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第56回『ゴール 紅葉 エイリアン』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第56回『ゴール 紅葉 エイリアン』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約58分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=2OophUOuBMU
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
夏は過ぎ季節はすっかり秋となった。
それは妻を見てもわかる。
毎日うれしそうにさつまいもや、栗、梨など秋の味覚を口にしているからだ。
しかし木枯らしはまだ吹いてなく、ましてや家の中は寒さとは無縁だった。
妻も厚着はしていないはずである。
にもかかわらず妻は以前より横にボリュームが増えたように見える。
もちろんそれを妻に直接言うほど私は愚かではない。
惨劇が起こることは火を見るより明らかだ。
ならばどうしようと思っていると、テレビでは気象情報が流れていて私はひらめいた。
「ねえ、今度の日曜日山にハイキングに行かない?」
妻には運動をしてやせてもらう作戦だ。
「えー、わざわざ日曜日に疲れたくなーい。」
妻はソファで雑誌をめくる手を止めずに答えた。
ちらっと見えたページは栗まんじゅうを紹介しているようであり、私はこれくらいでくじけてはいけないと気持ちを新たにした。
「でもせっかく秋なんだし近場にいい山もあるみたいだよ。」
すると妻はぱっと雑誌から顔を上げた。
「おいしいお店あるの?」
どうにも妻には食べることばかりが頭の中を占めているようである。
「そりゃあふもとにはおいしいお店もあると思うけど、やっぱり秋なんだから……。」
「何のお店? 栗ごはん? きのこ?」
人が話している最中でも妻の口からは食べ物のお店が食い気味に出てきて私は気圧されてしまった。
ちょっとでもお店という言葉を入れてしまったのがまずかったのか。
これはいよいよ慎重に駒を進めていかなければならないようである。
「いや、やっぱり秋なんだから、紅葉でも見に行かない?」
妻を相手にさりげなく誘導するのは無理だとすぐに気付いた私は、結局当初の予定通りストレートに提案した。
だが当然そうすると妻の反応は。
「いいよ、紅葉なんか別に。」
やはり。
エイリアンという言葉はもともと価値観の違う人とかを指すようであったらしいが、その意味では紅葉を別になんて言ってしまう妻は間違いなくエイリアンだ。
どうせ出先で食事は取るのだからやはり食べ物で釣った方がいいのだろうかと私は思い始めてしまい、なんだか自分がゴールを見失っていることを感じた。
言葉を探している私に妻がつぶやいた。
「そもそもみんなが紅葉を見たがる理由の一つが真っ赤になるからだと思うんだよね。」
「どういうこと?」
「恋の比喩ってこと。だからみんな紅葉を見ることによって恋の充足感をバーチャルに得ているんだよ。」
これについてはなるほどと思ってしまった。
だがそれと同時に不安もよぎった。
「それはバーチャルにも恋の充足感なんかいらないって君は思ってるの?」
思えばもう妻とは結婚して5年であり、付き合った期間も含めれば10年以上の付き合いになり、私たちはすでになんでも話せる仲であった。
私はそれに慣れすぎてしまって、妻との時間を真剣に作ってこなかったような気がした。
仮に作ったとしても今回のようにきわめて打算的なものであった。
妻は私のことなどとっくに冷めきっているのかもしれないと思った。
「うーん、恋のなんたらとかよりも今は子どもの方が欲しいかなと思ってる。」
妻が雑誌に目を伏せて言った。
相変わらずページには食べ物ばかりが並んでいる。
やはり妻に節制してもらうのは大変なことなのかもしれない。
でも、私には、いや私たちにはもう一つのゴールが見えてきた。
~・~・~・~・~
~感想~
オチはおおむね決めていたのですが、そこに向けてどう話を進めていけばいいのか迷いながら書いていました。
その意味では妻を説得しようとどうすればいいか考えながら話している夫は私自身でもあります。
それにしてもエイリアンは日本人にはほぼ映画としてしか認識されていないと思うので、このお題はうまく消化できませんでした。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第56回『ゴール 紅葉 エイリアン』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約58分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=2OophUOuBMU
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
夏は過ぎ季節はすっかり秋となった。
それは妻を見てもわかる。
毎日うれしそうにさつまいもや、栗、梨など秋の味覚を口にしているからだ。
しかし木枯らしはまだ吹いてなく、ましてや家の中は寒さとは無縁だった。
妻も厚着はしていないはずである。
にもかかわらず妻は以前より横にボリュームが増えたように見える。
もちろんそれを妻に直接言うほど私は愚かではない。
惨劇が起こることは火を見るより明らかだ。
ならばどうしようと思っていると、テレビでは気象情報が流れていて私はひらめいた。
「ねえ、今度の日曜日山にハイキングに行かない?」
妻には運動をしてやせてもらう作戦だ。
「えー、わざわざ日曜日に疲れたくなーい。」
妻はソファで雑誌をめくる手を止めずに答えた。
ちらっと見えたページは栗まんじゅうを紹介しているようであり、私はこれくらいでくじけてはいけないと気持ちを新たにした。
「でもせっかく秋なんだし近場にいい山もあるみたいだよ。」
すると妻はぱっと雑誌から顔を上げた。
「おいしいお店あるの?」
どうにも妻には食べることばかりが頭の中を占めているようである。
「そりゃあふもとにはおいしいお店もあると思うけど、やっぱり秋なんだから……。」
「何のお店? 栗ごはん? きのこ?」
人が話している最中でも妻の口からは食べ物のお店が食い気味に出てきて私は気圧されてしまった。
ちょっとでもお店という言葉を入れてしまったのがまずかったのか。
これはいよいよ慎重に駒を進めていかなければならないようである。
「いや、やっぱり秋なんだから、紅葉でも見に行かない?」
妻を相手にさりげなく誘導するのは無理だとすぐに気付いた私は、結局当初の予定通りストレートに提案した。
だが当然そうすると妻の反応は。
「いいよ、紅葉なんか別に。」
やはり。
エイリアンという言葉はもともと価値観の違う人とかを指すようであったらしいが、その意味では紅葉を別になんて言ってしまう妻は間違いなくエイリアンだ。
どうせ出先で食事は取るのだからやはり食べ物で釣った方がいいのだろうかと私は思い始めてしまい、なんだか自分がゴールを見失っていることを感じた。
言葉を探している私に妻がつぶやいた。
「そもそもみんなが紅葉を見たがる理由の一つが真っ赤になるからだと思うんだよね。」
「どういうこと?」
「恋の比喩ってこと。だからみんな紅葉を見ることによって恋の充足感をバーチャルに得ているんだよ。」
これについてはなるほどと思ってしまった。
だがそれと同時に不安もよぎった。
「それはバーチャルにも恋の充足感なんかいらないって君は思ってるの?」
思えばもう妻とは結婚して5年であり、付き合った期間も含めれば10年以上の付き合いになり、私たちはすでになんでも話せる仲であった。
私はそれに慣れすぎてしまって、妻との時間を真剣に作ってこなかったような気がした。
仮に作ったとしても今回のようにきわめて打算的なものであった。
妻は私のことなどとっくに冷めきっているのかもしれないと思った。
「うーん、恋のなんたらとかよりも今は子どもの方が欲しいかなと思ってる。」
妻が雑誌に目を伏せて言った。
相変わらずページには食べ物ばかりが並んでいる。
やはり妻に節制してもらうのは大変なことなのかもしれない。
でも、私には、いや私たちにはもう一つのゴールが見えてきた。
~・~・~・~・~
~感想~
オチはおおむね決めていたのですが、そこに向けてどう話を進めていけばいいのか迷いながら書いていました。
その意味では妻を説得しようとどうすればいいか考えながら話している夫は私自身でもあります。
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