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「あけおめ!」
「こちらこそよろしく!!」
鐘の音が鳴るとすぐに、周囲にいた人達は新年を祝う言葉を口にし、なかには甘酒で乾杯する姿もあった。
「……明けちゃったね」
ポツリと呟く彼女の声に、僕は『うん』とだけ答えた。
するとジャリッと音を鳴らしたかと思えば、僕の方へと体を向けてきた。
「とうとう受験生だね」
「そうだね」
「受験、か」
除夜の鐘がきっかけとなり、僕らは静かだった空間に声を発する事が出来た。
「これで僕も君と同じ回数ってとこかな」
「いいや、それは間違いだね」
「どうして……?あっ、そうか」
「うん、その通り」
劇団、シンデレラ、そして今回。
彼女は僕よりも一つ先輩だ。
「僕は君に追いつけないかもしれないね」
「ふふん、多分一生無理だよ。だって、私はこれから何回も受験があるんだから」
その言葉に僕は頷いた。
役を得るには選考を通らなければいけないし、この道を続けるためには必須な項目だからだ。
それに対し、僕はあと2回で終わってしまうのかもしれない。
大学受験と医師になるための試験。
「お互い大変だね」
「うん、でも喉だけは壊さないで」
「あれあれ、もしそうなっても君が治してくれるんじゃないのかな?」
「もちろん、それは約束する。そのために僕は医者になるんだ」
「そうだね。……でもひとつ聞きたいな」
「なにを?」
「医者になるきっかけって、なに?」
「言ってなかったっけ?」
「うん、中学の時になるとは聞いたよ。でも聞けずじまいだったから」
「そっか、……きっかけは」
僕が医者になるきっかけ、それは幼いながらもハッキリと覚えている。
まだ小学生になる前の事だ。
海外転勤が決まる前の父と3人で暮らしていたある日、母が急に倒れた。
日曜の昼下がり、父と庭でボール遊びをしていた中で急な物音がし、キッチンに向かうと胸を押さえ苦しそうにする母を父と共に見つけた。
すぐに救急車を呼び向かった病院で父は医師から病状を聞いているが、一人待合室で座る僕は死んでしまうんじゃないと心配し涙を流し泣いていた。
そんな僕を見つけ近寄ってきた医師はずっと付き添ってくれ、そして僕にこう話してきた。
「泣いてばかりじゃだめだよ、強くならないと」
「でも……」
「いいかい。強くとは喧嘩をして勝つとかそういうんじゃない。誰かを守るために強くなる方法だってある。
君のお母さんはいま苦しんでいる、でもそれを治すためには誰がいる?」
「……せんせい」
「そう。誰かを治すのは守るだけじゃなく、側で支える事も出来る。君はお母さんが好きだろう?」
「うん」
「いつまでも側にいて欲しいなら知識を身につけるんだ。……君なら出来る。誰かのために涙を流せるのは恥じゃない」
名前も知らない先生だけど、今もこの言葉は胸に刻まれている。
「……と、これがきっかけかな」
「そっかぁ。……守る力、か」
「うん。僕は身を挺して守る力はないけど、知識で守りたいと思ってる。
それは母だけじゃなく、君もだけど」
「それ、なんとなく告白だけどね」
「えっ……」
くすくすと笑う彼女はそれ以上追従する事はなく、スッと立ち上がった。
「おめでとう」
「……急になにを?」
「新年明けたでしょ?だからおめでとう」
「あぁ、……そうだね。おめでとう」
「これからもよろしくね」
「こちらこそ」
僕らはベンチを後にすると多くの人が集まる賽銭箱へと向かった。
でも僕はお願いする事はなく、少し離れた場所で真剣に願う彼女のことを見ていた。
「守る力……」
目指す道は僕だけのものじゃないと思う。
誰かがいて初めてその力が発揮するのかもしれない。
「おまたせ」
「……ありがとう」
「えっ??」
「いや、なんでもない」
力を発揮できる相手に彼女も加わってくれると思うと僕は嬉しかった。
その後、僕らはお互いに御神籤を引いて見せ合うと、共に大吉であったため大笑いした。
一年の始まりは幸先が良いようだ。
良い事が起こりそうな予感を得た彼女は甘酒を口にすると、ニヤつきつつ『間接キスでもする?』と紙コップを差し出すが、僕はそれを丁重に断った。
軽い舌打ちを打ちつつ不貞腐れた表情を見せてくるが、もう慣れたものだ。
そして鳥居を共にくぐると、僕らはそこで別れた。
