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38 (翔平視点)
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ホテルが近づいてくると、俺はエントランスへと目を向けていた。
(もういないよな?鉢合わせなんかしたら最悪だ…)
そう思った時だった。
彩がエントランスから出てくるのを俺は確認すると、目線を彩から香澄へと向き替えた。
「泊まる部屋知ったらビックリするよ」
「本当っ?」
「あぁ」
弾けるような笑顔を向けてくるので、俺は手をギュッと繋ぎ、フロントへと向かった。
手続きを済ませ、エレベーターに向かうと何かが落ちる音がしたので振り向くと、倒れた女性がこちらへと目を向けてきていた。
(彩っ!!)
すぐに分かった。
それと同時に俺は隣にいる香澄を引き連れエレベーターへと逃げると、すぐに『閉』ボタンを押した。
「翔くん?」
二人きりのエレベーター内で俺は動揺を隠せず目をキョロキョロとさせ、語りかけてくる香澄の言葉が入って来なかった。
「どうしたの?体調悪いの?」
腕を掴み、覗き込んできた香澄を見て、しまったと思った。
これではバレてしまうと。
「い、いや、何でもない。ごめん。ちょっと考え事をしていて。
……そうだ、これから食べるイタリアン凄い美味しいらしいから香澄も喜ぶはずだよ。今日はクリスマスだし、多少飲みすぎても大丈夫だよ」
そう言いながら先程貰った部屋のキーを見せた。
「うん。そうだねっ。今日はうんと楽しむんだもんね」
(そうだ、今日は特別な日。彩の事を考えるなんて間違っている。もうあいつは終わった存在だろ)
そう言い聞かせ、レストランでのひと時を楽しんだ後は、取ったスイートルームに入り二人きりの甘い時間を過ごした。
その際、一度携帯が鳴ったが、メールだから無視した。
そして、香澄と別れ来ていたメールを開くと彩だったから適当に嘘を付いた。
だが、それに対して追求が始まり通話に発展すると、『浮気しているの?』と言ってくる。
だからもうここで終わらせるのが無難だと思い、今まで溜まっていた気持ちを言いつけ通話を切った。
一区切りついた事で、俺は晴れ晴れとした気持ちで香澄と付き合っていった。
だけど、春が近づいてくるとどうも様子がおかしい。
会ってはいるが、どこか暗い影を落としている。
「カフェでも入って休もうか?」
ショッピングモールをぶらぶらと歩き回っているからだと思ったので、そう提案するが、首を振られた。
「……なにか考え事?今日はちょっと様子がおかしいよ」
「そんな事ないよ。……あっ、あれみたいっ!」
雑貨屋の方へと腕を引くが、明らかにおかしいと思い始めた。
でもその原因が分からず、悶々と過ごしていたある日の事。
「おはようございます」
会社に行くと皆が俺の方へと目を向けてくる。
しかもその目は好意的ではなく、軽蔑するかのような目だった。
(なんだ?……俺、トラブルでも起こしたか?)
向けられた目を見ながら頭を巡らせていると、部長が声を掛けてきた。
「斉藤、ちょっと……」
「……はい」
部屋の奥にある一室へと入ると、テーブルの上に茶封筒が置かれていた。
「まぁ、座ってくれ」
向かい合うように椅子に座ると、すぐに置かれた茶封筒の中身を出してきた。
「……っ」
そこには香澄が俺以外、二人の男と会っている所や行った事もある高級ブティックで買い物をしている場面、さらにはホテルへと入る所までバッチリと収められていた。
(……嘘だろ。なんでそんな顔を見せているんだ)
俺に見せていた笑顔がそこにはあり、散らばった写真を手に取っては、少し項垂れた。
「……貰った情報には伊藤くんの相手は既婚者らしい。これが取引先に知られると契約を切られる可能性がある。
だから彼女は辞めてもらう事にした」
「そ、そんな……」
でも、俺は思った。
これは確かに香澄の事だが、俺が呼ばれた理由が分からなかった。
「あの……なんで俺、呼ばれたんですか?」
すると、部長は散らばった写真ではなく、抜き取っていたのかテーブルの下から一枚の写真を見せてきた。
そこには俺と香澄がブランド品を持ち、リサイクルショップへと向かう姿だった。
「これ、嘘ですっ!違います!」
二人の男に買って貰った品を手に、意気揚々と向かう写真には悪びれる様子など微塵も見えなかった。
「じゃあなんでこんなのがあるんだ?」
「知りませんよっ!誰がこんな事を!!……そうだ、封筒見せてください」
置かれた封筒を手に取り、裏を見るが送り主など一切書かれていなかった。
「誰だよ、本当に……」
愚痴る俺に部長は続けてくる。
「……悪いが、こんなのがある以上お前もしばらく自宅待機して貰いたい」
「そんなっ!俺はやってない!!信じてください」
ガタッと椅子を倒し訴えるが、部長が首を縦に振る事は無かった。
「くそっ!!誰だよ!……それより香澄が浮気なんて。……もしかして金目当てで俺に?」
すぐに香澄へと連絡を入れるが、既読は付かなかった。
だから次に通話するが、着信拒否されていた。
(……まさか)
すぐに俺は香澄の家へと向かい、何度も呼び鈴を押すが応答が無い。
(逃げたのか……)
ガンッと扉を蹴り、怒りをぶつけたが残るのは虚しさだけで、俺は家へと帰る他無かった。
夕方、暗い部屋の中でこんな陰湿な事をした人物は誰かと考えていていると、ある人物が頭に浮かんだ。
「……彩、か」
俺らの関係を知る人物を思い浮かべる中では彩以外にいない。
「あいつ、別れた逆恨みから香澄に付き纏い、そして俺まで嵌めようとしているんだ。……そうだ、そうに違いない!」
気付くと俺はある物を握りしめ、家を飛び出していた。
向かう先は……彩の家だ。
(もういないよな?鉢合わせなんかしたら最悪だ…)
そう思った時だった。
彩がエントランスから出てくるのを俺は確認すると、目線を彩から香澄へと向き替えた。
「泊まる部屋知ったらビックリするよ」
「本当っ?」
「あぁ」
弾けるような笑顔を向けてくるので、俺は手をギュッと繋ぎ、フロントへと向かった。
手続きを済ませ、エレベーターに向かうと何かが落ちる音がしたので振り向くと、倒れた女性がこちらへと目を向けてきていた。
(彩っ!!)
すぐに分かった。
それと同時に俺は隣にいる香澄を引き連れエレベーターへと逃げると、すぐに『閉』ボタンを押した。
「翔くん?」
二人きりのエレベーター内で俺は動揺を隠せず目をキョロキョロとさせ、語りかけてくる香澄の言葉が入って来なかった。
「どうしたの?体調悪いの?」
腕を掴み、覗き込んできた香澄を見て、しまったと思った。
これではバレてしまうと。
「い、いや、何でもない。ごめん。ちょっと考え事をしていて。
……そうだ、これから食べるイタリアン凄い美味しいらしいから香澄も喜ぶはずだよ。今日はクリスマスだし、多少飲みすぎても大丈夫だよ」
そう言いながら先程貰った部屋のキーを見せた。
「うん。そうだねっ。今日はうんと楽しむんだもんね」
(そうだ、今日は特別な日。彩の事を考えるなんて間違っている。もうあいつは終わった存在だろ)
そう言い聞かせ、レストランでのひと時を楽しんだ後は、取ったスイートルームに入り二人きりの甘い時間を過ごした。
その際、一度携帯が鳴ったが、メールだから無視した。
そして、香澄と別れ来ていたメールを開くと彩だったから適当に嘘を付いた。
だが、それに対して追求が始まり通話に発展すると、『浮気しているの?』と言ってくる。
だからもうここで終わらせるのが無難だと思い、今まで溜まっていた気持ちを言いつけ通話を切った。
一区切りついた事で、俺は晴れ晴れとした気持ちで香澄と付き合っていった。
だけど、春が近づいてくるとどうも様子がおかしい。
会ってはいるが、どこか暗い影を落としている。
「カフェでも入って休もうか?」
ショッピングモールをぶらぶらと歩き回っているからだと思ったので、そう提案するが、首を振られた。
「……なにか考え事?今日はちょっと様子がおかしいよ」
「そんな事ないよ。……あっ、あれみたいっ!」
雑貨屋の方へと腕を引くが、明らかにおかしいと思い始めた。
でもその原因が分からず、悶々と過ごしていたある日の事。
「おはようございます」
会社に行くと皆が俺の方へと目を向けてくる。
しかもその目は好意的ではなく、軽蔑するかのような目だった。
(なんだ?……俺、トラブルでも起こしたか?)
