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翌日、私は手を繋いだ状態で目を覚まし体を起こすと、一枚の毛布が落ちたことに気付く。
どうやら看護師さんが私にかけてくれたようで、拾い上げると共に掛けてくれた方に対してお礼を述べた。
朝日が昇り、街はいつも通りに始まっていく。
「あっ……会社に連絡しないと」
病室を出る際、眠り続ける健人くんを見ては、またチクリと胸が痛んだ。
「はい。……すみません、宜しくお願いします」
私は課長に起こった事実を正直に話した。
本来ならただの恋人関係の私がこんな理由で休むのは社会人としては失格だと思う。
でも課長は、それを了承してくれた。
会社を休まず、有給さえもあまり取らない私の仕事ぶりを評価してくれているようで…。
休んでいる間の業務は課全体でやりくりすると告げられ、その際、すずの名前も出てきたことで少し頭が上がらない気持ちになった。
(貸しを作ってばかりだな…)
電話を終え、病室に戻ると看護師さんがおり、終わった点滴を新たな物へと付け替えていた。
「もう少しで目を覚ますと思いますよ」
「えっ」
それだけを告げると、次の仕事もあるのだろう。
いそいそと病室を後にしていった。
目を覚ますと告げられ、少し落ち着かない気持ちになった私は、部屋にあるポットを使いお湯を沸かす事にした。
寝起きだとまず水分が欲しいと思ったから。
ゴトゴトッ…と水が沸騰する音と、心拍計の音がする病室でまた私は隣に座り、健人くんの顔を見た。
「……ここにいるからね」
カチッとポットが湧いた事を知らせ、立ちあがろうとした時だった。
「……んっ」
「健人くんっ!」
「ここは?」
「……病院だよ。良かった、目を覚まして。
喉乾いているでしょ?すぐ用意するから」
立ち上がり備え付けのお茶のティーバックを入れながら、目には涙を浮かべていた。安堵感と申し訳なさ、その両方が入り混じりながら。
電動ベッドを操作し、体を起こすと私はお茶を手渡した。
「どれだけ寝てた?」
時計の針はすでに9時を回っていた。
「半日くらいかな」
「そうか……」
ズズ…ッとお茶を啜りながら私のことを見てくる。
「なに?」
「……夢、見ていたんだ」
「夢?」
「あぁ。……しかもあの時、君をお嫁さんにしたいと言っていた夢を」
「そうなんだ」
すると健人くんは、ふふっと笑い出してくる。
「どうしたの?」
「いや、今見るまで忘れていたんだが、本当にガキってよくわからん事するよなぁって。
だって、あの時俺はどんな行動取ったと思う?」
問われ、私も夢の事を必死に思い出そうと天井を見上げるが、思い出すのはあの言葉のシーンだけで、その前後にあった情景は全く分からず首を振った。
すると、健人くんは弾んだ声で話してきた。
「指輪代わりに泥団子を渡そうとしているんだよ!しかもこれくらいのを」
野球のボールの大きさを表す行動をとり、大きく笑う。
「ははっ、馬鹿だろう?……えっ」
昔を思い出し、場を明るくさせようとしてくれる健人くんに対して私は泣いていた。
それはあの日の思い出を共有できた事に対してではなく、目の前にいるこの人をこの先も支えたいと思ったから。
「私……あなたの隣にいたい。ただの恋人としてじゃなくて」
私の告白に健人くんは黙って聞いていた。
どうやら看護師さんが私にかけてくれたようで、拾い上げると共に掛けてくれた方に対してお礼を述べた。
朝日が昇り、街はいつも通りに始まっていく。
「あっ……会社に連絡しないと」
病室を出る際、眠り続ける健人くんを見ては、またチクリと胸が痛んだ。
「はい。……すみません、宜しくお願いします」
私は課長に起こった事実を正直に話した。
本来ならただの恋人関係の私がこんな理由で休むのは社会人としては失格だと思う。
でも課長は、それを了承してくれた。
会社を休まず、有給さえもあまり取らない私の仕事ぶりを評価してくれているようで…。
休んでいる間の業務は課全体でやりくりすると告げられ、その際、すずの名前も出てきたことで少し頭が上がらない気持ちになった。
(貸しを作ってばかりだな…)
電話を終え、病室に戻ると看護師さんがおり、終わった点滴を新たな物へと付け替えていた。
「もう少しで目を覚ますと思いますよ」
「えっ」
それだけを告げると、次の仕事もあるのだろう。
いそいそと病室を後にしていった。
目を覚ますと告げられ、少し落ち着かない気持ちになった私は、部屋にあるポットを使いお湯を沸かす事にした。
寝起きだとまず水分が欲しいと思ったから。
ゴトゴトッ…と水が沸騰する音と、心拍計の音がする病室でまた私は隣に座り、健人くんの顔を見た。
「……ここにいるからね」
カチッとポットが湧いた事を知らせ、立ちあがろうとした時だった。
「……んっ」
「健人くんっ!」
「ここは?」
「……病院だよ。良かった、目を覚まして。
喉乾いているでしょ?すぐ用意するから」
立ち上がり備え付けのお茶のティーバックを入れながら、目には涙を浮かべていた。安堵感と申し訳なさ、その両方が入り混じりながら。
電動ベッドを操作し、体を起こすと私はお茶を手渡した。
「どれだけ寝てた?」
時計の針はすでに9時を回っていた。
「半日くらいかな」
「そうか……」
ズズ…ッとお茶を啜りながら私のことを見てくる。
「なに?」
「……夢、見ていたんだ」
「夢?」
「あぁ。……しかもあの時、君をお嫁さんにしたいと言っていた夢を」
「そうなんだ」
すると健人くんは、ふふっと笑い出してくる。
「どうしたの?」
「いや、今見るまで忘れていたんだが、本当にガキってよくわからん事するよなぁって。
だって、あの時俺はどんな行動取ったと思う?」
問われ、私も夢の事を必死に思い出そうと天井を見上げるが、思い出すのはあの言葉のシーンだけで、その前後にあった情景は全く分からず首を振った。
すると、健人くんは弾んだ声で話してきた。
「指輪代わりに泥団子を渡そうとしているんだよ!しかもこれくらいのを」
野球のボールの大きさを表す行動をとり、大きく笑う。
「ははっ、馬鹿だろう?……えっ」
昔を思い出し、場を明るくさせようとしてくれる健人くんに対して私は泣いていた。
それはあの日の思い出を共有できた事に対してではなく、目の前にいるこの人をこの先も支えたいと思ったから。
「私……あなたの隣にいたい。ただの恋人としてじゃなくて」
私の告白に健人くんは黙って聞いていた。
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