45 / 49
45
しおりを挟む
それから1週間後、健人くんは退院する日を迎えた。
「本当にありがとう、すず」
付き添うために二日休んだ事のお礼を告げつつ、入院する病院へ共に向かっていた。
「良いんですよ!私は先輩の為ならいくらでも!!」
とても上機嫌に話す様子に、これは何か企んでいるのでは?と疑ってしまい…。
「……なにして欲しいの?」
「えっ!!!」
(やっぱり……)
驚く顔だが、目だけは眩いばかりに輝いており、この子も私と同じで隠すのが下手なんだとすぐに分かった。
「……別にこれって言うのは無いですよ、本当に!」
「それは嘘。だって目だけはとてもウキウキしてる」
「ま、まぁまぁ。それは後々って事で……。早く行きましょう。愛しの健人さんが待ってますよ!」
上手くはぐらかしつつ、私の背を押し病室へと向かった。
「へぇー、個室なんですね!」
すずは物珍しそうに病室を見渡すが、ここにあるのはどこにでもある物ばかりだ。
テレビにトイレ、備え付けの流し。
そのどれにも興味を示す所を見ると、子供っぽい一面もあるんだなと改めて知る。
私はこの日の為に少し大きめの鞄を持参していた。
そこには普段買う事の無かった男性向けの衣服が入っている。
「着れる?」
鞄から薄手の白いトレーナーと黒のジャージを手渡していく。
「……大丈夫そうだ、ありがとう」
そんな私達のやり取りを後ろで見ていたすずが声を掛けてくる。
「……なんか夫婦みたいですね」
その一言に私達は同時にそちらを向いた。
「ふっ、そう思えるんだったら間違ってないと言った方がいいか?」
「えっ!!」
言った健人くんじゃなく、私に向かって足を進めてきた。
「せ、先輩……?」
私は少し目線を外し、健人くんのトレーナーの袖を掴んだ。
「悪いが、彩ちゃんとはそういう関係になったから。連れ歩くなら俺に許可取れよ」
「……本当に、ですか?」
私の腕を掴み、答えを求めるすずに私は小さく頷いた。
「そうですかぁ……。ならお祝いが必要ですよね!
じゃあ、いま許可を取ります。先輩と飲みに行きたいので良いですよね?」
「お前と二人だと何をするか分からんから皆でなら良い」
「えぇー!!女同士にしか聞けないこともあるって分かりますよね??」
「それは分かるが、今回はダメだ。皆で、だ」
「ぐぐっ……」
悔しがるすずは掴んだ腕に力をより込めていく。
「……痛いよ、すず」
「あっ!ごめんなさい。……分かりました。皆で、でいいです」
要望が通らなかったことでしょんぼりしたすずだったが、退院祝いで開いた席ではその影は消え失せ、お酒を飲みつつ場を明るくさせていく。
「そうだ。健さん、これ……」
その日の夜、近くの居酒屋に集まった私達の前でたけるくんがある画面を見せてきた。
「まぁ……そうなるよな」
そこには翔平が殺人未遂で逮捕された事の記事で、起こった現場となる写真も掲載されており、それを見るなり私は少し目を伏した。
「たけ。……もういい」
「……っす」
私の気持ちを量った健人くんは、すぐにその画面を消すよう促していく。
でも私は、その記事を見るより前にその事実を知っていた。
なぜなら入院中にあの刑事さんから電話を貰い、改めて事情を聞かれた際に教えてもらったからだ。
そしてそれ以外の事も…。
「あなたを訴えると言ってますが、どうしますか?
