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三度目
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そして、俺は小野さんと会う日を迎えた。
11月一歩手前。
すっかり風も冷たくなり、もう少しで冬本番といった感じになっていた。
厚手のダウンを着た人が肩を上げ、身を小さくしながら歩いている。
吹く風が顔に当たるのが嫌だからか、吹く方向とは逆に顔を向ける奴もいる。
今回俺は小野さんが住む高倉へと来ていた。
あまり来ないこの街だが、前回みたいに何も調べずに会うという事を避け、色々調べておいた。
美園よりも大きな高倉駅は駅前に色んな商業ビルが立ち並び、その低層階には名の知れた居酒屋チェーン店や飲食店が多く入っている。
また駅のロータリーは広く、音楽を流し大声で歌う若者やスケボーをしている奴もいる。
パッと見、治安が悪そうな場所だ。
そんな奴らを見ながら俺は小野さんの到着を待った。
いろんな奴が俺の前を通り過ぎていく。
仕事帰りのサラリーマンやOL、部活帰りだろうか、制服姿の学生。
「……金曜だしな」
明日が休みだからか、サラリーマンの中には笑い声と共に商業ビルへと向かい、飲食店に入っていく者もいる。
そんな奴らを見ているとメールが届く。
『ごめんなさい、……もうすぐです』
何も慌てることはない。
だって待ち合わせよりかなり早く俺は来ているし、なんなら小野さんの方が時間的に正しい。
『気にするな、気をつけろよ。俺は…』
人混みが多いから俺は分かる様に服装をメールした。
グレーのチェスターコートに黒のニット、白のジーンズだと。
『……わかりました』
すぐに送られてきたメールを見て、俺は人混みを見渡した。
行き交う人を見ながら、今か今かと待ち侘びた。
すると、スマホを手にしながら辺りを見渡しつつ近づく女性がいた。
「あれだな」
小さく呟くと聞こえたのか分からないが、俺の方を見てくる。
そして慌てたように小走りで俺の元へとやってくる。
「浩二さん」
「走るなよ、転ぶぞ」
だけど、小野さんは少し俺を見上げ動きを止めた。
「どうした?」
「……雰囲気、変わりましたね」
「やっぱり、変か……?」
俺は頭を掻き、せっかく立たせた髪を少しクシャッと崩した。
すると、首を横に振ってくる。
「似合ってます、崩さないでください」
かぁちゃんやオーナーとは全く違う。
貶すことなく、俺を褒めてくれた。
「すまねぇ。……行くか」
「はい」
俺はズボンからスマホを取り出し、歩き出した。
隣を歩く小野さんに俺は緊張した。
あれから随分会ってなかったし、前より綺麗だと感じていた。
黒髪ストレートだった髪は全体を軽く巻き、グレーのロングコートに首元にはクリーム色のマフラー、コートの裾からちらりと黒いスカートが見え、なんだか前より『大人』の雰囲気を感じた。
そして以前も持っていたバックを手にしている。
「あの、今日はどこに……?」
「前はあんたに予約してもらっていたからな、今日は俺が……好みだといいが」
本当は今日、車で来ようか迷った。
免許はあるからレンタカーでも借りて何処かに…と思った。
でも、まだ取り立てで人も乗せたことも無いし、ましてや、事故なんて起こしたら…と思ったので止めた。
だから俺は駅から近くの飲食店を探し、そこに向かう事にした。
「なんだか、緊張します」
少し俯き加減で呟く小野さんの事を俺は横目で見た。
「……あぁ、それは俺もだ」
俺の言葉に顔を上げ見てくると、左側にいる小野さんと俺は目が合った。
「……嬉しいです」
少しだけはにかむ姿にドクっと大きく心臓が動き、右手をギュッと握り込んだ。
11月一歩手前。
すっかり風も冷たくなり、もう少しで冬本番といった感じになっていた。
厚手のダウンを着た人が肩を上げ、身を小さくしながら歩いている。
吹く風が顔に当たるのが嫌だからか、吹く方向とは逆に顔を向ける奴もいる。
今回俺は小野さんが住む高倉へと来ていた。
あまり来ないこの街だが、前回みたいに何も調べずに会うという事を避け、色々調べておいた。
美園よりも大きな高倉駅は駅前に色んな商業ビルが立ち並び、その低層階には名の知れた居酒屋チェーン店や飲食店が多く入っている。
また駅のロータリーは広く、音楽を流し大声で歌う若者やスケボーをしている奴もいる。
パッと見、治安が悪そうな場所だ。
そんな奴らを見ながら俺は小野さんの到着を待った。
いろんな奴が俺の前を通り過ぎていく。
仕事帰りのサラリーマンやOL、部活帰りだろうか、制服姿の学生。
「……金曜だしな」
明日が休みだからか、サラリーマンの中には笑い声と共に商業ビルへと向かい、飲食店に入っていく者もいる。
そんな奴らを見ているとメールが届く。
『ごめんなさい、……もうすぐです』
何も慌てることはない。
だって待ち合わせよりかなり早く俺は来ているし、なんなら小野さんの方が時間的に正しい。
『気にするな、気をつけろよ。俺は…』
人混みが多いから俺は分かる様に服装をメールした。
グレーのチェスターコートに黒のニット、白のジーンズだと。
『……わかりました』
すぐに送られてきたメールを見て、俺は人混みを見渡した。
行き交う人を見ながら、今か今かと待ち侘びた。
すると、スマホを手にしながら辺りを見渡しつつ近づく女性がいた。
「あれだな」
小さく呟くと聞こえたのか分からないが、俺の方を見てくる。
そして慌てたように小走りで俺の元へとやってくる。
「浩二さん」
「走るなよ、転ぶぞ」
だけど、小野さんは少し俺を見上げ動きを止めた。
「どうした?」
「……雰囲気、変わりましたね」
「やっぱり、変か……?」
俺は頭を掻き、せっかく立たせた髪を少しクシャッと崩した。
すると、首を横に振ってくる。
「似合ってます、崩さないでください」
かぁちゃんやオーナーとは全く違う。
貶すことなく、俺を褒めてくれた。
「すまねぇ。……行くか」
「はい」
俺はズボンからスマホを取り出し、歩き出した。
隣を歩く小野さんに俺は緊張した。
あれから随分会ってなかったし、前より綺麗だと感じていた。
黒髪ストレートだった髪は全体を軽く巻き、グレーのロングコートに首元にはクリーム色のマフラー、コートの裾からちらりと黒いスカートが見え、なんだか前より『大人』の雰囲気を感じた。
そして以前も持っていたバックを手にしている。
「あの、今日はどこに……?」
「前はあんたに予約してもらっていたからな、今日は俺が……好みだといいが」
本当は今日、車で来ようか迷った。
免許はあるからレンタカーでも借りて何処かに…と思った。
でも、まだ取り立てで人も乗せたことも無いし、ましてや、事故なんて起こしたら…と思ったので止めた。
だから俺は駅から近くの飲食店を探し、そこに向かう事にした。
「なんだか、緊張します」
少し俯き加減で呟く小野さんの事を俺は横目で見た。
「……あぁ、それは俺もだ」
俺の言葉に顔を上げ見てくると、左側にいる小野さんと俺は目が合った。
「……嬉しいです」
少しだけはにかむ姿にドクっと大きく心臓が動き、右手をギュッと握り込んだ。
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