色彩色盲

カミーユ R-35

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言えず終い…

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それから時間が経ち、現在昼休み。俺は早々に昼を終え図書室に来てみたが、目的の人物は居なかった。仕方なく帰るかと足を出口に向けた時、他の生徒で賑わっている中、一人静かに読書している人物が目に入った。
拓海「あ」その人物は俺に気付くなり、読んでいた本を閉じこちらにやって来た。
拓海「何の用だ」
稲嶺 「何の用だとは…失礼な奴ですね。君こそ、こんな所にわざわざ足を運ぶとは何を企んでいるんですか?」
拓海「お前の方こそ、人聞き悪いんじゃねぇのか?俺が何を企んでるって言うんだよ」
稲嶺「そうですね……。君が図書室で本を借りるとは心底思えないので、考えられる事はただ一つ。何か企んでいるという事です」
拓海「ンなワケねーだろ!俺は至って真面目だっつーの!お前こそ、普段図書室なんて来ねぇのに何しに来たんだよ」
稲嶺「僕はただ本を読みに来ただけです。君と違って僕は真面目なので」
拓海「…お前は俺がどう見えてんだよ…って、そんな事はどうでもいい。なぁ、お前仕事はどうしたんだよ。暇じゃねぇだろ?」稲嶺「そうですね。本日は読書に耽る事を予定しているので、暇ではありません」
拓海「いや、だから……。ハァ……まぁいいや、お前ってホントは頭いいのにバカだよな」
稲嶺「君にだけは言われたくないですね」
拓海「で?何しに来たんだよ。まさか本当に本を読みに来ただけか?」
稲嶺「……君こそ何を企んでいるんですか?」
拓海「いや、だから何も企んじゃいねぇって。ただ、椋橋を探してただけだ」
稲嶺「椋橋さんですか??生徒会役員の?」
拓海「あぁ……」
稲嶺「………それでしたら、先程中庭に行く所を見ました」
拓海「!マジかよ。サンキューな!」俺は一刻も早く椋橋に会いたかったので、早速中庭に向かう事にしたのだが……。
稲嶺「……何しに来たのかは結局聞かないんですね」
拓海「いや、だって暇じゃねンだろ?」
稲嶺「……図書室で本を読む事がそんなに暇そうに見えるんですか?」

拓海「あーはいはい。分かったからそんな怖い顔すンなよ。じゃあ、俺は行くからな」
稲嶺「……君も大変ですね」「は?何が?」
稲嶺「何でもありませんよ。ほら、さっさと行って下さい」
拓海「あぁ…わりぃな」俺は中庭に向かう為急いで教室を出たが、不意に気になって後ろを振り返る。すると、そこにはさっきと同じ様に静かに読書しているアイツが居た。(アイツが図書室で読書って柄でもねぇのに珍しい事もあるんだなァ……)なんて思いながら今度こそ中庭に走ったのだった。



「__っし、到着」中庭に無事到着した俺は周囲を見渡す。しかし、憂の姿は無い。(一足遅かったか…)と、俺が項垂れていると後ろから不意に声がした。(気配は無かったが…)普段なら気づく筈のその気配にも気づけなかった事に違和感を抱きつつも、俺は振り返えった時だった。不意に俺顔目掛け拳が流れてくる。拓海「うおっ!」俺は咄嗟に避けようとしたが、避ける事が出来ずにそれに当たる。
拓海「ってぇ……一体何が__」そう言って俺は視線を上げてみるとそこには────…。

拓海「三嶋 一真……何故お前がここに」無意識に拳を握り、俺は三嶋を睨み付ける。すると、三嶋はその場から動かず可笑しそうに目を細める鼻で笑う。
拓海「何がおかしいんだ」そう言って俺は少し苛立ちながら問い掛けると、三嶋はハッと馬鹿にする様に笑う。そして言ったのだ。
三嶋「お前…弱くなったな。いや、元に戻った……と言うべきか?」「あ?」
三嶋「お前、この学校に来る前と今じゃ全然動きが違う。まるで別人だ」
拓海「っ!」俺は思わず息を飲む。確かに俺は以前と変わったかもしれない。でも、それは憂が居てくれたからであって……。拓海「……何が言いたい」三嶋はニヤリと笑うと言った。
三嶋「お前は弱くなったんじゃない……ただ単に本気を出せなくなった。それは守る者が出来た証拠だな…」
拓海「っ!」俺は図星を突かれ言葉に詰まった。三嶋はそんな俺を見て馬鹿にしたかのように笑うと、次の瞬間にはその場から居なくなっていた。
拓海「チッ……」舌打ちして拳を握りしめる。俺の中で何かが音を立てて崩れて行く気がした。俺は三嶋が居なくなった後も呆然と立ち尽くしていた。すると、背後から聞き慣れた声が聞こえる。
椋橋「…何してんの?」振り向くとそこには憂の姿があった。
拓海「……あぁ」心配そうに俺を見る憂に、俺は小さく返事をした。
拓海「何でまだここに?授業は?」拓海はポケットからスマホを取り出して時間を確認した。(授業はもう始まってるのに何故だ?)すると、気まずそうに「……サボった」そう言うと、俺の近くに寄って来る。
拓海「そっか……サボったのか」(珍しい事もあるもんだァ…)俺がそう言うと、憂は少し悲しそうに俯く。そして、憂は重い口を開く。
椋橋「さっきの人って拓海の友達?」
拓海「見てたのか⁉あー…まぁ、そんな所だ」正直あんな奴は友達なんかじゃないが……と心の中で付け足す。
椋橋「顔……怪我してるよ」そっと、憂は俺の頬に触れた。
拓海「……ちょっとな」俺は少し気まずくなって目を逸らす。すると、憂はポケットからハンカチを取り出した。そして俺の頬の血を拭う。
拓海「ありがとな、憂」俺がそう言うと、憂は俯いていた顔を上げた。そして、何かを決意した様に強い眼差しで俺を見る。椋橋「ねぇ、拓海……僕も……」俺はその真剣な目に圧倒された。あぁ……この目を俺は知ってる。心の底からの本気の目だ。だが、そんな目も束の間だった。俺の頬から手が離された瞬間、いつもの憂に戻った。
椋橋「……僕はいつも拓海に助けてもらってるばかりだから……僕も拓海の助けになりたいんだ」憂はそう言って少し微笑んだ。俺はその笑みを見て、何だか心が軽くなった気がした。
拓海「あぁ……ありがとな、憂」俺は憂の髪を優しく撫でる。すると、憂は少し照れてるようにも見えた。
椋橋「……」そんな憂を見て、俺は思わず笑みがこぼれる。
椋橋「拓海…?」
拓海「いや……憂は可愛いなって思ってな」俺のその言葉に、憂は驚きつつも少し頬を赤らめた。俺はそんな憂が堪らなく愛おしくなった。(憂はきっと、気づいてないんだろうな…)俺がどんなに憂を想っているか。きっと、本人ですら自覚してないかもしれない。でも、俺はそれでいいと思う。憂はきっとこれからもっと成長するだろう。だからこそ、今はこのままの関係でいいと思ってる。今のその空間が心地良かった。だが、その時間も長くは続かなった…。
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