まぁ、証拠となる封筒はこちらで調べましたが、指紋等も検出されませんでしたので訴えた所で……」
負ける事は目に見えているのに、それでも追い詰めようとしている翔平に、私はストーカーのような執念じみた脅威を感じていると刑事さんが尋ねてきた。
「逆にあなたのお相手が訴えると言ったら、すぐに黙るかもしれませんね。こちらの方が証拠となる事実と物は揃ってますので」
その言葉に私は考えておきますとだけ告げ、聴取を終えた。
「本当にありがとう、すず」
付き添うために二日休んだ事のお礼を告げつつ、入院する病院へ共に向かっていた。
「良いんですよ!私は先輩の為ならいくらでも!!」
とても上機嫌に話す様子に、これは何か企んでいるのでは?と疑ってしまい…。
「……なにして欲しいの?」
「えっ!!!」
(やっぱり……)
驚く顔だが、目だけは眩いばかりに輝いており、この子も私と同じで隠すのが下手なんだとすぐに分かった。
「……別にこれって言うのは無いですよ、本当に!」
「それは嘘。だって目だけはとてもウキウキしてる」
「ま、まぁまぁ。それは後々って事で……。早く行きましょう。愛しの健人さんが待ってますよ!」
上手くはぐらかしつつ、私の背を押し病室へと向かった。
「へぇー、個室なんですね!」
すずは物珍しそうに病室を見渡すが、ここにあるのはどこにでもある物ばかりだ。
テレビにトイレ、備え付けの流し。
そのどれにも興味を示す所を見ると、子供っぽい一面もあるんだなと改めて知る。
私はこの日の為に少し大きめの鞄を持参していた。
そこには普段買う事の無かった男性向けの衣服が入っている。
「着れる?」
鞄から薄手の白いトレーナーと黒のジャージを手渡していく。
「……大丈夫そうだ、ありがとう」
そんな私達のやり取りを後ろで見ていたすずが声を掛けてくる。
「……なんか夫婦みたいですね」
その一言に私達は同時にそちらを向いた。
「ふっ、そう思えるんだったら間違ってないと言った方がいいか?」
「えっ!!」
言った健人くんじゃなく、私に向かって足を進めてきた。
「せ、先輩……?」
私は少し目線を外し、健人くんのトレーナーの袖を掴んだ。
「悪いが、彩ちゃんとはそういう関係になったから。連れ歩くなら俺に許可取れよ」
「……本当に、ですか?」
私の腕を掴み、答えを求めるすずに私は小さく頷いた。
「そうですかぁ……。ならお祝いが必要ですよね!
じゃあ、いま許可を取ります。先輩と飲みに行きたいので良いですよね?」
「お前と二人だと何をするか分からんから皆でなら良い」
「えぇー!!女同士にしか聞けないこともあるって分かりますよね??」
「それは分かるが、今回はダメだ。皆で、だ」
「ぐぐっ……」
悔しがるすずは掴んだ腕に力をより込めていく。
「……痛いよ、すず」
「あっ!ごめんなさい。……分かりました。皆で、でいいです」
要望が通らなかったことでしょんぼりしたすずだったが、退院祝いで開いた席ではその影は消え失せ、お酒を飲みつつ場を明るくさせていく。
「そうだ。健さん、これ……」
その日の夜、近くの居酒屋に集まった私達の前でたけるくんがある画面を見せてきた。
「まぁ……そうなるよな」
そこには翔平が殺人未遂で逮捕された事の記事で、起こった現場となる写真も掲載されており、それを見るなり私は少し目を伏した。
「たけ。……もういい」
「……っす」
私の気持ちを量った健人くんは、すぐにその画面を消すよう促していく。
でも私は、その記事を見るより前にその事実を知っていた。
なぜなら入院中にあの刑事さんから電話を貰い、改めて事情を聞かれた際に教えてもらったからだ。
そしてそれ以外の事も…。
「あなたを訴えると言ってますが、どうしますか?
まぁ、証拠となる封筒はこちらで調べましたが、指紋等も検出されませんでしたので訴えた所で……」
負ける事は目に見えているのに、それでも追い詰めようとしている翔平に、私はストーカーのような執念じみた脅威を感じていると刑事さんが尋ねてきた。
「逆にあなたのお相手が訴えると言ったら、すぐに黙るかもしれませんね。こちらの方が証拠となる事実と物は揃ってますので」
その言葉に私は考えておきますとだけ告げ、聴取を終えた。
118
あなたにおすすめの小説
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました!
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる