真っ白だった俺を色付けた君は儚い

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休まらない

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帰り道、俺はすれ違う人達を見ながら歩いた。
友達と競い合いながら走っている小学生、テニス部だろうか…ラケットが入ったスポーツバックを背負いながら歩く学生、そしてスーツ姿のサラリーマン。

様々な人が街を歩いている。
そんな中、俺が向かうのは家だ。
昼夜逆転した生活をしている俺にとって朝は1日の『終わり』で、ここからが自由な時間である。

「大変だな、朝早く起きて行くなんて」

俺が高校を中退をした理由、それは朝が起きれず遅刻ばかりしていた。
それに、毎日学校に通う事に苦痛を感じていたし、群れる事が好きじゃない。
だから学校ってシステムは俺には合わず、今の生活に落ち着いた。


合鍵を使い、家に帰るも俺は『ただいま』とは言わない。
さっさと玄関横にある階段を登り、二階の南側に面する自室へと籠る。
六畳一間の空間には、必要最低限のものしか無い。
ガキの頃から使っていた学習机、本棚、あとは寝るだけのシングルベットくらいだ。

「はぁ……寝みぃ」

飯も風呂もいつも一旦寝てからにする俺はさっさとベットにごろんと寝転がり大の字になる。
季節はもう少しでGWゴールデンウィークを迎える四月の終わり頃。
もうとっくに散ってしまった桜の木が部屋の窓から見え、少し前まで寒かった日を懐かしく思った。

(一年ってなんもしんくても過ぎるんだな)

そんな風に思いつつ、俺は膝に穴の空いた色褪せた青いダメージジーンズのポケットからスマホを出し、また動画を見始めようとした。

だけど、バカ笑いする動画でさえ、この時は真顔でただボーッと見ていた。

(俺……将来このまま、か?)

普段なら思いもしない気持ちが沸いてきて、気付くとスマホの画面を消し、ベットに置いた。
疲れてるんだな…と自分にいいきかせ、俺は目を閉じた。

眠り落ちそうな時、部屋のドアを激しく叩かれ、俺は目を開けた。

「あんた、帰ったんなら飯、食いなさいよ!」

かぁちゃんだ。
いつも寝た後に食ってるだろうが、と思い俺は無視をした。
だが、ドアは何度も叩かれるから、『うるせぇ…』と小声で文句を言いつつまた目を閉じた。
だが、そんな風にしてると、無施錠のドアを開けられ中へと入ってこられた。

「なんだ、いるじゃない!聞こえてるんならさっさと食え!」
「……うるせぇよ、後で食うから。いつもそうだろ?」
「用意するこっちの身を考えろ!それに流しにいつも置きっぱなしにしてるから虫が寄ってくるんだよ。
たまには洗え!」

ビジネススーツに身を包んだ母、百合子。
小さな物流会社の事務をしている母は、パサパサな長髪は傷み放題、疲れ気味の目の下にはクマ、少し出始めてしまったお腹、厚塗りをした化粧は遠目でも、し過ぎだと分かるくらい白い。
四十を過ぎたおばさんが若く見せようと頑張ってるが、俺からしたら、辞めとけ…と言いたくなる。

「はいはい、やっときゃいいんだろ」
「なんだい、その言い方?食わせてもらってるのになかなかの言いようね、んんっ??」

母は昔、ヤンチャだったらしい。
若くして俺を妊娠するも、相手に逃げられ、今じゃシングルマザーだ。

「分かった、分かった、やるよ」

言い合いに勝ち、フッと笑うと、母は部屋を出ていった。

(くそっ、めんどくせぇ……)
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