今さらやり直しは出来ません

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街灯の下で周囲を気にしつつ立っている翔平を見て、私はカーテンをギュッと掴んでいるとガチャッと音が鳴った。

「健人くん?」
「そこにいるんだ、俺が相手してくる」
「待って!」

玄関を出ようとする健人くんの元へと行くと、開いた扉を私は閉めた。

「翔平の元には私が行く。全ては私達の問題だから……だからお願い、行かせて」

決意の目を見せる私を、健人くんとすずは聞き入れてくれるが、何かあったら…という事でエントランスに身を潜め待機という形になった。


「彩っ!!」

エントランスから出てきた私に、翔平はすぐに近寄って来た。

「今さらなに?香澄さんと仲良くしているんじゃないの?」
「開口一番がそれか……。まぁ、いい。俺は言いたい事があって来たんだから」
「言いたい事?」
「あぁ、……お前、香澄に付き纏っていただろ?フラれた腹いせでそんな行動するなんてな。
俺にフラれた事がそんなに辛いか?なんなら戻ってやってもいいぞ」
「戻る?……やり直すって事を言ってるの?」
「あぁ。だから香澄の本性を暴き、会社にあんな写真を送ったんだろ?俺とよりを戻したい一心で」

翔平は私がやった事だと決めつけているが、送ったのは私じゃない。
健人くん達だ。
でもそれを翔平が知るはずもないから、怒りの矛先を私に向けているんだとすぐに分かった。

「……なにか勘違いしているみたいだけど、私はそんな物送ってない。確証も無いのに突っかかるの止めて欲しい」
「お前以外に誰がいるんだよ、俺らの関係を知っているのは!」

暗闇の中でも分かる程に翔平は顔を赤くすると両拳を固く握り、何かに耐えているようだった。

「私がよりを戻したいと思っているみたいだけど、そんな気持ちは無い。
……今さらやり直す事は出来ない。自分がどれだけ傷つけたか分かる?
つまらない、退屈だと言い、会うことも少なくなっていた。
確かに私だって気持ちに応えられず、申し訳ないと思ってる。
でも、だからって他の人に目を向ける事は無かった。
それが今になって戻してやっても良いなんてよく言えるね。
……だからお願い。もう私のことは忘れて」

私の決意を黙って聞いていた翔平だったが、次の瞬間パチンという音が鳴ると手元にはキラリと光る物が見えた。

「……そんな物出してどうする気?」

右手に握られていたのは小さなポケットナイフだった。

「こんなに言ってるのに、認めないどころか戻る気も無いなんて」

持つナイフはブルブルと震え、今にも私に向かってきそうな感じに見えた。

「……誰かに見られる前に仕舞って。警察を呼ばれたら捕まるだけだよ」
「うるさいっ!俺は香澄を失っただけじゃなく、仕事も失くしそうなんだよ!
全部お前がした行為でな!!」

翔平の怒号は周囲に響き渡り、マンションの住人がベランダへと出てくる音が耳に届いてくる。

「ねぇ……やめよう。本当に警察来るよ」
「うるさいって言ってるだろ!!」

翔平は持っていたナイフを手に私に迫り、身動きが取れず立ち尽くしていた時だった。

「……っ」

エントランスから様子を見ていた健人くんが飛び出し、翔平の手を掴んでいた。
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