君から届く声を、僕は守りたい

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緞帳が下がり公演の全てが終わりを告げると、観客はパラパラと帰り始めていくが、僕は余韻に浸るように座席に体を預け去り行く人達を見ていた。
そのなかで彼女を話題にして話す様子もあったので、つい聞き耳を立ててしまう。

「あの子、ヒロインじゃないのね。怖いくらいだったけど、凄い声が響いて圧倒されちゃった」
「私も。初めて聞いた時は思わずビクッとなっちゃった」

聞こえているかい?
君の声はこんなにも人の心に刺さっている。もう内気な君はどこにもいないみたいだ。
他にもちらほらと話題になっている事が嬉しく、あの日選んだ道は間違ってなかった。

劇場を出ると、厚く広がっていた雲はどこか遠くに流れていったようでビルの向こうには虹が姿を現していた。
まるで公演の成功を祝っているかのように。

「あとはどう評価されるか……」

終演時、拍手を送る間にも僕はお互い顔を向き合わせ話し合っているスカウトの人達の姿を目撃しており、話題に上がっているのが彼女だったら…と思い馳せた。

神のみぞ知る。
この言葉が今は一番合っているのかもしれない。
彼らの答えが良いものであることを願いつつ僕は劇場を後にした。




それから数日が経ち、一年の締めくくりとなる大晦日、僕は彼女に呼び出された。

「やぁ」

呼び出された場所は新年を迎えるため、しめ縄や門松が設置された神社だった。
時刻は日もすっかりと落ち、年越しを目前に迫った23時。
年越しにはほんの少し早く、人もまばらなこの場所で彼女は鳥居の近くに立っていた。
防寒のためだろうか。
彼女は普段以上に厚着をしており、白いダウンジャケットの隙間からあのマフラーが覗き見える。

「久しぶり、かな」
「そうだね。こうやってちゃんと顔を見るのは」
「……って、なんで台本なんて持ってるの?」

彼女はあの日演じた『恋の群像劇』の台本を丸めつつ持っていた。

「まぁまぁ、細かいことは気にせず。とりあえず久しぶりなんだし座って話そう」

僕らは手水舎近くに設置されたベンチへと座った。

「どうだった?私の声、届いた?」
「もちろん。だから君にあんな風に合図をしたんだ。見えてなかった?」
「ううん、ちゃんと見えたよ。だから私も返したんだし。
でも結構目立っていたから幕が閉まったあとで皆話題にしていたよ」
「えっ」

周りの観客のみならず演者達にも気付かれていたと思うと、急に恥ずかしさが込み上げ顔を赤くさせてしまった。

「そんな赤くならなくても……私は嬉しかったよ。君が大勢の前であんな風にするなんて思ってなかったから」

彼女はポンと僕の肩を叩き、労いを送ってくれた。

「と、ところで、結果は……?」

問う僕に彼女は首を振り、まだだと告げる。
年の瀬が近かったこともあるのだろう、結果は年越しをしてからだと教えてくれた。

「いまはさ、結果云々より一緒に時間を過ごせたらなぁと思ってる」
「でも、結果は大事……」

不安なのは彼女の方なのに、そわそわした気持ちを持つ僕の横で、台本を開いていく。

「なにしてるの?」
「ちょっと付き合ってくれたらなぁっと」

彼女はペラペラとページを進めていく。
その様子を目で追っていくと、そこには文字が書き込まれているが、以前演じたシンデレラの時とは比べ物にならないくらい多い量だった。

そして、あるページで手を止めると僕の方へと見せてくる。

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