くなる?」

そう言われ、すずの方へと向くと確かに赤い。

「こ、これは。さっきのセ……」

みなまで言うことは良くないと思い、両手で口を塞ぎ、次の言葉を吐き出すのを止めていく。

「エロいな、おまえ」
「……」
「健人くん」
「んっ?」

私は首を振り、それ以上は…と目を送った。

「わりぃわりぃ。つい言葉に出しちまうのは俺の悪い癖だな」
「まったくっすよ。調査するこっちの身にもなって欲しいっすね」

私達には前回と同じお茶を、そして健人くんにはコーヒーを入れ戻ってくると、テーブルに置いていく。

「じゃあ、この写真撮ったの、たけるくん?」
「そうっすよ。……朝まで出てこないから暇で。でも帰るわけにはいかないから寝不足っす」
「そ、そうなんだ」
「まぁ、うちは役割がはっきりしてるからな」
「……じゃあ健人くんはなにを?」

私の問いに、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりにニヤリと笑いをむけてくる。

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