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出ていく準備
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私達はその後お互いの部屋で荷造りを始めた。
まだマリーがアカデミーから帰ってきてないのでマリーの分も私は行っていた。
でも、突然の引っ越しは驚くだろうな…と思いながら手を動かす。
クローゼットを開け、アカデミー時代に使っていた鞄の中に服を詰めていく時ふと思った。
こんな綺麗なドレス、いるのだろうか…と。
これからは身分が高いわけでも無いので煌びやかなドレス以外選び出していく。
「あっ…」
クローゼットの奥に追いやった白いドレスを見つけると手を止め、それに手を伸ばした。
本当は見たりするのも嫌だったが、手に取りクローゼットから出ると二つに破いたドレスを広げて眺めてみた。
「これが…始まり…」
アカデミーから始まった様々な事を思い出し、
そしてブライスと婚姻を結び、これを着て過ごした。
これがあるからマリーが生まれた。
でも、これによって私の人生は変わった…。
良い思い出と嫌な思い出、両方を巡らせる私はしばらくそのままドレスを広げたまま立ち尽くしていた。
すると、中に入ってくるユーリがいた。
「なにしてるの?リーネ…」
ユーリの声に反応し、ゆっくりドレスを下ろし振り返った。
「それ、持っていくの?」
「…ううん、そうじゃない。ただ、見ていただけ。
でも、私にはもう必要ないから」
「そう…。準備はどう?終わりそう?
かかるなら手伝うよ、マリーもそろそろ帰ってきてしまうから。
帰ってきたら…出よう」
「うん…」
ドレスをベッドの上に無造作に置き、私はユーリと共にクローゼットの中から必要なものを選び詰めていく。
一つ、また一つと鞄に詰めていく時、なぜか手が思うように動いてくれなかった。
服を持ち鞄に移す際、何回も落とす動作を繰り返した。
「リーネ…まだ迷ってるんじゃない?」
ピクッと体を動かし、ユーリの方を見た。
「違う…もう私は離縁するのは決めてる。
ただ、不安なの。
何も出来ない私がこれからあなたやマリーと居たら重荷にならないか…。それが怖い…」
服を掴みながら項垂れていく私。
そんな私の頭をくしゃくしゃと撫でながら笑いつつ言ってきた。
「私も不安よ、でもしがらみが無くなる方が嬉しい。
誰かに見られたりして過ごすより気の合うあなたやマリーが近くにいるならそれだけでいい。
貧しくてもそっちのが私は嬉しい」
「ユーリ…」
「早くしましょう、マリーが来たらすぐ行けるように」
「でも、行く場所なんて私達には無いよ、どうするの?」
「大丈夫、私に任せて。今は準備を終えるのが先よ」
笑顔を見せるユーリとは対照的に不安な顔ばかり見せ準備をする私。
屋敷を出た後でも行く場所の当てがあると言うユーリに私はつくづく頭が上がらない。
先を見越し動くこの行動力に頼り切ってしまっている…。
そんな不安をさらに増すかのようなドタドタとした足音を響かせ部屋へと来る人がいる。
「ただいま~」
満面の笑みを浮かながら入ってくるマリーだ。
「なにしてるの?二人で…」
入るなりクローゼットを捌くり服を鞄に詰める私達に疑問を投げかけながら近づいてくる。
「マリー、あのね…」
「アカデミーはどうだった?私に聞かせて、マリー」
同時に声に声を出すが、ユーリは私を見て首を振りクイっと鞄の方へ目を移す仕草を私に見せる。
それは早く詰めていくよ、と言われているみたいで…。
マリーの質問よりも今日の出来事を話させる事でいきなりの『引っ越し』に驚くのを和らげようとしているのではないか?と考えた。
「今日はね~」
マリーの相手をユーリがしている間、私は急いで鞄に詰めていく。