「こちらこそよろしく!!」
鐘の音が鳴るとすぐに、周囲にいた人達は新年を祝う言葉を口にし、なかには甘酒で乾杯する姿もあった。
「……明けちゃったね」
ポツリと呟く彼女の声に、僕は『うん』とだけ答えた。
するとジャリッと音を鳴らしたかと思えば、僕の方へと体を向けてきた。
「とうとう受験生だね」
「そうだね」
「受験、か」
除夜の鐘がきっかけとなり、僕らは静かだった空間に声を発する事が出来た。
「これで僕も君と同じ回数ってとこかな」
「いいや、それは間違いだね」
「どうして……?あっ、そうか」
「うん、その通り」
劇団、シンデレラ、そして今回。
彼女は僕よりも一つ先輩だ。
「僕は君に追いつけないかもしれないね」
「ふふん、多分一生無理だよ。だって、私はこれから何回も受験があるんだから」
その言葉に僕は頷いた。
役を得るには選考を通らなければいけないし、この道を続けるためには必須な項目だからだ。
それに対し、僕はあと2回で終わってしまうのかもしれない。
大学受験と医師になるための試験。
「お互い大変だね」
「うん、でも喉だけは壊さないで」
「あれあれ、もしそうなっても君が治してくれるんじゃないのかな?」
「もちろん、それは約束する。そのために僕は医者になるんだ」
「そうだね。……でもひとつ聞きたいな」
「なにを?」
「医者になるきっかけって、なに?」
「言ってなかったっけ?」
「うん、中学の時になるとは聞いたよ。でも聞けずじまいだったから」
「そっか、……きっかけは」
僕が医者になるきっかけ、それは幼いながらもハッキリと覚えている。
まだ小学生になる前の事だ。
海外転勤が決まる前の父と3人で暮らしていたある日、母が急に倒れた。
日曜の昼下がり、父と庭でボール遊びをしていた中で急な物音がし、キッチンに向かうと胸を押さえ苦しそうにする母を父と共に見つけた。
すぐに救急車を呼び向かった病院で父は医師から病状を聞いているが、一人待合室で座る僕は死んでしまうんじゃないと心配し涙を流し泣いていた。
そんな僕を見つけ近寄ってきた医師はずっと付き添ってくれ、そして僕にこう話してきた。
「泣いてばかりじゃだめだよ、強くならないと」
「でも……」
「いいかい。強くとは喧嘩をして勝つとかそういうんじゃない。誰かを守るために強くなる方法だってある。
君のお母さんはいま苦しんでいる、でもそれを治すためには誰がいる?」
「……せんせい」
「そう。誰かを治すのは守るだけじゃなく、側で支える事も出来る。君はお母さんが好きだろう?」
「うん」
「いつまでも側にいて欲しいなら知識を身につけるんだ。……君なら出来る。誰かのために涙を流せるのは恥じゃない」
名前も知らない先生だけど、今もこの言葉は胸に刻まれている。
「……と、これがきっかけかな」
「そっかぁ。……守る力、か」
「うん。僕は身を挺して守る力はないけど、知識で守りたいと思ってる。
それは母だけじゃなく、君もだけど」
「それ、なんとなく告白だけどね」
「えっ……」
くすくすと笑う彼女はそれ以上追従する事はなく、スッと立ち上がった。
「おめでとう」
「……急になにを?」
「新年明けたでしょ?だからおめでとう」
「あぁ、……そうだね。おめでとう」
「これからもよろしくね」
「こちらこそ」
僕らはベンチを後にすると多くの人が集まる賽銭箱へと向かった。
でも僕はお願いする事はなく、少し離れた場所で真剣に願う彼女のことを見ていた。
「守る力……」
目指す道は僕だけのものじゃないと思う。
誰かがいて初めてその力が発揮するのかもしれない。
「おまたせ」
「……ありがとう」
「えっ??」
「いや、なんでもない」
力を発揮できる相手に彼女も加わってくれると思うと僕は嬉しかった。
その後、僕らはお互いに御神籤を引いて見せ合うと、共に大吉であったため大笑いした。
一年の始まりは幸先が良いようだ。
良い事が起こりそうな予感を得た彼女は甘酒を口にすると、ニヤつきつつ『間接キスでもする?』と紙コップを差し出すが、僕はそれを丁重に断った。
軽い舌打ちを打ちつつ不貞腐れた表情を見せてくるが、もう慣れたものだ。
そして鳥居を共にくぐると、僕らはそこで別れた。
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