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望みはそっちではない

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薄暗い地下。
そんな中、足元にある灯りだけを頼りに私とブライスは向き合っている。
しかも鉄格子を交えて…。

「ユーリとお前の違い?
そんなの簡単じゃないか、そんな事もお前は分からないのか?」

「…分からないから聞いてる。教えたくないならもう聞かないけど」

「ふっ、まぁお前は此処にずっといるわけだし、いずれそのまま…だからな。
いいだろう、教えてやる。
お前とユーリでは身分が違いすぎる、ただそれだけだ」

「身分…」

「あぁ、そうだ。
お前は『偶然』成功した親の所に生まれた。
それがたまたま続き、俺の調査に引っかかりアカデミーに来た。
だが、ユーリは違う。
このライオネス家に次ぐ位の高い貴族の出だ。
そんなユーリとお前を比べるなんておかしいだろう?
…どうだ、やっと分かったか?」

ブライスは淡々としかも私を論破するように言う。
そして何故か勝ち誇った感じに腕を組み私の事を見てくる。

「なんだ、納得したんじゃないのか?」

「…それが理由?」

「理由?そうだな。
3日後、正式にユーリは俺の妻になる。
それともう一つ言っておくが、俺はこれが初婚という事にしておく」

「な…なぜ!?」

「お前と居たという事実は俺には『要らない』」

要らない…
その言葉を聞くのはかなり久しぶりであった。
アカデミーで次々に落としていく時に使ったブライスの言葉。
どれだけの人を傷つけていたのか、この人は分からないのだろうか…。

「そこまでして私との事を消したいの?」

「あぁ」

「じゃあ…私と過ごした日々はあなたにとってなんだったの…?」

私は悔しかった…。
必死に向き合い、望めば私は応えてきた。
でも、ブライスからしたら満足できる物では無かったのかもしれない。

「お前との日々?」

ブライスは私の質問に腕を組んだ手を一度直り、顎に手を当て考え込んだ。
すぐに答えが出る感じではなく、私はその答えを待った。
そして顎から手を離すと私に対して言ってきた。

「おままごと、だ」

「お、おまま、ごと…」

「あぁ。そうだ、おままごとだ。
俺が思う夫婦の生活なんてほとんど無かった。
もっと満たされるものかと思ったが、お前は何もしてこなかった。
ただ、じっと待ち、俺が来るのを待っていた。
それのどこが夫婦だ?」

「だって…あなたは忙しそうだったから。
邪魔して気分を悪くさせてしまったら良くないと思ったから…。
だから…!」

「あぁ…もういい。こんな話は無駄だ。
終わった話を延々と話すのは苦痛だ」

ブライスは自ら話すのを打ち切り、私のいる鉄格子から離れ階段へと向かい出した。

「待って、ブライス!」

階段に一歩、足を乗せた状態で私のほうを振り向く。

「なんだ、俺はユーリを待たせている。邪魔するな」

「お願い…ここから出して…なんでもするから…」

「そうか。なんでも、か」

再びこちらに向かってくると鉄格子の中に手を入れ私の顔を触ってきた。

「なんでもするんだな?」

正直、言ったものの嫌だった…。
こんなこと言ったらこの人が望むのは私の体。
そうとしか思えなかった。

「…うん」

「わかった、リーネ」

「なに…?」


「ここで大人しく死んでくれ」


「え…」

「もうお前の体に用は無い。さっきも言ったがお前といたという事実は俺には邪魔だ。
だから大人しくこの地下で生涯を閉じろ、いいな?」

それだけ言うとブライスは私の顔から手を離し、階段を登って行ってしまった…。

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