今さらやり直しは出来ません

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パレードカーが私達の前を通り過ぎていくと、その鮮やかな電飾は次第に視界から遠ざかっていき、人々の注目もそちらへと向けられていった。

「……私でいいの?」
「あぁ、彩ちゃんじゃなきゃダメだ。あの日、想いを告げた君じゃないとな」
「……ありがとう」

私はゆっくりと背に手を回すと、それを返すかのように健人くんも背に手を回し抱き合った。




「今日は本当にありがとう」

自宅マンションの入り口前まで送り届けられた私の心は暖かさで満ち溢れていた。
それは告白された事でもあるが、繋いだ手の温もりがじんわりと心を癒してくれるから。

翔平の裏切りで将来への淡い期待から、失意のどん底へと突き落とされ負った深い心の傷を隣にいる健人くんは忘れさせてくれる。
それが何よりも嬉しかった。

「なにかあったら必ず連絡して欲しい。すぐに来るから」
「うん」
「……じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」

手を振り別れても、健人くんはマンションへと入るまでその背をずっと見守り続けてくれていた。





ーーーーーー





「えーっ!先輩、昨日!」
「しっ!……だから声が大きいって」

食堂で向かい合うすずは目を大きく見開き、弁当に入った玉子焼きをポロッとテーブルに落としながら大声を上げていた。

作り過ぎたという理由で、私は自分用以外にもう一つ作って渡したその時から、すずは感じ取っていたのかも知れない。
渡す際に心の内を覗くかのような視線と『後でちゃんと話してください』という忠告をされていたから。

「そうですかぁ、あの人と先輩が」
「……うん」
「じゃあ、そんな先輩のお祝いをしないとですね!」
「いいよ、そんな事しなくても」
「ダメです!善は急げですから。……あっ、なら」
「んっ」

すずはパンッと手を叩きある提案をしてきた。

「三人でしましょう」
「三人って、あとは誰が?」
「もう惚けちゃって……健人さんですよ」
「えっ!なんで!!」
「そりゃあ、二人の初々しい態度を見てみたいし、聞きたい事もあるので。
ねっ?先輩、聞いてくださいよ。いつが空いてるかを」
「迷惑だって、それは……」
「あれあれっ?私、先輩に貸しがあるんだったような」
「もう返したでしょ。あの日、一緒に食べにも行ったし、それ以外には無いはず」
「ちっちっちっ」

すずは箸を上に向けると左右に振りつつ、犯人が見つかった探偵のような口調で話してきた。

「先輩の貸しはあと一つ。並んでしまうと休憩時間内には帰れないからここで一つ奢ると告げた。
でもそれはまだ果たされてない。
だから今回の私の提案は断れない!」

言い終えると不敵な笑みを浮かべつつ箸を向けてくるので、私は大きくため息を吐いた。


その後、急かされるように連絡を入れると、【こいつのお陰でもあるから……】と内心嫌そうでもあるが、受ける旨を貰った。






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