もう少しで終わるという時、マリーが開けっぱなしにした扉からブライスが部屋に入ってきた…。
まだマリーがアカデミーから帰ってきてないのでマリーの分も私は行っていた。
でも、突然の引っ越しは驚くだろうな…と思いながら手を動かす。
クローゼットを開け、アカデミー時代に使っていた鞄の中に服を詰めていく時ふと思った。
こんな綺麗なドレス、いるのだろうか…と。
これからは身分が高いわけでも無いので煌びやかなドレス以外選び出していく。
「あっ…」
クローゼットの奥に追いやった白いドレスを見つけると手を止め、それに手を伸ばした。
本当は見たりするのも嫌だったが、手に取りクローゼットから出ると二つに破いたドレスを広げて眺めてみた。
「これが…始まり…」
アカデミーから始まった様々な事を思い出し、
そしてブライスと婚姻を結び、これを着て過ごした。
これがあるからマリーが生まれた。
でも、これによって私の人生は変わった…。
良い思い出と嫌な思い出、両方を巡らせる私はしばらくそのままドレスを広げたまま立ち尽くしていた。
すると、中に入ってくるユーリがいた。
「なにしてるの?リーネ…」
ユーリの声に反応し、ゆっくりドレスを下ろし振り返った。
「それ、持っていくの?」
「…ううん、そうじゃない。ただ、見ていただけ。
でも、私にはもう必要ないから」
「そう…。準備はどう?終わりそう?
かかるなら手伝うよ、マリーもそろそろ帰ってきてしまうから。
帰ってきたら…出よう」
「うん…」
ドレスをベッドの上に無造作に置き、私はユーリと共にクローゼットの中から必要なものを選び詰めていく。
一つ、また一つと鞄に詰めていく時、なぜか手が思うように動いてくれなかった。
服を持ち鞄に移す際、何回も落とす動作を繰り返した。
「リーネ…まだ迷ってるんじゃない?」
ピクッと体を動かし、ユーリの方を見た。
「違う…もう私は離縁するのは決めてる。
ただ、不安なの。
何も出来ない私がこれからあなたやマリーと居たら重荷にならないか…。それが怖い…」
服を掴みながら項垂れていく私。
そんな私の頭をくしゃくしゃと撫でながら笑いつつ言ってきた。
「私も不安よ、でもしがらみが無くなる方が嬉しい。
誰かに見られたりして過ごすより気の合うあなたやマリーが近くにいるならそれだけでいい。
貧しくてもそっちのが私は嬉しい」
「ユーリ…」
「早くしましょう、マリーが来たらすぐ行けるように」
「でも、行く場所なんて私達には無いよ、どうするの?」
「大丈夫、私に任せて。今は準備を終えるのが先よ」
笑顔を見せるユーリとは対照的に不安な顔ばかり見せ準備をする私。
屋敷を出た後でも行く場所の当てがあると言うユーリに私はつくづく頭が上がらない。
先を見越し動くこの行動力に頼り切ってしまっている…。
そんな不安をさらに増すかのようなドタドタとした足音を響かせ部屋へと来る人がいる。
「ただいま~」
満面の笑みを浮かながら入ってくるマリーだ。
「なにしてるの?二人で…」
入るなりクローゼットを捌くり服を鞄に詰める私達に疑問を投げかけながら近づいてくる。
「マリー、あのね…」
「アカデミーはどうだった?私に聞かせて、マリー」
同時に声に声を出すが、ユーリは私を見て首を振りクイっと鞄の方へ目を移す仕草を私に見せる。
それは早く詰めていくよ、と言われているみたいで…。
マリーの質問よりも今日の出来事を話させる事でいきなりの『引っ越し』に驚くのを和らげようとしているのではないか?と考えた。
「今日はね~」
マリーの相手をユーリがしている間、私は急いで鞄に詰めていく。
もう少しで終わるという時、マリーが開けっぱなしにした扉からブライスが部屋に入ってきた…。
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