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修学旅行 二日目⑥

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綾からの電話だった。
「もしもし?」
「あ!えりりん。大変だよ…テレビ見える?」
「ちょっと待って」
慌てた様子で電話してきた綾の言葉でテレビを付けた。

「え?」

『映像は今日、京都府の清水寺付近でのものです。女性二名が言い争った後、暴行に及んだものです。両名とも修学旅行で訪れた高校生との情報で…』

「これ、今日の私…?」
「やっぱり、えりりんなんだ…服装、一日目とは違うけど、髪型は似てるなと思ったから…。
「誰がこれを撮影したの…」
「それは分からないよ、今なんてスマホですぐ取れちゃうし。えりりん、大丈夫?」
「ごめん…ちょっと電話切るね…」

どうしようどうしよう…って気持ちが何回も頭を駆け巡る。
お母さんにも知られたら…。学校は…。
頭の痛さよりもこの映像がテレビで回ってる事実を知った今、体が震えて止まらなかった。
それよりもまずはテレビを消し、情報を入れたくなかった。

「衣里?」
「お母さん…」

もうテレビ見たかな?もし見ていたら…と思ったら目を合わせれなかった。

「頭、まだ軽症だってね。良かったと思ったけど、ちゃんと理由を教えなさい」
「ちょっとある人と喧嘩して、それで…」
「それじゃあ分からない!イジメなの?違うの?」
「ち…違う。いや…わからない」
「あんたが分からないって言ったらお母さんは何も分からないわよ。頭が痛いのはわかるけど、心配するこっちにもなって」

イジメられるかもしれない、藤原さんから言われた、それを匂わせる言葉の数々。
それを母親に言うべきか、言ったら学校も含めた話し合いになると思う。
それに今回の映像…。
言わずに黙る事もできたけど、後から知らせるのはやっぱり無理だと思った。

「ごめん…。さっき、テレビに私が映ったみたい」
「はぁ?何言ってるの?冗談はよして」

やってるか分からなかったけどテレビを付けた。

『映像は今日…』とさっき私がみた映像が流れていた。
何も言わずに母親はそれを見てた…。徐々に顔が青ざめていくのがすぐわかった。

「衣里…なの?これ…?」
「うん…」

椅子に崩れるように座り、これからどうしたらって感じで項垂れている。

「中村、入るぞ?」と担任達が部屋に来る。
母親は頭を下げ担任達に謝り続けている。
「お母さんは映像、みましたか?」
「はい…たった今…娘はどうなってしまうんでしょうか?」

担任達の顔は曇り、言葉を選んでいるように見えた。
無理もないはず、生徒の暴行映像が世間に流れたのだから…。
「今は対応を協議しています…ですが、加害者には自宅謹慎が先程決まりました。娘さんの方はこれから決める事になってます…」
と、藤原さんが自宅謹慎になった事実を知らされた。
私はこれから決まるとの事だが、何もお咎めなしとはいかないはず…。

「退学だけはやめて下さい!卒業まで一年もないのに…お願いします…」

母親の悲痛な訴えが、私の胸に突き刺さる…。
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