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第150回『目安箱 家庭料理 大根おろし』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第150回『目安箱 家庭料理 大根おろし』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間3分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=DriPTyEobZ0
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「インターネットこそ現代の目安箱さ。」
松岡はジョッキのビールを一息で飲んだあと語り出した。
松岡は高校時代からの友人だった。
男子校だったので度を越したばかなことをして周りに迷惑をかけたりもした。
男子高校生同士だったので、思ったことはなんでもすぐに口にすることができた。
相手を傷つけてしまうこともあったがそれでも二人の関係は変わらず、今でこそ着るものは学ランから背広に変わったが、別々の大学に行き別々の会社に行ってもこうしてたまに会っては酒を呑んだ。
金曜の夜の居酒屋は俺たちと同じようにサラリーマンの客が多く、あちこちで仕事の愚痴が聞かれたり、休日の話が飛び交っていた。
「目安箱、みんなの意見を集めやすいってことか。」
「そうだ、だから俺は日ごろからネットで情報を収集してるんだ。」
松岡は昔から熱いやつで、仕事にも熱心で今まで仕事への不平や不満など聞いたこともなかった。
その視線はいつも前を向いていた。
「データのような客観的なものよりも、特に俺が欲しいのは生の意見だからSNSを中心にして最近は毎晩のように徘徊してるんだ。」
「ターゲットは?」
「もちろん20代の独身男性だ。」
松岡の目が輝いた。
注文したほっけがやってくると、俺は大根おろしにたっぷりとしょうゆをかけた。
これがほっけを頼んだときの俺たちの食べ方だった。
「それでわかってきたことはこれだ。今男性たちが求めているものは仕事から帰ったあとの家庭料理だ。」
「家庭料理、肉じゃがとか里芋の煮っころがしとかか。」
「そうだ。」
松岡はほっけをはしでつまみながらうなずいた。
「麺類は行列ができるほど人気だし、ファーストフードの人気も衰えない。最近はデリバリーサービスが身近になって店屋物が気軽におうちで食べられるようになってきている。みんなそれにとても満足してよく利用している。」
「じゃあ家庭料理を望んでないんじゃないの。」
俺はビールを飲みながら松岡の話に少し冷や水をかけてみた。
「逆だ。外食はおいしくて便利だけど、だからこそやっぱり食べたいのは家庭料理だという本音が聞けたんだ。」
これにはなるほどと思った。
便利でよく利用しているからこそ不満も出てくる。
そしてその意見の中にこそターゲット層のまだ掘り起こされていないニーズが隠されているのだろう。
目を向けるべきなのはユーザーの現在の不満よりも、現在満足しているユーザーの少し先の不満だったのだ。
「お前、本当に熱心だな。」
俺はジョッキを手にしたまま感心すると、松岡は照れもせずに笑った。
「おう。いい男をつかまえたいからな。」
そう言ってジョッキを持った松岡の指は絆創膏だらけだった。
松岡とは長い付き合いなので、彼が料理が苦手なのは知っている。
きっと毎日自炊をして、料理の腕を上げているのだろう。
俺は少しだけ胸の奥が傷んだ。
放課後のだれもいない教室でのあの日、松岡からの告白に俺がうなずいていれば彼も今頃こんな努力をしていなくても済んだのかもしれない。
男子高校生同士だったので、思ったことはなんでもすぐに口にすることができた。
しかし松岡の視線はいつも前を向いている。
~・~・~・~・~
~感想~
目安箱から考えていきました。
歴史上のそれにするわけにもいかないので、例えにするしかないだろうなと方向性は決めました。
また、家庭料理という言葉もあまりセリフとして一般的に使うものじゃなくどういう状況で使われるかと考えたら、レシピ本でした。
レシピはインターネットに載ってるなあと思ったとき、インターネットは目安箱の比喩として使えると思い、そこから話を考えていきました。
その結果なぜだかBLものになりました。
