真っ白だった俺を色付けた君は儚い

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お出かけ

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「……本当に、いいのか?」
「はい、私はそうしたいです」

また俺は頭を掻いた。

「……わぁったよ、俺がなってやるよ。あんたの『友達』によ」
「本当ですかっ!?」

目を輝かせ、両手で持ったお金を少しクシャっと握りこみ俺を見る。
その様子はとても嬉しそうだ。
こんな風に喜ばれて嫌な気分にはなれないな…。

「と、とりあえず、出るか。ここを」
「はい、そうですね」

俺と小野さんは図書館を後にし、街をふらつき始めた。
平日の11時過ぎ、いつもならこの時間は寝ている俺の隣に制服姿の女子高生を連れている。
今までには無かった光景だ。
左隣を歩く小野さんは左肩にトートバックを掛け、右手にはスマホを持ち歩いている。

「……行きたい場所でもあんのか?」
「前から少し気になってる場所があって。……あっ。でも」
「なんだよ?」
「浩二さん、動物、好きですか?」
「動物?……まぁ、種類によるが」
「猫とか、大丈夫ですか?」
「猫?」
「はい、猫です」
「まぁ……好きか嫌いか、ならまだ好きな方だ」
「本当ですかっ!?」

主導権を握られている。
本来なら男の俺が女子ウケするような店をアレコレ調べて提案するもんだが、あいにくそういう店は全くと言って良いほど知らない。
知ってるのはほとんどみんなが知ってるファストフードやらそんな店だ。

いきなり立ち止まり、首を90°曲げ、俺を見上げて見てくる。
180、あるか無いかの俺の背からしたら小野さんはずっと低い方だ。
だから見上げてくる顔は顎を少し持ち上げ目は上目遣い。

バッチリ目が合うその顔はやはり反則だ。
意識するなと言う方が難しく、俺の方がすぐに逸らしてしまう。

「……で、そこ、なんだよ?」
「猫カフェです」
「猫カフェ!?」

絶対に俺が行く場所ではない。
街を歩けばそこら中にいる猫だ。
目が合えばさっさと逃げるか、少し臨戦体制を取り、毛を逆立てるような動物。

「……やっぱり、嫌ですよね?」

少し顔に出てしまったようだ。

「い、いや、別に……。でもなんで猫カフェなんだ?」

すると、小野さんは見ていたスマホを操作し、俺に見せてきた。

「あんた、猫飼ってるのかよ」
「はい」

画面の写真は種別は分からないが全身真っ白で毛並みが長く、エメラルド色をした目の猫を満面の笑顔で抱く小野さんの姿。

「可愛いんです、この子。もう10歳なんですけどね。あっ、ちなみに男の子です」
「そうか、それで猫カフェを行きたいと」
「はい、一人で行っても良いんですけど、やっぱり誰かと行きたいと思っていたので。
あっ、でも、本当に無理なら他を探しますので!?」

慌ててスマホを自身の方へと戻し、なにやら検索を掛け始めていく。

「……行きたいんだろ?友達なら叶えてやるもんだ」
「えっ」
「どこなんだよ、その猫カフェ」
「良いんですか……?」
「あぁ」

小野さんの事をまた一つ知った俺はその願いを叶えてやることにした。
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