16 / 42
繋がり
しおりを挟む
「どうかしましたか?」
見ていた気配を感じ取られたのか、猫と戯れながら俺を見てくる。
「いや……」
俺は少し目を外し、近くのソファーに座り店内の様子をぐるりと見て回る。
自分では来ない空間はなんだか変な気分だ。
至る所に猫がおり、道端で遭遇する猫とは違い、ここにいる猫は威嚇する事なく、淡々と過ごすか入ってきた人に甘えたり擦り寄っていく。
だけど、たまに目が合う猫はチラッと俺を見るが、俺が何も反応を示さない事を感じると、サッサとどこかに行ってしまう。
猫なんて自由だ…。
「はぁ~……」
戯れていた小野さんは満足そうな声をあげつつ、俺の前のソファーへと座り出す。
「どうした?」
「いえ、やっぱり来れて良かったと思って」
「そうか、良かったな。……んっ?」
小野さんの髪に白い毛が数本付いている事に俺は気づいた。
「どうかしましたか?」
「……髪に毛が」
「どこですか?」
小野さんは慌てた様子で左髪を撫でるが、付いてるのは左ではなく、右だ。
「いや、……右」
「こっちですか」
だが、少しは取れるが完全に取り除くことは出来ていなかった。
「……大丈夫ですか?」
俺に右側を見せ、確認を取らせてくる。
「いや……まだ」
「あの、取ってくれませんか?」
少し体をテーブルに寄せ、右髪を俺の方へと近づけ取る様に要求してくる。
綺麗な黒髪の間に挟まった白い猫の毛。
店内の照明に照らされているせいでもあるのかキラリと光り、その白さが際立ってしまっている。
差し出された髪へとゆっくり右手を伸ばし取ろうと初めてその黒髪に触れた。
髪と髪に絡まるように付く毛は取ろうとする度に奥へと入ってしまう。
その度に俺はドキッとしてしまう。
(こんなに滑るのか……)
綺麗な黒髪はとても艶やかで触れるとスルッと指が下へと落ちていく。
「浩二、さん?」
なかなか取れない俺に不審感を感じたのか、疑問符を投げかけられ慌てた。
「……すまない」
すぐに俺は白い毛を軽く摘み、人差し指と親指でそれを下へと滑らせながら取り、小野さんへと見せる。
「ありがとうございます」
「いや。……こっちこそ」
「えっ?」
「いや、なんでもないぞ……」
取った白い毛は少しの間、俺の指で掴んだままだった。
「ありがとうございました」
その後、俺達は猫カフェで過ごし、もうお昼近くになっていた。
「さて、これからどうするんだ?」
「今日も夜、お仕事ですよね?」
「あぁ、そうだが?」
「ごめんなさい、長くて……」
「いや、謝るなよ。……友達だろ、気にすんな」
「優しいんですね、やっぱり」
本当はもう少しいれたらと思った。
だが、長々と連れ回すのは俺のエゴになってしまうのでここで解散する事を提案した。
「じゃあな。勉強頑張れよ」
「あっ」
「んっ、なんだよ」
引き止める小野さんの右手はトートバックの紐をキュッと掴み俺を見てくる。
「あの……良かったら、浩二さんの連絡先聞いても良いですか?」
「俺の?」
「はい……迷惑じゃなければ……」
少し緊張した面持ちで見ていた目はトートバックへと移し掴んだ右手をしきりにグッと握ったり離したりしていた。
「……なんだ、そんな事か。いいぜ」
ちょっと強がりつつ答えたが、俺は嬉しかった。
繋がりが出来たと思ったから。
ズボンからスマホだし、小野さんへと差し向ける。
「ありがとうございますっ!?」
すぐにスマホを出し、俺らは連絡先を交換し、別れた。
交換した連絡先の小野さんのトップ画は先程見せてくれたあの微笑む写真だった。
見ていた気配を感じ取られたのか、猫と戯れながら俺を見てくる。
「いや……」
俺は少し目を外し、近くのソファーに座り店内の様子をぐるりと見て回る。
自分では来ない空間はなんだか変な気分だ。
至る所に猫がおり、道端で遭遇する猫とは違い、ここにいる猫は威嚇する事なく、淡々と過ごすか入ってきた人に甘えたり擦り寄っていく。
だけど、たまに目が合う猫はチラッと俺を見るが、俺が何も反応を示さない事を感じると、サッサとどこかに行ってしまう。
猫なんて自由だ…。
「はぁ~……」
戯れていた小野さんは満足そうな声をあげつつ、俺の前のソファーへと座り出す。
「どうした?」
「いえ、やっぱり来れて良かったと思って」
「そうか、良かったな。……んっ?」
小野さんの髪に白い毛が数本付いている事に俺は気づいた。
「どうかしましたか?」
「……髪に毛が」
「どこですか?」
小野さんは慌てた様子で左髪を撫でるが、付いてるのは左ではなく、右だ。
「いや、……右」
「こっちですか」
だが、少しは取れるが完全に取り除くことは出来ていなかった。
「……大丈夫ですか?」
俺に右側を見せ、確認を取らせてくる。
「いや……まだ」
「あの、取ってくれませんか?」
少し体をテーブルに寄せ、右髪を俺の方へと近づけ取る様に要求してくる。
綺麗な黒髪の間に挟まった白い猫の毛。
店内の照明に照らされているせいでもあるのかキラリと光り、その白さが際立ってしまっている。
差し出された髪へとゆっくり右手を伸ばし取ろうと初めてその黒髪に触れた。
髪と髪に絡まるように付く毛は取ろうとする度に奥へと入ってしまう。
その度に俺はドキッとしてしまう。
(こんなに滑るのか……)
綺麗な黒髪はとても艶やかで触れるとスルッと指が下へと落ちていく。
「浩二、さん?」
なかなか取れない俺に不審感を感じたのか、疑問符を投げかけられ慌てた。
「……すまない」
すぐに俺は白い毛を軽く摘み、人差し指と親指でそれを下へと滑らせながら取り、小野さんへと見せる。
「ありがとうございます」
「いや。……こっちこそ」
「えっ?」
「いや、なんでもないぞ……」
取った白い毛は少しの間、俺の指で掴んだままだった。
「ありがとうございました」
その後、俺達は猫カフェで過ごし、もうお昼近くになっていた。
「さて、これからどうするんだ?」
「今日も夜、お仕事ですよね?」
「あぁ、そうだが?」
「ごめんなさい、長くて……」
「いや、謝るなよ。……友達だろ、気にすんな」
「優しいんですね、やっぱり」
本当はもう少しいれたらと思った。
だが、長々と連れ回すのは俺のエゴになってしまうのでここで解散する事を提案した。
「じゃあな。勉強頑張れよ」
「あっ」
「んっ、なんだよ」
引き止める小野さんの右手はトートバックの紐をキュッと掴み俺を見てくる。
「あの……良かったら、浩二さんの連絡先聞いても良いですか?」
「俺の?」
「はい……迷惑じゃなければ……」
少し緊張した面持ちで見ていた目はトートバックへと移し掴んだ右手をしきりにグッと握ったり離したりしていた。
「……なんだ、そんな事か。いいぜ」
ちょっと強がりつつ答えたが、俺は嬉しかった。
繋がりが出来たと思ったから。
ズボンからスマホだし、小野さんへと差し向ける。
「ありがとうございますっ!?」
すぐにスマホを出し、俺らは連絡先を交換し、別れた。
交換した連絡先の小野さんのトップ画は先程見せてくれたあの微笑む写真だった。
0
あなたにおすすめの小説
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?
鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。
先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる