色彩色盲

カミーユ R-35

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本気じゃあねぇよな?

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数日後、生徒会では学園祭の準備が着々と進んでいく中、各クラスの出し物も順調に決まっていき、うちのクラスでも出し物を決めることになった。一様、学園祭はFクラス等も参加出来るからか、俺のクラスの連中もうんぬかんぬ悩んでいた。
担任「で、何か意見ある人いないのか?」担任がそう聞くと、一人の男子学生が手を挙げた。
ボブ「あの……お化け屋敷とかどうスっか?」その提案にクラス中がざわめいた。
担任「え? お化け屋敷? 本気で言ってるのか?」
ボブ「うん。あ、勿論怖い方じゃなくてさ。軽いアトラクションみたいな感じスっけど…」
担任「ほう……なるほどな。それなら何とかなりそうだ」その意見に連中も納得していた。確かにそれなら他のクラスと差別化も図れるし、集客も見込めるかもしれないと思ったからだろう。
担任「他にはないか?」担任がそう言うと、またも手が挙がる。
担任「ん? どうした?」そして、その人物はこう言った。
光輝「女装カフェとかどうや?」その発言にクラス中が凍り付いた。勿論俺も例外ではない。まさかアイツの口からそんな言葉が出ると思わなかったからだ。確かにうちのクラスには篝の様な身体が小柄で綺麗系な奴もいるが、どいつもこいつも明らかに一癖も二癖もある連中ばかりだから、下手したら大惨事になるかもしれない。
担任「……一応言っておくが光輝、このクラスに女気のある奴は居ないが、それでも良いのか?」担任はクラス中を見回しながら聞く。すると、クラスの連中は皆目を逸らすか、適当に首を横に振る。そんな連中を見て光輝は、「おいアンタら! もっとやる気出せや!」と叫ぶが、俺はその言葉を遮って発言する。
拓海「いや、女装カフェは無しだ」
光輝「えぇ⁉なんでや!」
拓海「逆に聞くが、お前はどうして女装カフェが良いと思うんだ」
光輝「そら……やっぱ定番やし? オモロそうやから?」
拓海「絶対やめろ」光輝「何でや! ええやないか! 別に減るもんとちゃうんやから」意見を曲げない光輝に俺は溜息をつきながら言った。「篝…」と。するとバトンタッチするように篝が説明しだす。
篝「そもそも女装カフェは、そのコンセプトからして危険だ。まず第一に、女装した男を見て誰が喜ぶ?」そう聞くと、クラス中がシーンとなった。
篝「そもそも、このクラスに女装が似合う奴がいるか?」
光輝「そら……そんなおらんけども……いや、おるやん! 篝と
か!」
篝「却下。俺は絶対無理。そもそも、そんなキャラじゃない」心底嫌そうな顔の篝を横目に、俺も説得する。
拓海「それにな? もし仮に篝が女装して接客するとして、その姿を見たらどう思う?」光輝「……それは……」俺の言葉に少し考える素振りを見せる光輝。そして数秒後、ハッとした表情になる。どうやら俺の言いたい事が分かったらしい…。
拓海「そうだ。つまりはそう「可愛い……」は?今、何つった?」
光輝「いや!何もッ⁉」いきなりの爆弾発言にクラス中がざわついた。そして当の光輝は、顔を真っ赤にして俺から顔を背けている。(まじかよ…)前から思ってはいたが、光輝は多分篝の事が恋愛感情の方で好きだと思う。恋愛とかには鈍い方な俺でも分かるくらいに、光輝は篝の事を意識した態度を見せている時が多々ある。『可愛い』と呟いたのは、多分その感情が思わず出てしまったんだろう。(……まあ、今はそっとしておくか)俺はそう判断し、これ以上この話題に触れる事はしなかった。
拓海「まぁ どちらにしてもうちのクラスで女装カフェは却下だ」
光輝「そ、そうだな!俺もそう思う!」さっきとは打って変わって急に意見をコロッと変える不自然さに、内心笑いを堪えるのが大変だったのは言うまでもない。で、結局うちのクラスの出し物は『お化け屋敷』になった。




………。
休み時間、眠くなった俺は、机に伏せ寝る体制に入ろうとした瞬間、何故か俺の前に二人が寄ってきた。
篝「なぁ、拓海」「ん?」無意識に眉をひそめ顔を上げると、辛気臭さそうな顔をした篝が立っていた。
拓海「……何? 何か用か?」
篝「うん……ちょっと聞きたい事があって……」拓海「何?改まってどうした?」不思議に思っていると、篝は何故か言いにくそうに言葉を続けた。
篝「実は昨日、拓海が先に帰った後生徒会役員の人が来てさ……。拓海を何故か探してたんだよね。正直俺等も何で来たか知んないから適当にはぐらかしたけど…」
「え……」生徒会役員? 俺を……探してた?
拓海「篝、もしかしてそいつって副会長とか名乗ってなかったか?」
篝「え、何で知ってんの?」まさかと思い聞いてみれば、やはり昨日のあの生徒会の副会長だったようだ。
拓海「あー………」
光輝「何となしに陰気臭そうな奴やと思ったけど、知り合いやったんか?」
拓海「いや、知り合いでは無い…」(少し顔を合わせた間柄?少し喋った人?)どう説明すれば良いか迷っていると、俺の返事も待たずに二人は話を続けた。
篝「つか、拓海って役員持ちの友達とかいたの?」
光輝「あ、それウチも思った」二人して、俺に疑問をぶつけてくる。(二人して、興味津々だな オイ)
拓海「いや、だから知り合いじゃ……」
篝「でも副会長って奴が言ってた……『エリート科、それも役員持ち生徒と仲良くするなんて……』って。」(役員持ち?副会長の事では無いよな?じゃあ……)「あ」そういえばあいつも確か…。

拓海「もしかして…椋橋の事か?」
篝「椋橋?」光輝「また随分と珍しい苗字やなぁ。知り合いなんか?」
拓海「あぁ……、実は少し前に知り合ってから顔を合わせるれば話すようになって……」
篝「ふぅん」しかし俺は、ある事を思い出してしまい、顔が強ばった。
拓海「……篝」「何?」
拓海「とにかく多分もう大丈夫だと思うから心配すんな」
篝「え、何が?」「昨日、あいつとちょっと色々あってな。多分解決?したと思う」
篝「解決? 何で疑問系?」どこか納得していない篝に、俺は強引に話を反らした。
拓海「つか、そんな事言う為にわざわざ寝ようとしてる奴処来たのか?」
光輝「せやで。一応心配しとったんや」すると光輝と篝は何故か顔を見合せ、そして俺に向かい盛大な溜め息を吐いた。
拓海「は?何だ反応」
篝「拓海って……」
光輝「拓海がええならええとちゃう?ほな次の授業の準備しよか~」俺は二人の謎の言動に首を傾げながらも、もう深く考える事はやめた。とりあえず、放課後に椋橋に会ってからどうするかを考えた方が良さそうだ。
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