君から届く声を、僕は守りたい

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 30分ほど並ぶと僕らの番となり、開いたゴンドラへと進んでいく。
 日はすっかり傾き、上がっていくゴンドラと同じ高さになると眩しさから目をしかめる。

「あははっ!変な顔!!」

 向かいに座る彼女は指差しながら大笑いを見せるばかりか、足をバタバタと動かしお腹を抱えている。

「やめてよ。それにそんな風にして落ちたらどうするのさ?……夢まであと一歩だっていうのに」

 その言葉に彼女はバタつかせていた足を止めると、急にこちら側へと移動し隣に座ってきた。

「あのさ……結果なんだけど」

 どうやら僕の発言がきっかけとなったようで、さっきまでの愉快な空気から重い空気へガラリとその姿を変えていった。
 少し押し黙り、ためらっている様子を横目で窺っていると軽く背けられたので、あぁ……やっぱりと思うには十分だった。

「君はよく頑張ったと思う。……次こそ」
「次?」
「そう、だって……ダメだったんでしょ?」

 すると、僕の肩に手を乗せたかと思えばグイッと横に押し込まれ、窓へとぶつけられる。

「なにするのさ!」
「話は最後まで聞く事って、親に言われなかった?」
「それは……まぁ」

「じゃあ、ちゃんと聞いて。……ヒロインは落ちちゃった。やっぱり私にはまだ力不足みたいで」
「そっか……やはり大役を取る事は一筋縄にはいかないね。……んっ?……ヒロイン?」

その言葉の真意を確かめようと彼女の方へと体を向けると、鞄を取り出し、そこから一冊の台本を見せてくる。

「それ……」

表紙には『恋の群像劇』と書かれており、パラパラとページをめくっていき、ある箇所で手を止めていく。

「あっ!」

主人公・ヒロインを務める人の名前が並ぶ中に、彼女の名前を見つけた。
それも順番的には早い方であり、その嬉しさと安堵感から声をかけようとすると、ポタリと一粒の涙が落ちてきたのに気付く。

落ちてきた先では両目から頬を伝って流れる涙と腫らした目、そして赤くなった鼻。

「君がいてくれたから私は頑張れた。
……喉はずっと痛いよ。でも、私は君に声を届けたい」

ゴンドラはもう少しで頂上に達しようとする一方で、夕日は傾きを増し今ではその姿のほとんどを地面に隠している。

高く登ったゴンドラから見える街の様子はまるで無数の星のように見え、そんな時、祐介の言葉を思い出す。

『男を見せる時は今なんじゃないか?』

「……翔吾、くん?」

僕は彼女の手を繋ぎ、少しだけ自分の元へと引き寄せた。
今ではお互いの肩はふれあい、繋いだ手は体に挟まれ窮屈そうだが離す事はしなかった。

「僕は君が好き、だと思う。
お節介だし、意地悪っぽい所もあるけど、それでも君といるとなんだか落ち着く自分もいる。
だから僕は決めたんだ。その声をずっと聞きたいからそれを治せる医者になる」

繋いでいた手を僕はそっと離した後、彼女の両肩に乗せ、こちらへと振り向かせた。

「……」

そして、ゴンドラが頂上を示す棒に達した時、僕はゆっくりと顔を近付けた。





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