真っ白だった俺を色付けた君は儚い

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こんな日に限り

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バイトを終え、朝を迎えるとニヤニヤした表情でオーナーが入ってくる。

「うっす」

挨拶をされる前に俺はし、さっさと帰ろうとした。

「おいおい、浩二よ。浮かれすぎじゃねぇか?そんな早く会いてぇ相手なのか?」
「……別に」
「なんだよ、隠すなよ」
「そこまでの相手じゃ……」

なんで虚勢を張ったか、それは根掘り葉掘り聞かれるのが嫌だったからだと思う。
だから敢えて冷たい対応し、一刻も早く帰りたかった。

「まぁ……、それより、コレ持ってけ」
「なんすか?」

オーナーは右手をグーにしたまま、俺へと差し出してくる。

「いいから持っとけ」

グーになった手の下に俺は掌を広げ待ち構えると、ゆっくり広げていき、何かが落ちてきた。

「ちょ……コレ……」
「要るだろ。コレ」
「いらねぇっすよ。まだそんな……」
「なんだまだそこまでじゃねぇのかよ。つまらんなぁ~」
「つまらんとかじゃなく、俺は健全っすよ」
「はいはい、言ってろ」

俺は差し出された『物』を受け取らず、オーナーへと突き返し、店を出た。


だけど、今日はあいにくの雨だ。
しかも割りと強めに降り、水溜りもいくつも出来、風が吹くと足元なんてびちゃびちゃだ。

(せっかくなのにな……)

傘など持ってない俺は一旦店に戻ったが、オーナーはもう休憩室にはおらず、少しホッとした。
誰かが置き忘れてしまったのか、ずっと放置してあったビニール傘を一つ拝借し、またすぐ外に出て、家に向かった。


(18時、か。ちゃんと寝ておかんとな)


ビニール傘にいくつも雨粒が落ち、ポツポツと言った音ではなく、割りとポンポンと音を立て視界は白い。
夜には止んでいて欲しいなと思いながら家に着く。


「あんた、傘なんて持ってた?」
「……店のだよ」
「ふーん」
「なんだよ?」
「いや、別に。それよりもあんた、今日もどうせバイトでしょ?」
「……だったら?」

俺は嘘をついた。

「電池切れたから買ってきといて、単一ね」
「はぁ?なんでだよ。電池くらい自分で行けよ」
「……」
「なに黙ってんだよ」
「あんたは誰に食わせてもらってるんだろうね、んんっ?」

かぁちゃんはパサついた髪を鬱陶しそうに触りつつ、顎を上げ俺を見てくる。

(くそっ、うぜぇ……)

「……っわぁったよ、買えば良いんだろ、単一な」
「そう、それで良いんだよ」

買い物を伝え終えるとかぁちゃんは背を向け、キッチンへと向かう。
その際、おならなんかしてくる。

「くせぇな!?」

俺の文句に立ち止まると、振り返ってくる。

「あぁ……それとお金はあんた持ちだから」
「あぁ!?なんでだよ!?」
「いま文句言ったからに決まってんだろ」
「ふざけんな!?」
「ほぉ……飯の一つも作れやしないのに、良く吠えること。そこまで突っかかるなら飯なんて作らないがいいんだね?」
「……」
「黙るくらいなら突っかかるな、『坊や』」

もういい!と思い、俺は階段を上がりパンッと大きな音を立て扉を閉めた。

「くそがっ。なにが電池だ!テメェが行けっての」

こんな日に限ってイライラさせるかぁちゃんを恨んだ。
時間はもう9時を過ぎようとしていた。

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