真っ白だった俺を色付けた君は儚い

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オーナーの許可をとり、俺は5日休める事になった。
店を出てすぐにメールを小野さんへと送った。

『休みを貰ったから5日、大丈夫だ』

朝の7時。
送ったもののやはり朝早いためだろう、既読にはならなかった。
夜中みたいに早く返ってこいという気持ちはそれ程強くなく、家に向かい、そして寝る事にした。


普段なら夜まで寝る俺だったが、この日に限っては3時程に目を覚ました。
落としたスマホを確認し、まだ早い時間に軽く舌打ちをしつつも、通知がないかを確認した。

(……無いか)

興味の無い企業からの通知ばかりで、その中に混じっている事もなく、どれも他愛のないものばかりだった。
少しずつ暑くなり始めた時期、俺は起きるとシャワーを浴びようと下へと降りる。
GWとなり休みのはずのかぁちゃんの姿もなく、逆にホッとした。
いたら何か小言を言われかねないからだ。

キッチン横の小さな脱衣所を備えた風呂場。
縦型長方形の洗濯機と背の低い洗面所。
背の高い俺にとって使いづらくて仕方ない…使うたびに腰が痛くなる。

洗面所にある鏡に自身の顔を映し、伸びた髭を見て右手でわしゃわしゃと触る。

(……会うのに、これじゃあな)

普段では全く気にしない俺だったが、この時ばかりは小野さんと会う事を考え、伸びた髭を全部剃った。
髭が無くなった顔を見て、思わず呟く。
『意外と悪くないな』と。



用意された飯を駆け込む。
相変わらず出す飯は質素だ。
だから肉か魚くらい出せよって文句を言い、シンクに置く。
かぁちゃんとの約束を反故し、そのまま上へと上がろうとするも、シンクに置いた茶碗やらを見返す。

(明日出かける時に捕まると厄介、か)

時間はまだ決まってないが、夕方出る際に捕まり遅れる事になったら…と思った俺は、シンクへと戻り、素早く洗い終え、部屋へと戻った。






部屋に入るなり、ベットへと置いたスマホの画面を付ける。

「おっ」

小野さんからのメールが来ていた。

『お疲れ様です。……すみません、無理言って。時間ですが、18時に美園駅でも大丈夫ですか?』

(18時か)

メールを見て俺はすぐに返信をした。

『あぁ、大丈夫だ。美園駅だな。遅れないようにする』と返信すると会う18時までの時間を逆算していた。

(あと32時間後、か……)




バイト中も俺は時間を気にしていた。
こんなにも時間が経つのをそわそわした気持ちで迎えるなんて初めてかもしれない。
ガキの頃にあった遠足や修学旅行でさえ、こんな気持ちにはならなかった。
なんなら来たらきたで早く終わらないかなと思ったくらいだからだ。

少し動いてはスマホを見て、動いてはスマホを見る。
そんな行動を繰り返しており、自分でもおかしいくらいだ。

あれから小野さんからのメールは無い。
昨日みたいに待ち侘びるといった感じはなく、それが今は時間に変わっただけだ。


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