今さらやり直しは出来ません

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37 (翔平視点)

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それから俺は香澄と愛を育んでいった。

高級外車で迎えに行けば『凄いっ!』と声をあげ喜び、高級ブティックのショーケースに並ぶアクセサリーや時計を見ては物欲しそうな目を向けてくる。

「いいよ、香澄が欲しいなら」

俺は今まで貯めた金を吐き出し、欲しいと言った物はなんでも買い与えた。
その度に大好きと告げてくれ、夜の相手もしっかりしてくれる。
ちゃんと見返りもあるから俺だけが……という感じにはならず、より香澄の心を掴むために注ぎ込んでいった。

一方で、彩には体調が悪いとか仕事での呼び出しで、とあらゆる理由をつけ昼間に会うことはせず、夜のほんの少しの時間一緒にいるだけに留めた。
別れを切り出しやすくするためだ。

それに昼間に会っている所を香澄に見られたら最悪だ。
隣に女がいると知ったらせっかく手に入れた極上の女を手放してしまう事になる。
そんなのは耐えられそうに無い。
だからちゃんと偽装工作をしつつ、二重生活を送り、クリスマスを1ヶ月後に控えたある日のこと。

「このホテル、香澄は絶対喜ぶな」

俺は一人一泊20万円もするスイートルームを見つけ、すぐに予約した。
それだけじゃなく、最上階にあるレストランも予約し、前々から欲しがっていたブランド物のペアリングも買った。

好きと言っていたピンクダイヤモンドをあしらい、キラリと光るその指輪の値段は結構高かったが悔いはない。

彩には予約したと伝えるが、当日仕事と嘘をつき断ればいい。
どうせほとんど会ってない様なものだ。
俺に気なんて無いだろう。

俺はパコッと指輪の入った箱を閉め、当日を迎える事にした。



クリスマス当日、少しそわそわした感じを持ちつつ、隣にいる香澄に目を送る。
カタカタとキーボードを打つ香澄は真剣な目で資料を作ってくれているが、俺はこれから共に過ごす一夜が楽しみで仕方なかった。

「先輩、終わりました」
「ありがとう。……じゃあ」

俺は腕時計の時間を確認すると、定時の17時が迫っていた。

「今日はここまでで良いよ。何か用事があると言っていたでしょ?続きは来週でも間に合うから」

俺らが付き合っているのは会社内では内緒のため、間違っても名前で呼ぶ事なんてないように注意し、会話も何処か他人行儀にしていた。

「はい、……じゃあお先に失礼します」
「うん、また来週宜しく」

トントンと資料を束ね、パソコンの電源を落とすと同時に終業を告げる鐘が鳴り、笑顔を向けた後去っていく香澄の後ろ姿を見つつ、俺は妄想を膨らましていた。

その後、18時に仕事を切り上げた俺は、軽い足取りで香澄の家へと向かった。

ピンポンと呼び鈴を鳴らすと、インターホンで対応する事なく、すぐに玄関が開いた。

「翔くん」

ドアを開け、現れた香澄はとても可愛かった。
緩巻きの髪にはキラキラと光るラメの様な物がついており、白の長袖ニットに黒の袖なしワンピースを合わせた格好で現れた香澄に思わず息を一つ飲んだ。

「似合ってるよ、香澄」
「嬉しいっ、早く行こう」
「あぁ」

ホテルに向かう前に俺は彩にメールをした。

【仕事のトラブルでどうしても行けそうにない】

……これでいいだろう。
送られてどう返事をするかはなんとなく分かる。
仕事なら仕方ないか、と納得するんだろ?

その後、予想通りのメールを貰うと俺はニヤリと笑った。

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