君から届く声を、僕は守りたい

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そのページに書かれていたのは主人公に強引に振られ、失意のどん底にいた彼女をほっとけず、男性が声をかけ手を差し伸べているシーンだった。

でもそのページを見せてきても、どういう意味か分からず首を傾げてしまった。

「良かったら、この人演じてくれない?」
「えっ」

演技なんて学芸会以来してない僕にとってとてもじゃないが無理だと渋ると、台本もあるんだし細かい事は書いてあるから演じれるよと強調してくる。

「でも!」
「まぁまぁ、読むだけでいいからさ。それに実際見ていたんでしょ?そのシーン」
「それは、まぁ……」

もちろん彼女が演じたシーンは今でもはっきりと覚えている。
でもそれは、見ているだけであって自分が演じるなんて想像もしていない。
彼女はスッと立つと『さぁ、やろう』と促してくる。
だが、周囲にはちらほらと人もおり、こんな場所でするのかと再度渋る様子を見せてしまった。

「私はもっと大勢の前でしたよ?」

すると急に彼女は地面へとへたり込む姿を見せてきた。

「ほら、もう始まってるよ」

台本には彼女がへたり込んだ後に僕が声をかけるようになっていた。
うんうんと頷く彼女に、ため息を一つ吐き付き合うことにした。

「だ、大丈夫ですか?」

声をかけた僕に、彼女はいつの間にか涙目を作っており振り向いてくる。
その素早い行動に一瞬ドキッとしたが僕のシーンはまだ続いている。
台本にはへたり込んだ彼女に手を差し出し立たせるとあったのでそれに従った。

「えぇ、ありがとうございます」

彼女の手はとても冷たかった。
初めて繋いだあのクリスマスの時とは反対で、その冷たさに思わずギュッと力を込めたまま固まった。

「……ほら、つぎ、次」

固まる僕に小声で指示を出し、演技はその後も続いた。

そして、二人は互いに惹かれ合っていき最後のシーンを迎えた。
ベンチの前で向かい合い、しばしの沈黙が流れたあと、彼女が声を出す。

「わたし……あなたが好きです」

これはセリフだ。
僕に向かって言っているわけではない。
だって台本にもそう書いてあるから。

「えっ」

思わず僕は台本には無い驚きの声を上げた。
次のセリフを待つ彼女は指示を出すわけでもなく、ずっと待っている。
読むだけでいいとは言っていたが、そのセリフは僕には重かった。
だってそこにあったのは…。

「僕も…………」

曇りがちな表情を浮かべ、その次の言葉を言えずに立ち尽くす僕にパンッと渇いた音が響いた。
その音に驚き、体をビクッとさせ顔をあげると、彼女が近づき持っていた台本を手から抜き取っていく。

「……ごめん。やっぱりやめよう」

彼女はベンチへと座り鞄に台本をしまうと僕の顔を見てくる。
だが、その目はどこか迷いがあるように見え…。

あのセリフの後はこうだ。

『好きだ。良かったら付き合って欲しい』

演技とはいえ、告白をする事に抵抗がある僕を察したんだろう。
それに彼女も演技上では受けれたとしても状況が違うからなのかもしれない。
見つめる目がそう物語っているから。

「こっちこそ……」

言えずにいた僕は謝罪を述べたあと、ベンチへと戻った。
その後はお互いに口を開かず、徐々に集まってくる人達をただ見ている時間へと変わった。

沈黙のなか、砂利道を歩く足音と時折強く吹く冷たい風に肩を縮ませ背を丸める時間を続けていると、ゴーンッと重く鈍い音が周囲に響き渡った。
除夜の鐘だ。
気付かぬ間に新年を迎えていたようだ。


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