色彩色盲

カミーユ R-35

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拓海回想

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翌日、いつも通り登校し教室に入ると既に何人かの生徒が登校していた。その中には俺の友人である『郷田一郎』も珍しく登校していた。関東最大の組織暴力団系〇〇組の組長の息子であり、学園内でも屈指のイケメンと噂されてる。
拓海「おはよう郷田。今日は珍しく登校してんだなァ」
郷田「あぁ、昨日もそうだが、最近親父からの連絡が頻繁でな。『大事な会議があるから来い』ってよ。だから最近学校も休みがちでさ…」
拓海「お前も大変だな」将来を期待されてる分、色々と今の内に仕込む事が山積みなのだろ…。(まぁ郷田の家庭は特殊だからな……)
郷田「まぁ、そんなとこだ。それよりお前こそ珍しいな。お前がこんな時間に登校してくるなんて」物珍しそうに俺を見る郷田に俺は「あぁ、ちょっとな……」と言葉を濁した。

郷田「なんだ? 何かあるのか?」俺の表情を見て、何かを察したように聞いてくる。
拓海「まぁ……色々とな」しかし俺はそれ以上言うつもりも無く、郷田もそれ以上深く聞いてくることはなかった。その後すぐに担任が教室に入ってきた為話はそこで終わった。休み時間になると、俺はすぐにトイレに向かった。そして個室に入り、スマホを取り出しある人物に電話をかけた。数コール後、その人物は電話に出た。

拓海「もしもし、俺だけど……」電話の相手は俺がよく知る人物。その人物は……『伊藤 柚木』俺の姉である。

柚木「あら拓海? どうしたのこんな時間に?授業わ?」相変わらず呑気な声を出す姉貴に俺は呆れながらも要件を話した。
拓海「今は休み時間。それより姉貴さ、少し昔の話なんだが三嶋 って奴…覚えてるか?元俺のクラスメートだったんだけど…」

姉「三嶋……? あぁ、あのいつも学年一位の秀才くんね?何となく覚えてるわよ。その子がどうかしたの?」この様子だと姉貴はまだあの事を知らないらしい……。アイツは昔から人の目を欺くのが得意だったからな……。だから俺すらアイツの嘘に騙されたんだ。

俺は少し間を置いてからゆっくり口を開く。
拓海「実はさ……その三嶋が昨日、俺の前に現れてさ」
姉「え? 三嶋くんが……? ホントなの?」
拓海「あぁ、間違いない。それにアイツが俺に言った言葉……『お前と俺は同類だった』って……どういう意味かわかるか?」

姉「さぁ? 私にはさっぱり……」「だよな……。わりぃ忙しい時に」やっぱり姉貴に聞いても無駄か……。俺はそう考え電話を切ろうとしたのだが、姉貴に止められた。

姉「でも拓海ならその子の事がわかるんじゃないかしら?」
拓海「は? なんでそうなるんだよ」
姉「友達じゃないの?」
拓海「……」
姉「それに、もう一人いたでしょ?、拓海が中学二年生の頃だったかしら? 休み時間とか放課後とかによくつるんでたじゃない。確か名前は『三嶋 啓介』くんだったかしら?」

拓海「……啓介……」その名前を聞いた時、俺の脳裏に当時の記憶が蘇った。そう……それは俺が中学二年生の頃の話。俺は当時から余り学校にも行かず喧嘩ばかりしていた。だからいざ学校に行けばクラスメイトは皆俺を怖がり誰も近づかなかった。その中で唯一、俺に近付いてきたのは一人だけだった。それが『三嶋 啓介』だ。


【回想】
啓介「よぉ!拓海!今日は学校来てんだな」そう言って馴れ馴れしく話しかけてくる啓介はクラスの人気者で、常に輪の中心にいた存在だ。そんな奴が何故俺なんかに話しかけてきたのかは今でも謎だが、当時の俺は啓介の事が嫌いじゃなかったため、それなりに仲良くしていた……と思う……。だがある日を境にその関係は一変した。それはある中旬頃の時。その日は下校時刻まで俺はいつも通り一人で過ごしていた。(……啓介のやつ遅いな……)俺が下駄箱で靴に履き替え校門をくぐるとそこには見知らぬ男がいた。そいつは全身黒ずくめで、いかにも怪しい雰囲気を醸し出していた。その男は俺を見るなり話しかけてきたのだ「お前が、菅 拓海か?」見た目からして怪しい男だと思ったが、何故か俺の名前を知っていたため俺はその時馬鹿正直に答えてしまった。
拓海「……そうだけど」すると男はニヤリと口角を上げ、こう言った。
「そうか……お前が例の菅 拓海か……」男は俺を品定めするかのように全身を舐め回すかのように見ていた。その行為が気持ち悪くて仕方がなかった俺はその場を去ろうとした。すると男は「おいおいどこ行くんだよ?」と言って俺の肩を掴んできた。
その瞬間全身に鳥肌が立ち、俺は反射的に男の腕を振り払った。そしてそのまま走り出そうとしたのだが、男がそれを許してくれなかった。男は俺の腕を掴んで離そうとしない。俺は必死に抵抗したのだが、男の力は強く振りほどくことができなかった。男は俺の腕をグイッと引っ張り、耳元で囁いた。

