真っ白だった俺を色付けた君は儚い

mock

文字の大きさ
41 / 42

終わりに

しおりを挟む
ゲートが開くと今か今かと開くのを待っていた入場客は一斉にパーク内へと雪崩れ込んでいった。

思いおもいに走っていき、割れ先にと向かう人もいれば、立ち止まり入ったばかりのパーク内の様子を写真に残そうとする者もいた。


「……何処から行きたいんだ?」
「一旦、手、外してもいいですか?」
「あぁ」

小野さんはスマホを取り出し、パークのHPを開き、俺に見せてくる。

「ここと、ここ、それと……」

画面を見ながら饒舌に喋る小野さんに、俺はフッと笑う。

「……どうしたんですか?」
「いや、調べ尽くしているんだなと思って」
「それは……」
「悪い事じゃないだろ。それに謝るなって言ったはずだ」

小野さんは無言で頷いていた。

「じゃあ、まずは近い場所からいくか」
「はいっ」

スマホをしまい、また俺の手を握り、俺らはパークを楽しむ事にした。





ーーーーーーー




楽しい時間なんてあっという間だ…。

朝から来ていたのにもう気づく夕方、日も傾き西日になりつつある。

「……もうこんな時間か」

俺は夕日を見ながら入ってきたゲートの方を見ていた。
すると、ガクッと体が止まった。
手を繋いでいた小野さんの足が止まったからだ。

「どうした?」

俺の問いに何故か首を振っていた。

「……トイレか?」

違うみたいだ、また首を振っている。

「……帰りたくない」

小さく呟いていたが、俺はその声をしっかり聞こえていた。

「そんなの、俺も一緒だ」

同じ気持ちで嬉しかったのだろうか、身を寄せ、人気の無い方向へと俺を誘導していく。

「どうした、どこに……?」

無言のまま、ゲート近くのカラフルなベンチへと俺を押していく。
そこは夕日が当たって建物の影が長く出ている下に設置されており、パークの照明が当たっても顔がはっきりと認識しづらいような場所だった。

「……座ってください」

ベンチに座った俺を塞ぐよう立ち、向き合った。
首を上に見上げたが、照明が邪魔をして顔が分からなかった。
すると、啜り泣きをする声が聞こえてきた。

「おい」
「ごめんなさい……」

この中にいる間は謝らないという約束を破り、謝罪の言葉をしながら両手で自身の顔を覆っていた。

立ち上がり肩に俺は手を置いた。
だけど、顔を覆いながら思いっきり首を横に振り、座って欲しいと懇願された。

そんな風に言われたら拒否することも出来ず、俺はまたベンチへと腰掛けた。

「……もう終わっちゃうんですね、今日が」
「あぁ……」
「もっと、一緒にいたい。もっと、話したい。……もっと」

肩を振るわせ、時折歯をカチカチと鳴らし言葉を必死に発している。
でも、いまにも大声で泣き出しそうなくらいだ。

「あんただけじゃない、俺も同じだ。それは変わらない」

俺の言葉を聞いた小野さんは覆っていた両手を外し、俺に飛びついてきた。
首元に回した両手。
すぐ横にある小野さんの顔。

俺は、ゆっくりと飛びついてきたその体を抱きしめた。

「好きです、浩二さん」
「あぁ」
「ずっと好きです」
「あぁ」

俺は背中をポンポンと軽く叩くと、首元に回した両手を外し、肩へと置いてくる。

目の前にある小野さんの顔はさっきまで暗くて見えなかったが、いまは分かる。
両眼から涙を流し目は真っ赤、頬も同じ様に…。

「大好きです」

その言葉の後、俺の唇へとキスをしてきた。
周りゆく人が見てようが見てまいがそんな事どうでも良かった。

今、目の前にいる人が俺は好きだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?

鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。 先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...