真っ白だった俺を色付けた君は儚い

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図書館

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「はぁ……朝からうるせぇな。さっさと行けよ、会社」

閉められたドアに向かって文句を言い、大の字だった体を右に傾け、またスマホを触る。
夜勤明けで眠いはずなのに、さっきの事があって目は冴えちまった。

「……あぁ~、くそっ!」

こんな状態では寝れんと思い、下に降り飯を食う事にした。


玄関入ってすぐ左、そこがリビングとキッチンがある部屋。
食ったら洗えというシンク周りはお世辞にも綺麗とは言えない。
だって洗い終えた食器を置くトレイの受け皿は水が溜まり、掃除もしないもんだから茶色に変色している部分がある。
よくこんな状態で平気だなと思えるが、俺には関係ない。

シンクの後ろにあるダイニングテーブル。
木製の背もたれが付いた椅子が三つあるが、この家には二人しか住んでない。
以前は祖母がいたが、俺が小学生の時に亡くなり、そのまま片付ける事なく、置きっぱなしだ。

テーブルの上にはかぁちゃんが作った飯が置かれている。
白い茶碗に入ったご飯、朱色のお椀にはインスタントの味噌汁、後はパックの納豆に、半丁の豆腐。
昭和感丸出しの朝飯だが、この家ではこれが当たり前だ。

「肉か魚くらい出せ、っての」

あるだけ有難いと思うが、やはり毎日これでは文句も出てしまう。

椅子に座り、ササっとかけ込み食事を済ます。
いつもはシンクに放り込んで自室に戻るが、あんな事言われたから、シンクにあるクリーム色の水が張ったタライにつけ、チャチャっと洗い、トレイにぶち込む。

「これでいいんだろ、これで」

洗い終えた俺はまた二階の自室に行き、ベットに倒れ込む。

(なんか、暇だな……)

いつもなら、こんな風に思う事なく、スゥーと眠りに落ちるが、今日は全くそんな気配が無い。
行動が違うからか…?

どうにも寝れない感じであったので、軽くシャワーを浴び、俺は家を出た。



ーーーーーー


時刻は午前9時過ぎ。
帰る時とは歩いてる人の数もタイプも違う。
ベビーカーを押す主婦、のんびり散歩をする老人、平日休みだろうか…ちらほらとだが若い男性もいる。

外に出たが行く場所なんて決めておらず俺はただフラフラと街を徘徊した。
たまに俺を見る老人にイラっとした。
多分、こんな朝に若い奴がフラフラと…って思ってるんだろう。
だけど、俺はそんな事どうでも良い。
勝手に言ってろって感じだった。

フラフラと歩いていると市立の図書館に行き着いた。

「図書館なんていつ振りだ?」

赤煉瓦調の図書館は二階建てで、その敷地内には座る為のエメラルド色をしたベンチがあるが、それは少し汚れており、所々塗装が禿げ、元の素地が見えている。

「まぁ、いいか、図書館なら暑くねぇし、静かだ。
寝るには良いかもしれねぇな」

俺はそんな理由で図書館に入る事にした。

中は涼しく、やはり静かだ。
居る人間は子連れの親子か老人ばかり。
皆、本を読み、入ってきた俺など気にする様子は全くない。
願ったりだ。

「どこにすっかな、寝るならやっぱ……」

俺は本など興味無いから寝れそうな隅へと移動することにした。

いくつも本棚が並ぶ廊下を歩き、窓辺の隅辺りまでやってきた。
すると、四人程が座れるボックス席があり、誰も座っておらず、ラッキーと思い、近づこうとした時、違和感を感じた。

(……こんな時間に女子高生?平日だよな?)

本棚が並ぶその向こうに一人で本を開き、一心に何かを書いている女子高生に気づく。
遠目だが、綺麗そうだなと思い、近づいていった。
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