「お前の大事なお友達。『三嶋 啓介』がどうなっても良いのか?」その瞬間俺は直感で悟った……。(啓介が危ない!?)そう思った瞬間体から力が抜けてしまった。俺は抵抗するのをやめ、男の車に素直に乗り込む。車の中は異様なほど静かで、とても居心地が悪かった。男は終始無言で、俺も何も喋らなかった。そしてしばらく車に揺られていると、急に男が話しかけてきた「お前さ、男としたことある?」俺は突然の質問に動揺を隠せなかった。何故そんな事を聞くのか訳がわからなかったが、答えないと何をされるか分からなかったため素直に答えた。
拓海「……無い」そして男は「ふーん……」と言い興味を無くしたのか再び黙った。その後しばらく沈黙が続いた後、車はようやく目的地に到着したようだった。

そこは人通りの少ない路地裏にある廃工場のような場所だった。中に入ると中には檻があり、中には全裸の男が入れられていた。男は俺達に気づくなり暴れ出したがすぐに取り押さえられてしまった。男の裸体を見て吐き気がした俺は思わず目を背ける。だが、次の瞬間。檻の中から聞こえてきた悲鳴に驚いてしまった。恐る恐る檻の方を見ると、男は全身血だらけで倒れ込んでいたのだ。その光景を見た俺は思わず腰を抜かしそうになった。どうやら男はそのまま息絶えてしまったようだった。
拓海「……な……何なんだ……これ……」俺が動揺していると、男が俺の肩に手を置きながら話しかけてきた。
「これはお前への罰だ。あの時お前が邪魔をして無ければこんな事しなくて済んだんだがな…」
拓海「はッ⁉ざけるな!知らねーよそんな事!何で俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだッ!!」俺は怒りに任せて男を殴り飛ばす。すると男は一瞬怯むがすぐに体勢を立て直し俺に襲いかかってきた。だが、所詮はただの人間。喧嘩慣れしている俺の方が強いに決まっている。俺は男の攻撃を難なくかわし、逆に男に蹴りを入れたり殴ったりする。そして数分後には男は血まみれになって地面に倒れていた……。

拓海「ハァ…ハァ……、啓介……そうだ 啓介は??」俺は急いで他の檻の方を見る。だが、啓介の姿はなかった……。(もしかして啓介は此処には居ない?)そう思うとどこかホッと胸を撫で下ろした。しかし、それと同時にある疑問が生まれた……。じゃあ啓介は何処に?その答えはすぐに分かった。突如、後ろから俺の肩に何者かが手を置いてきたのだ。
拓海「ッ!?……誰だ!」俺は後ろを振り向くと同時に回し蹴りを入れるが、それは虚しく空を切るだけだった……。何故ならそこに居たのは前に姉ちゃんを誘拐した男だったからだ。
??「よお!久しぶりだなぁ」ニヤリと笑いながら話しかけてくる男に対して、俺は警戒を強めた。
拓海「お前……何でここに……?」
??「は?そんなの決まってるじゃねーか。お前を捕まえに来たんだよ」
拓海「俺を?」
??「ああ、そうさ。お前は俺たちにとって邪魔な存在だからな」そう言いながら男は「アレを連れてこいッ!」と叫ぶ。すると、男の後ろから黒尽くめの男が"何か"を引きずってきた。それは……「うっ……うう……」血まみれになっている啓介の姿だった。
??「確かコイツとお前、仲良かったよな?」
拓海「……ざ、けんな……ふざけんなぁぁあああああッ!!」俺は怒りに身を任せて目の前の男に飛びかかった。しかし、男はそれをひらりと躱す。そして俺を羽交い締めにして動きを封じた。
拓海「ぐっ!離せ!!この野郎ッ!」ジタバタと暴れるが男の腕はビクともしなかった。
??「動くなよ?コイツを殺すぞ?」そう言って男は刃物を啓介の喉元に突きつけた。
拓海「くっ……!卑怯だぞ!」
??「卑怯で結構!お前には散々酷い目に遭わされてきたからな。これぐらいじゃ済まさねぇぞ?」
拓海「……何が目的だ……」
??「それはお前の返答次第だな……お前が正直に俺の言う事をきくなら、このガキの"命だけ"は助けてやるよ」その言葉に俺は黙り込むしかなかった。俺が黙っていると男は俺の耳元に顔を近づけてきた。
??「さあどうする?」
拓海「……分かった。言う通りにするから啓介を解放してくれ…」俺は苦渋の選択の末、男の言う事をきく事にした。??「懸命な判断だ。よろしい…」男は満足そうに笑うともう人の黒尽くめの男に啓介を掴んでいた手を離すよう命じた。すると不意に男はスマホを取り出して何処かに電話をかけ始めた。
??「もしもし、俺だ。あぁ…アレの準備は出来た。後は………はッ!?今何つった?!」電話相手と口論になっているのか、男は急に怒鳴り声を上げた。