向けられた目を見ながら頭を巡らせていると、部長が声を掛けてきた。
「斉藤、ちょっと……」
「……はい」
部屋の奥にある一室へと入ると、テーブルの上に茶封筒が置かれていた。
「まぁ、座ってくれ」
向かい合うように椅子に座ると、すぐに置かれた茶封筒の中身を出してきた。
「……っ」
そこには香澄が俺以外、二人の男と会っている所や行った事もある高級ブティックで買い物をしている場面、さらにはホテルへと入る所までバッチリと収められていた。
(……嘘だろ。なんでそんな顔を見せているんだ)
俺に見せていた笑顔がそこにはあり、散らばった写真を手に取っては、少し項垂れた。
「……貰った情報には伊藤くんの相手は既婚者らしい。これが取引先に知られると契約を切られる可能性がある。
だから彼女は辞めてもらう事にした」
「そ、そんな……」
でも、俺は思った。
これは確かに香澄の事だが、俺が呼ばれた理由が分からなかった。
「あの……なんで俺、呼ばれたんですか?」
すると、部長は散らばった写真ではなく、抜き取っていたのかテーブルの下から一枚の写真を見せてきた。
そこには俺と香澄がブランド品を持ち、リサイクルショップへと向かう姿だった。
「これ、嘘ですっ!違います!」
二人の男に買って貰った品を手に、意気揚々と向かう写真には悪びれる様子など微塵も見えなかった。
「じゃあなんでこんなのがあるんだ?」
「知りませんよっ!誰がこんな事を!!……そうだ、封筒見せてください」
置かれた封筒を手に取り、裏を見るが送り主など一切書かれていなかった。
「誰だよ、本当に……」
愚痴る俺に部長は続けてくる。
「……悪いが、こんなのがある以上お前もしばらく自宅待機して貰いたい」
「そんなっ!俺はやってない!!信じてください」
ガタッと椅子を倒し訴えるが、部長が首を縦に振る事は無かった。
「くそっ!!誰だよ!……それより香澄が浮気なんて。……もしかして金目当てで俺に?」
すぐに香澄へと連絡を入れるが、既読は付かなかった。
だから次に通話するが、着信拒否されていた。
(……まさか)
すぐに俺は香澄の家へと向かい、何度も呼び鈴を押すが応答が無い。
(逃げたのか……)
ガンッと扉を蹴り、怒りをぶつけたが残るのは虚しさだけで、俺は家へと帰る他無かった。
夕方、暗い部屋の中でこんな陰湿な事をした人物は誰かと考えていていると、ある人物が頭に浮かんだ。
「……彩、か」
俺らの関係を知る人物を思い浮かべる中では彩以外にいない。
「あいつ、別れた逆恨みから香澄に付き纏い、そして俺まで嵌めようとしているんだ。……そうだ、そうに違いない!」
気付くと俺はある物を握りしめ、家を飛び出していた。
向かう先は……彩の家だ。
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