一応仕掛けとしてビジネスものだとミスリードさせるようにはしました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第150回『目安箱 家庭料理 大根おろし』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間3分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=DriPTyEobZ0
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「インターネットこそ現代の目安箱さ。」
松岡はジョッキのビールを一息で飲んだあと語り出した。
松岡は高校時代からの友人だった。
男子校だったので度を越したばかなことをして周りに迷惑をかけたりもした。
男子高校生同士だったので、思ったことはなんでもすぐに口にすることができた。
相手を傷つけてしまうこともあったがそれでも二人の関係は変わらず、今でこそ着るものは学ランから背広に変わったが、別々の大学に行き別々の会社に行ってもこうしてたまに会っては酒を呑んだ。
金曜の夜の居酒屋は俺たちと同じようにサラリーマンの客が多く、あちこちで仕事の愚痴が聞かれたり、休日の話が飛び交っていた。
「目安箱、みんなの意見を集めやすいってことか。」
「そうだ、だから俺は日ごろからネットで情報を収集してるんだ。」
松岡は昔から熱いやつで、仕事にも熱心で今まで仕事への不平や不満など聞いたこともなかった。
その視線はいつも前を向いていた。
「データのような客観的なものよりも、特に俺が欲しいのは生の意見だからSNSを中心にして最近は毎晩のように徘徊してるんだ。」
「ターゲットは?」
「もちろん20代の独身男性だ。」
松岡の目が輝いた。
注文したほっけがやってくると、俺は大根おろしにたっぷりとしょうゆをかけた。
これがほっけを頼んだときの俺たちの食べ方だった。
「それでわかってきたことはこれだ。今男性たちが求めているものは仕事から帰ったあとの家庭料理だ。」
「家庭料理、肉じゃがとか里芋の煮っころがしとかか。」
「そうだ。」
松岡はほっけをはしでつまみながらうなずいた。
「麺類は行列ができるほど人気だし、ファーストフードの人気も衰えない。最近はデリバリーサービスが身近になって店屋物が気軽におうちで食べられるようになってきている。みんなそれにとても満足してよく利用している。」
「じゃあ家庭料理を望んでないんじゃないの。」
俺はビールを飲みながら松岡の話に少し冷や水をかけてみた。
「逆だ。外食はおいしくて便利だけど、だからこそやっぱり食べたいのは家庭料理だという本音が聞けたんだ。」
これにはなるほどと思った。
便利でよく利用しているからこそ不満も出てくる。
そしてその意見の中にこそターゲット層のまだ掘り起こされていないニーズが隠されているのだろう。
目を向けるべきなのはユーザーの現在の不満よりも、現在満足しているユーザーの少し先の不満だったのだ。
「お前、本当に熱心だな。」
俺はジョッキを手にしたまま感心すると、松岡は照れもせずに笑った。
「おう。いい男をつかまえたいからな。」
そう言ってジョッキを持った松岡の指は絆創膏だらけだった。
松岡とは長い付き合いなので、彼が料理が苦手なのは知っている。
きっと毎日自炊をして、料理の腕を上げているのだろう。
俺は少しだけ胸の奥が傷んだ。
放課後のだれもいない教室でのあの日、松岡からの告白に俺がうなずいていれば彼も今頃こんな努力をしていなくても済んだのかもしれない。
男子高校生同士だったので、思ったことはなんでもすぐに口にすることができた。
しかし松岡の視線はいつも前を向いている。
~・~・~・~・~
~感想~
目安箱から考えていきました。
歴史上のそれにするわけにもいかないので、例えにするしかないだろうなと方向性は決めました。
また、家庭料理という言葉もあまりセリフとして一般的に使うものじゃなくどういう状況で使われるかと考えたら、レシピ本でした。
レシピはインターネットに載ってるなあと思ったとき、インターネットは目安箱の比喩として使えると思い、そこから話を考えていきました。
その結果なぜだかBLものになりました。
一応仕掛けとしてビジネスものだとミスリードさせるようにはしました。
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