??「おいッ!ふざけてんじゃねーぞッ!どういう事か説明し……な、何だよいきなり!?やめっ!やめt!!」男が突然電話相手の怒号に怯えだし、そのまま電話を切った。
??「……クソがッ!」男は怒りに任せてスマホを地面に叩きつける。「一体どうした?」もう人の黒尽くめの男が恐る恐る男に尋ねる。すると男は苦々しい顔を浮かべながら誰に言うでも無く、ただその視線の先を睨み付けながら冷たく言い放つ。

??「お前との取引は無しだ」まるで苦虫を噛み潰しながら話しているような苦々しい顔と声音だった。
??「いいか?よく聞け……後一分以内にこの場所から立ち去るか、俺に殺されろ」
拓海「……は?何言ってんだよお前……意味わかんねーし……」
??「言葉通りの意味だ。俺はもうお前とは取引しないって言ったんだ」もう一人の黒尽くめの男は、信じられないといった表情で男の事を見るが、そんな事はお構い無しに話を続けた。
??「早くしろ。じゃねぇと要件無用でぶっ殺すぞ」男は苛立ちに顔を歪めていた。拓海は困惑し、この状況に戸惑いを隠せない。なぜ突然意見が変わったのか?そもそもこの男は誰なのだろか?そんな疑問ばかりが頭の中をよぎった。
拓海「な、なぁ……あんた一体何者なんだ?」
??「……生憎お前みたいなクソガキに名乗る名前は、もち合わせてねぇな…。分かったならさっさとそのガキ連れて帰んな」煽るようにしっしっ、と手を払う仕草を見せる男に、未だ拓海は状況がうまく飲み込めず、もう一人の黒尽くめの男を見るが、男はただ無言で立ち尽くしているるだけで、特に止める素振りも見せなかった。
??「早くしろって言ってんだよ……」男は苛立ちを隠そうともせずに、拓海を睨み付ける。
拓海「わ、分かったよ……」拓海は未だ地面に横たわっている啓介の腕を引っ張りながら男に背を向けて歩き出すが、啓介は動こうとしなかった。
拓海「……おい?どうしたんだよ?」声を掛けるが俯いたまま何も喋べらない啓介を不審に思いながらも俺達は、外へ出た。それからの記憶は曖昧で、どうやって家に帰ったのかも分からない。ただ一つ言えることは、アレから啓介の様子がおかしいと言う事だけだ。

---数日が経った朝、学校へ行くと何やら騒がしい。教室の中に入ると何人かの生徒が教壇の周りに集まっていた。拓海は何があったのか近くにいた生徒に尋ねた。すると、その生徒は興奮した様子で答える。どうやら今朝のニュースで、昨晩この学校の生徒である三嶋 啓介さんが死亡したと言うのだ。拓海はそれを聞いて愕然とした。(冗談だろ…??)
あの晩の次の日から啓介は学校を休んでいた。連絡が取れず心配していた所、こんなニュースが飛び込んできたのだ。拓海はすぐに教室を飛び出して啓介の家へと向かった。
---ピンポーン、チャイムを押すが反応がない。何度押しても応答はない。心配になった拓海はドアノブに手を掛けるが鍵は勿論閉まっている。焦る気持ちとは裏腹に何も出来ない自分に苛立ちを感じていた。その夜、拓海は眠れずにただベッドの上にいた。あの後ずっと考えてはいたが、答えが見つからない。拓海は頭を抱えていた。その時ふとある事を思い出す。それは寸前に啓介と話した時の事だった───…。

啓介「なぁ拓海。お前はこの先、どうするつもりなんだ?」
拓海「えっ?どうするって何がだよ」
啓介「だから、この先の話だよ…」「いや、特にないけど……。そう言う啓介はどうなんだよ」
啓介「俺か?俺はそうだな……」---あの時、啓介は何かを言おうとしていたが、結局聞けず仕舞いだった。もしかしたらその事が関係しているのだろうか?拓海はそう考えたが確証はない。
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