102 / 174
第102回『アニメーション 涙ぐましい 時間割』
しおりを挟む
YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第102回『アニメーション 涙ぐましい 時間割』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約55分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
ぽこん。
頭に軽い衝撃が来て、机の上に白い小さな物が転がった。
つまんでみるとそれが消しゴムの破片だということがわかった。
先生が黒板に向かって書きだした隙に振り返ると、吉岡がにまにまとしながら俺を見ていた。
シャーペンを持った手がノートの上でゆらゆらとしていたが、きっと何も書いていないだろう。
どうやら授業中に暇を持て余した吉岡のいたずららしい。
俺は消しゴムの破片を吉岡に投げ返してやろうと思ったが、先生は生徒の方をなかなかそのチャンスがやってこなかった。
俺は注意深く授業を聞いた。
教科書の内容と照らし合わせながら、同時に先生の目線や手元の動きも追わなければならない。
先生のクセも考慮に入れる必要があるので、俺は今までの授業での先生の一挙手一同を思い出していた。
大事なのは先を読むこと。
「まあ、これはつまり──。」
そう言って先生は少し黒板の方を向いた。
チャンスかと思ったが、あの手の動きはチョークを持とうとする動きではないことが見て取れた。
今先生が説明していることは板書してあることと関連性があるので、そこを指で指すために振り向いたのだろう。
しかしその箇所は先生から近いことは近いが、先生の右側に書かれてある。
先生は左から振り向いていた。
それは右から振り向くよりもわずかにタイムロスがあるということだ。
時計は授業の残り時間が10分も残っていることを示していた。
この後も先生が長々と黒板に向かうときは2回はやってくるだろう。
しかし、それはいつだろう?
1分後?
5分後だったら遅すぎる。
吉岡は俺に消しゴムを投げたことに飽きて、別のことを始めている可能性がある。
ならば今しかない。
俺の体に戦慄が走った。
先生が黒板の右側の箇所を指摘するわずかな時間でできること。
振り返るのは無理だ。
体が前に戻りきる前に先生はこっちを向いて、気付かれてしまうだろう。
最適解はこれだ。
俺は全神経を集中して吉岡の席の位置を思い出し、教室を俯瞰の視点で眺めるイメージをして、俺と吉岡の距離と方角を測った。
脳裏に吉岡の姿がありありと浮かぶと、俺は前を向いたまま先ほど吉岡が俺に向かって投げた消しゴムの破片を上空に向かって音もなく投げた。
消しゴムが俺の手を離れると、俺は耳を澄ませた。
吉岡があっと言うような気配がした。
俺が消しゴムを投げたことに気付いたのだろう。
先生はあ、こっちかと黒板の右側を指さした。
まもなく先生はこっちを見るだろう。
今、消しゴムは教室の上空をゆるりとした放物線を描いているはずだ。
そして俺と吉岡の中間で頂点を通過した消しゴムは、落下に入っているはずだ。
当たれ。
俺は耳を澄ませた。
ぽとん。
その音は予定よりもずっと下方、床から聞こえた。
吉岡の笑いをこらえる声が続いた。
このように早く終われと言わんばかりに俺たちは授業中に涙ぐましい努力をした。
消しゴムを投げる、変顔をする、手紙を渡す、などなど。
時には1コマずつ交代でノートにへたくそな漫画を描いて、お互いに相手がさっき描いた漫画を読んで授業中に吹き出してしまうなんてこともあった。
5コマや6コマが時間割ではなくアニメーションだったら、一瞬で過ぎ去っていくだろう。
俺らはそれを願っていたのになぜだろう、二人でいたずらをし合えばし合うほど時間の流れはスローモーションのように感じられた。
これが俺らの青春の1コマだ。
~・~・~・~・~
~感想~
お題に関連することを前半に長々と書き、お題そのものは後半で消化するという構成にしてみました。
当初は青春の1コマという文章は段落の冒頭にあったのですが、コマという言葉が段落後半に集中していたので、流れに合わせて段落の最後に置きました。
締めとしても、これはいい感じになったとは思ってます。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第102回『アニメーション 涙ぐましい 時間割』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約55分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
