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終わりに
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ゲートが開くと今か今かと開くのを待っていた入場客は一斉にパーク内へと雪崩れ込んでいった。
思いおもいに走っていき、割れ先にと向かう人もいれば、立ち止まり入ったばかりのパーク内の様子を写真に残そうとする者もいた。
「……何処から行きたいんだ?」
「一旦、手、外してもいいですか?」
「あぁ」
小野さんはスマホを取り出し、パークのHPを開き、俺に見せてくる。
「ここと、ここ、それと……」
画面を見ながら饒舌に喋る小野さんに、俺はフッと笑う。
「……どうしたんですか?」
「いや、調べ尽くしているんだなと思って」
「それは……」
「悪い事じゃないだろ。それに謝るなって言ったはずだ」
小野さんは無言で頷いていた。
「じゃあ、まずは近い場所からいくか」
「はいっ」
スマホをしまい、また俺の手を握り、俺らはパークを楽しむ事にした。
ーーーーーーー
楽しい時間なんてあっという間だ…。
朝から来ていたのにもう気づく夕方、日も傾き西日になりつつある。
「……もうこんな時間か」
俺は夕日を見ながら入ってきたゲートの方を見ていた。
すると、ガクッと体が止まった。
手を繋いでいた小野さんの足が止まったからだ。
「どうした?」
俺の問いに何故か首を振っていた。
「……トイレか?」
違うみたいだ、また首を振っている。
「……帰りたくない」
小さく呟いていたが、俺はその声をしっかり聞こえていた。
「そんなの、俺も一緒だ」
同じ気持ちで嬉しかったのだろうか、身を寄せ、人気の無い方向へと俺を誘導していく。
「どうした、どこに……?」
無言のまま、ゲート近くのカラフルなベンチへと俺を押していく。
そこは夕日が当たって建物の影が長く出ている下に設置されており、パークの照明が当たっても顔がはっきりと認識しづらいような場所だった。
「……座ってください」
ベンチに座った俺を塞ぐよう立ち、向き合った。
首を上に見上げたが、照明が邪魔をして顔が分からなかった。
すると、啜り泣きをする声が聞こえてきた。
「おい」
「ごめんなさい……」
この中にいる間は謝らないという約束を破り、謝罪の言葉をしながら両手で自身の顔を覆っていた。
立ち上がり肩に俺は手を置いた。
だけど、顔を覆いながら思いっきり首を横に振り、座って欲しいと懇願された。
そんな風に言われたら拒否することも出来ず、俺はまたベンチへと腰掛けた。
「……もう終わっちゃうんですね、今日が」
「あぁ……」
「もっと、一緒にいたい。もっと、話したい。……もっと」
肩を振るわせ、時折歯をカチカチと鳴らし言葉を必死に発している。
でも、いまにも大声で泣き出しそうなくらいだ。
「あんただけじゃない、俺も同じだ。それは変わらない」
俺の言葉を聞いた小野さんは覆っていた両手を外し、俺に飛びついてきた。
首元に回した両手。
すぐ横にある小野さんの顔。
俺は、ゆっくりと飛びついてきたその体を抱きしめた。
「好きです、浩二さん」
「あぁ」
「ずっと好きです」
「あぁ」
俺は背中をポンポンと軽く叩くと、首元に回した両手を外し、肩へと置いてくる。
目の前にある小野さんの顔はさっきまで暗くて見えなかったが、いまは分かる。
両眼から涙を流し目は真っ赤、頬も同じ様に…。
「大好きです」
その言葉の後、俺の唇へとキスをしてきた。
周りゆく人が見てようが見てまいがそんな事どうでも良かった。
今、目の前にいる人が俺は好きだ。
思いおもいに走っていき、割れ先にと向かう人もいれば、立ち止まり入ったばかりのパーク内の様子を写真に残そうとする者もいた。
「……何処から行きたいんだ?」
「一旦、手、外してもいいですか?」
「あぁ」
小野さんはスマホを取り出し、パークのHPを開き、俺に見せてくる。
「ここと、ここ、それと……」
画面を見ながら饒舌に喋る小野さんに、俺はフッと笑う。
「……どうしたんですか?」
「いや、調べ尽くしているんだなと思って」
「それは……」
「悪い事じゃないだろ。それに謝るなって言ったはずだ」
小野さんは無言で頷いていた。
「じゃあ、まずは近い場所からいくか」
「はいっ」
スマホをしまい、また俺の手を握り、俺らはパークを楽しむ事にした。
ーーーーーーー
楽しい時間なんてあっという間だ…。
朝から来ていたのにもう気づく夕方、日も傾き西日になりつつある。
「……もうこんな時間か」
俺は夕日を見ながら入ってきたゲートの方を見ていた。
すると、ガクッと体が止まった。
手を繋いでいた小野さんの足が止まったからだ。
「どうした?」
俺の問いに何故か首を振っていた。
「……トイレか?」
違うみたいだ、また首を振っている。
「……帰りたくない」
小さく呟いていたが、俺はその声をしっかり聞こえていた。
「そんなの、俺も一緒だ」
同じ気持ちで嬉しかったのだろうか、身を寄せ、人気の無い方向へと俺を誘導していく。
「どうした、どこに……?」
無言のまま、ゲート近くのカラフルなベンチへと俺を押していく。
そこは夕日が当たって建物の影が長く出ている下に設置されており、パークの照明が当たっても顔がはっきりと認識しづらいような場所だった。
「……座ってください」
ベンチに座った俺を塞ぐよう立ち、向き合った。
首を上に見上げたが、照明が邪魔をして顔が分からなかった。
すると、啜り泣きをする声が聞こえてきた。
「おい」
「ごめんなさい……」
この中にいる間は謝らないという約束を破り、謝罪の言葉をしながら両手で自身の顔を覆っていた。
立ち上がり肩に俺は手を置いた。
だけど、顔を覆いながら思いっきり首を横に振り、座って欲しいと懇願された。
そんな風に言われたら拒否することも出来ず、俺はまたベンチへと腰掛けた。
「……もう終わっちゃうんですね、今日が」
「あぁ……」
「もっと、一緒にいたい。もっと、話したい。……もっと」
肩を振るわせ、時折歯をカチカチと鳴らし言葉を必死に発している。
でも、いまにも大声で泣き出しそうなくらいだ。
「あんただけじゃない、俺も同じだ。それは変わらない」
俺の言葉を聞いた小野さんは覆っていた両手を外し、俺に飛びついてきた。
首元に回した両手。
すぐ横にある小野さんの顔。
俺は、ゆっくりと飛びついてきたその体を抱きしめた。
「好きです、浩二さん」
「あぁ」
「ずっと好きです」
「あぁ」
俺は背中をポンポンと軽く叩くと、首元に回した両手を外し、肩へと置いてくる。
目の前にある小野さんの顔はさっきまで暗くて見えなかったが、いまは分かる。
両眼から涙を流し目は真っ赤、頬も同じ様に…。
「大好きです」
その言葉の後、俺の唇へとキスをしてきた。
周りゆく人が見てようが見てまいがそんな事どうでも良かった。
今、目の前にいる人が俺は好きだ。
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