上 下
136 / 174

第136回『赤とんぼ 恥さらし 固体』

しおりを挟む
YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第136回『赤とんぼ 恥さらし 固体』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約38分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=1P_P-9hemSw

↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/

~・~・~・~・~

涙は乾けば残らないが、血は乾いてもぱりぱりとした固体となっていつまでも残る。
こんな当たり前のことをこれほど実感したことはなかった。

俺はスノーボーダーで、晴れてオリンピックの日本代表に選ばれた。
選手ならだれもが憧れる4年に一度のオリンピックだ。
しかし、厳しい国内選抜を勝ち抜いた喜びで、気分が舞い上がっていたのかもしれない。
空港を出発するときの、日本中からの盛大な見送りでいい気にもなっていたのだろう。
現地のホテルではしゃいでいるときに、足を滑らせ窓ガラスに突っ込んでしまったのだ。
全身に傷を負った俺はオリンピックに出場は不可能と医師に判断され、代わりに補欠の選手が出場することになった。
俺はというともうオリンピック会場に用はないということで、帰国の途に就いた。

日本に着いてからは、激しいバッシングの嵐だった。
当然だ。
オリンピック選手がはしゃいで大けがだなんて世界中の笑われ者だ。
恥さらしと言われても仕方なかった。
血だらけになってすぐに帰ってきたということで、とんぼ返りならぬ返りなんて言われたりもした。

誰もが俺は選手として終わったと思った。
これだけ非難されればメンタル面でぼろぼろになるからだ。
コーチも家族も俺にかける言葉がみつからないようだった。
夜、俺はパソコンでについて調べていた。
すると驚いた。
とは体色が赤いトンボの総称であって、という名前のトンボはいないそうだ。
そのあと俺は他のトンボの種類の一覧も眺めた。
「名前にキンがつくトンボはいないかな。あとはギン、ギンヤンマか。ギンヤンマ返り。ちょっとかっこいいけど、目指すのはやっぱりキンだよな。」
真っ赤な血は乾いてすでに俺から剥がれ落ちた。
俺は4年後に向けてスタートを切った。


~・~・~・~・~

~感想~
当初は赤とんぼ返りというダジャレをオチとして書き進めていたのですが、苦しすぎるなと思ったのでとっとと情報を出していき、むしろスノーボード選手がどのように反応したかというまじめな話に変更しました。

乾いた血で、悪名だとか立ち直りだとかを表現してみました。
しおりを挟む

処理中です...