ぽこん。
頭に軽い衝撃が来て、机の上に白い小さな物が転がった。
つまんでみるとそれが消しゴムの破片だということがわかった。
先生が黒板に向かって書きだした隙に振り返ると、吉岡がにまにまとしながら俺を見ていた。
シャーペンを持った手がノートの上でゆらゆらとしていたが、きっと何も書いていないだろう。
どうやら授業中に暇を持て余した吉岡のいたずららしい。
俺は消しゴムの破片を吉岡に投げ返してやろうと思ったが、先生は生徒の方をなかなかそのチャンスがやってこなかった。
俺は注意深く授業を聞いた。
教科書の内容と照らし合わせながら、同時に先生の目線や手元の動きも追わなければならない。
先生のクセも考慮に入れる必要があるので、俺は今までの授業での先生の一挙手一同を思い出していた。
大事なのは先を読むこと。
「まあ、これはつまり──。」
そう言って先生は少し黒板の方を向いた。
チャンスかと思ったが、あの手の動きはチョークを持とうとする動きではないことが見て取れた。
今先生が説明していることは板書してあることと関連性があるので、そこを指で指すために振り向いたのだろう。
しかしその箇所は先生から近いことは近いが、先生の右側に書かれてある。
先生は左から振り向いていた。
それは右から振り向くよりもわずかにタイムロスがあるということだ。
時計は授業の残り時間が10分も残っていることを示していた。
この後も先生が長々と黒板に向かうときは2回はやってくるだろう。
しかし、それはいつだろう?
1分後?
5分後だったら遅すぎる。
吉岡は俺に消しゴムを投げたことに飽きて、別のことを始めている可能性がある。
ならば今しかない。
俺の体に戦慄が走った。
先生が黒板の右側の箇所を指摘するわずかな時間でできること。
振り返るのは無理だ。
体が前に戻りきる前に先生はこっちを向いて、気付かれてしまうだろう。
最適解はこれだ。
俺は全神経を集中して吉岡の席の位置を思い出し、教室を俯瞰の視点で眺めるイメージをして、俺と吉岡の距離と方角を測った。
脳裏に吉岡の姿がありありと浮かぶと、俺は前を向いたまま先ほど吉岡が俺に向かって投げた消しゴムの破片を上空に向かって音もなく投げた。
消しゴムが俺の手を離れると、俺は耳を澄ませた。
吉岡があっと言うような気配がした。
俺が消しゴムを投げたことに気付いたのだろう。
先生はあ、こっちかと黒板の右側を指さした。
まもなく先生はこっちを見るだろう。
今、消しゴムは教室の上空をゆるりとした放物線を描いているはずだ。
そして俺と吉岡の中間で頂点を通過した消しゴムは、落下に入っているはずだ。
当たれ。
俺は耳を澄ませた。
ぽとん。
その音は予定よりもずっと下方、床から聞こえた。
吉岡の笑いをこらえる声が続いた。
このように早く終われと言わんばかりに俺たちは授業中に涙ぐましい努力をした。
消しゴムを投げる、変顔をする、手紙を渡す、などなど。
時には1コマずつ交代でノートにへたくそな漫画を描いて、お互いに相手がさっき描いた漫画を読んで授業中に吹き出してしまうなんてこともあった。
5コマや6コマが時間割ではなくアニメーションだったら、一瞬で過ぎ去っていくだろう。
俺らはそれを願っていたのになぜだろう、二人でいたずらをし合えばし合うほど時間の流れはスローモーションのように感じられた。
これが俺らの青春の1コマだ。
~・~・~・~・~
~感想~
お題に関連することを前半に長々と書き、お題そのものは後半で消化するという構成にしてみました。
当初は青春の1コマという文章は段落の冒頭にあったのですが、コマという言葉が段落後半に集中していたので、流れに合わせて段落の最後に置きました。
締めとしても、これはいい感じになったとは思ってます。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
24hポイントが0だった作品を削除し再投稿したらHOTランキング3位以内に入った話
アミ100
エッセイ・ノンフィクション
私の作品「乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる」がHOTランキング入り(最高で2位)しました、ありがとうございますm(_ _)m
この作品は2年ほど前に投稿したものを1度削除し、色々投稿の仕方を見直して再投稿したものです。
そこで、前回と投稿の仕方をどう変えたらどの程度変わったのかを記録しておこうと思います。
「投稿時、作品内容以外でどこに気を配るべきなのか」の参考になればと思いますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる