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カミーユ R-35

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副会長忙しい…

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続いて私が向かった先は副会長である私の親衛隊がいつも集会を開く際に使われている教室に向かった。連絡は既に済ませている…。教室に入ると俺の友人である『親衛隊一番隊長の三嶋 一真』と同じく『親衛隊二番副隊長の野々宮 柊』が既に待っていた。そして、その隣には『親衛隊の橋本 雄二』の姿も。
三嶋「来たか……」
橋本「相変わらず早いですね」
野々宮「話は聞いていますわ」私に気付いた三嶋が喋りかけ、橋本くんがいつもと変わらない無表情で答え、橋本が何故かニヤニヤしていた。
三嶋「まっ、とりあえず座りな」そういって三嶋は一番奥の席に座る。私はいつもと同じ場所である彼の隣へと向かった。
副会長「本日はお忙しい中すみません。とても急な話だったので、急遽お呼び立てさせて頂きました」
橋本「いえ、問題ありません」そう言って橋本くんがいつもの無表情な顔で答える。橋本くんとは同じクラスだが、あまり接点がなく会話自体も必要最低限。そんな私に対して彼の後ろに立っていた野々宮が話しかける。
野々宮「今日もお美しい~。副会長♪」私に向かってウインクをしてきた。私が眉を顰めると彼はケラケラと笑い喜ぶ。
野々宮「う~ん♪ 副会長のその顔、最高ですわ♪」野々宮はいつもこういうキャラで、私はきっと野々宮との相性が致命的に悪いと思っている。何故か私には会う度にちょっかいを出してくる野々宮に少し嫌気が差す時もある。
副会長「はぁ……」私が深いため息をついていると三嶋が話を始める。
三嶋「それじゃ、今日は例の彼について話し合おうと思う」
橋本「……」
野々宮「……」私は無言で頷く……そして、この会議は夜まで続いた……。辺りが暗くなった時間、解散した私は1人寮へと続く道を歩いていた。「はぁ……」最近、ため息の回数が増えた。それだけ疲れる事が多いという証拠だ。私は考え事をしながら歩いていたせいなのか、前を見ておらず前から来る人物に気付かずぶつかってしまう……。ドンッ!副会長「ッ⁉」ぶつかった反動で後ろに倒れそうになるが、すかさず相手が私の腕を摑んだ為、私は倒れる事はなかった。
副会長「……すみません、考え事をしていて前をよく見ていませんでした」私は相手が生徒だと確認し謝る。
??「別に……というか、前を見ていなかったのは俺も同じなんで…」相手も謝ってくれた。しかしどうも見覚えがある気がした。
副会長「ん? 何処かでお会いしましたか?」私が首をかしげながら問いかけると……「いや、初対面だと……」と答える。確かに声も見た目も初めて会う人物だったが、何故だろう? 私はこの顔に見覚えがある……。私がそんな事を考えていると相手が言葉を続ける。
??「あの、大丈夫っすか? ボーっとしってけど……」
副会長「あっ、いえ……大丈夫です」私がそう答えると相手は「そうですか……」と言って立ち去ろうとするが……私は何故かその相手の腕を掴んでしまった。??「えっ?」
副会長「あっ! す、すいません!」慌てて手を放すが、何故かその腕を放してはいけない気がした。しかしそんな私の思いとは裏腹に相手は再び立ち去ろうとする。私はそんな生徒に再び声を掛けた。
副会長「あの…、待ってください!」私の言葉にゆっくりと振り返る生徒。
副会長「やっぱり助けて貰ってそのままではどうしても気が引けるので後日お礼をさせて頂けないでしょうか?」私の言葉に彼は「いえ、別にお礼が欲しくて助けたわけじゃないんで……」と答える。
副会長「そうですか……ではお名前だけでも」私がそう言うと彼は少し考える様な仕草をし、口を開く。「俺の名前は………拓海っす」(あぁ……君でしたか)私は内心細く笑んだ。
副会長「拓海さん……、ですか。私は及川 雅仁と申します」(コイツがいるせいで会長が椋橋くんと……)思わぬところで大物を釣り上げた気分だった。この者をどう片付けようか迷っていると、段々と彼の眉にシワが寄りだした。(あぁ……まずい。少し殺気を出し過ぎましたね……)そうこうしていると、彼は警戒しつつ「何?俺の顔に何か付いてんのか?」と聞く。

副会長「いえ、何でもありませんよ。ただ……。その顔であの氷の公を、どの様にして誑し込んだのか気になりまして……」言葉の意味が理解出来ていないのか、「は?」と混乱する彼。私は彼に近付くと耳元でそっと囁いた。
副会長「目障りなんです、貴方が」低く冷たい声でそう告げると一瞬で距離を離された。(やはり喧嘩慣れしてるから、相手から漏れる殺気を瞬時に感知し距離を取るのも早い…)彼は私から視線を外し「何か、勘違いしてんじゃねぇの?」と言った。
副会長「私は何も……」彼が誤魔化そうとするので、私が言葉を発しようとすると……。
拓海「……あのさ……」すると第三者の声?が割り込んできた。私達が声のした方に顔を向けると、そこには椋橋くんが立っていた。
副会長「これはこれは椋橋くんのお出ましで」彼は私に向けていた視線を椋橋くんに向けた。
拓海「……憂ッ!?」(ほぉ…名前を呼ぶ程仲がよろしくて…)私は彼のその行動に少し驚いた。
副会長「椋橋くん、私は今、彼と大事な話をしているんです。邪魔しないで貰えますか?」
椋橋「……話なら僕が聞く」椋橋くんはそう言って私の前にズイッと割り込んだ。私は苛立ち「チッ」と舌打ちする。(邪魔をするな)
副会長「椋橋くん、気まぐれな優しさは罪深い事ですよ?もっと、人を疑う事を知った方がいい。でないと……いつか、貴方自身が辛い目に遭わされますよ」
拓海「憂にこれ以上、近付くな!!」すると彼は椋橋くんを守る様に私の前に立ちはだかった。(二人揃って私を悪の扱いですか…)
副会長「やれやれ……」私はそんな2人のやり取りを見て、(あぁ、これはもう駄目ですね……)と悟る。
副会長「では、私はこれで失礼します」私はそう言うと彼らに背を向けて歩き出す。その際私は再度椋橋くんへ忠告した。
副会長「椋橋くん……、今貴方にとって、大事な人はその方では無いと言う事を肝に銘じて下さいね。今度そこ、間違えない様に…」そう言い残すし去ろうとする私に、彼は待ったをかけた。
拓海「待て!」(しつこいですね)私は足を止める。
副会長「何でしょう?まだ何か?」すると彼は私を睨むとこう言い放った。拓海「正直、アンタが何でそんなに生き急いでるか知らないけど、そんなやり方じゃ、その大事な人とやらも傷つける事になるぞ…」私はその言葉にピクリと反応すると、彼を冷たい目で見た。

副会長「それは一体どういう意味でしょう?」拓海「アンタは自分を偽って生きている。だから本心を見せないし、他人を受け入れようともしない」「そんな事はありません!」(ふざけるなッ!お前に私の何が分かるッ!!⁉)私は思わず声を荒げるが、彼は続ける。拓海「いいや、違わない。本当はその人に認めてもらいたいんだろ?自分を見て欲しいんだろ?だったらもっと自分を曝け出せよ!自分に素直になれよ!」私はそれを聞いて驚く。彼はまるで私の心を見透かしているようだったからだ。
副会長「貴方に私の何が分かると言うんです!?」私はそう叫ぶと、彼の胸倉を摑んだ。
拓海「分かんね……、けど、これだけは言える!アンタは不器用すぎる!」「ッ!?」その瞬間、私は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。それと同時に何かが壊れる音がした……。気がつくと私は彼の胸倉から手を離していた。
副会長「貴方に私の何が分かると言うんですか?貴方みたいな不良の塊みたいな人に……」(でも何故だろう……?この胸の痛みは何?)その時、何故かが頬を伝う感覚がした……。そして次の瞬間、視界がぼやけ始めると、私は涙を流していた事に気が付いた。突然泣き出してしまった私に彼は動揺しているようだった。
拓海「な、泣いてるのか? おい、大丈夫かよ?」彼は心配そうな声で私に声をかける。私は涙を拭いながら答えた。
副会長「あの人は私にとって神様のような方…。それはどう転んでも絶対に変わらない事実。」私は涙を拭いながら続ける。
副会長「あの人の存在は、私が私でいられる唯一の居場所。こんな無慈悲な私を唯一救ってくれたように、私もあの人を救いたかった……」その言葉を聞いている彼は、真剣な表情でじっと耳を傾けている様子だった。
副会長「でも、今の貴方の言葉で気付かされました……。私はあの人に依存していただけなのかもしれないと……。恩を仇で返す非常識な者に成り下がろうとしていたのかもしれないと……。」拓海「そんな事は……」彼が何かを言いかけるが、私はその言葉を遮り言葉を続けた。
副会長「いいえ、貴方に言われて少し目が覚めました。私の仕様としている事は偽善者に過ぎないのだから…」私は微笑みながら彼にお礼を言った。そして同時に決心する事にした。彼は驚いたような表情を浮かべた後、優しい笑みを見せたのだった……。



翌日、私は授業をサボって屋上に来ていた。昨日の出来事が頭から離れず、上手く眠ることが出来なかったからである。
副会長「はぁ……」私はため息をつくと、柵に寄りかかり空を見上げる。するとその時だった……。突然背後から声を掛けらる。

「ため息ばかりついていると幸せが逃げるぞ」
副会長「!?」私は驚いて振り返ると、そこに立っていたのは会長だった。会長は私の隣に来ると柵に肘を置いて空を見上げると、お互いしばらく無言の状態が続いた。(会長……私は貴方にどう恩をお返しすれば…)私は空を見上げながらそんな事を考えていた……。しかし、その沈黙を先に破ったのは会長だった。
会長「どうした?お前らしくない…」会長は心配そうに私に問いかけると、私の顔を覗き込んできた。
副会長「え……?」私が驚いた表情を見せると、会長は苦笑いしながら私に言う。
会長「お前はそんな表情をする奴じゃ無かっただろう?もっと堂々としている奴だと思っていたが……?」私はそう言われると、思わず顔を背けてしまう……。それを見た会長はさらに続けた。
会長「お前は、初めて会った時から自分に自信が無いところが変わらないな…」会長はそう言うと、フッと笑う。
副会長「あ……あたりまえです…。私は貴方と違っていつも自分自身に自信が持てませんでした……」
会長「ふっ、そうやって拗ねるところも変わっていないな」そう言われ、思わずムッとした表情を見せてしまう。その時ばかりは昔の頃に戻った気持ちになった。するとそんな私を見た会長は苦笑いしながら言った。
会長「だが、いつからかお前の表情から本当の意味での笑顔が見られなくなったな……」会長は私を見ながら話を続ける。

会長「お前は、いつも他人を優先して自分を二の次にする奴だと俺は思っている……。まるで自分に対して愛情が無いように感じるくらいにな……。お前は根っからの真面目人間、故に昔から信仰心も人一倍強い。俺はそんなお前を尊敬しているし、信頼している……」
副会長「会長……」私は会長の言葉に胸が熱くなるのを感じた。そして、思わず涙ぐんでしまった。そんな私を見た会長は、優しく微笑みながら言った。
会長「だから、お前が苦しんでいる時は俺が助ける。それは他の生徒も同じ気持ちだと思うぞ?」私は会長の言葉に胸が一杯になり、涙が溢れ出てきた。
副会長「うぅ……会長ぉ……」泣き崩れそうになる私を抱き留めると、会長は頭を撫でながら言葉を続ける。
会長「お前はもっと自分を大事にしろ……。俺がお前の分まで頑張るからよ……」
副会長「うぅぅ……私が間違ってましだぁァ…」私は嗚咽混じりに返事をするのがやっとだった……。しばらく経って落ち着いた後、私が涙を拭っていると不意に背後から会長以外の声が掛けられた。振り向くとそこには、会計が立っていた。

会計「何泣いてんの。副会長らしく無いよ」どこか気まずそうに視線を逸らされるも、どこか気まずそうに視線を逸らされるも、会計はぶっきらぼうに言う。
会計「昨日は……その。騒がせて、悪かったよ……ごめん」普段の彼はとは打って変わって、しおらしい態度を見せてくる。どうやら、昨日の失態を気に病んでいるらしい。(もしかしたら会長に何か言われたのかもしれない)私はそんな会計の姿が少し可愛く見えてしまった。
副会長「あの時は、少し驚きましたが、別に気にしてませんよ」そう答えると、会計は少し恥ずかしそうな顔をしたように見えた。
会長「俺も気になって、コイツにワケを聞いたらどうも、コイツの悪い癖が出たようだからな。俺が直々に灸を据えておいたから、もう大丈夫だ」
副会長「全く……相変わらずですね」
会長「お前な…」
会計「ふん……」ふて腐れたようにそっぽを向く会計に、私は思わず笑みが溢れた。そして、いつものやり取りに心が軽くなっていくのを感じた。(やっぱりこのメンバーは落ち着くなぁ……)私は心の中で呟いた。
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