【完結】Blue Blood 〜Murderous Melody〜【恋と瑠璃色の弾丸】

朔良

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参拝

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葵は後ろを確かめると、後を追ってくる人は居なかった。

(とりあえず、大丈夫かな?)

「葵のお陰で助かったよ。ありがとう。」

「そんなことないよ。誰も怪我が無くて良かった。」

そんな話をしていると、エリックが滞在しているホテルに着いた。
ロビーを見渡すと、一番奥でエリックがコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。

「エリック。」

「アオイ、ツカサおはよう。いきなり呼び出して悪かったね?」

「おはよう。それで?行きたい所って?」

「それより、何か二人共疲れてない?ちょっとゆっくりしろよ。何か飲み物でも頼むよ。」

「・・・。」

そう言うと、ボーイを呼んだ。
葵と司の前に紅茶が運ばれてきた。

「・・・。ここで、お茶する為に朝早くから呼び出したわけ?」

「そうじゃない。本当に行きたい所があるんだ。」




三人でやって来たのは、新宿にある『花園神社』だった。
境内に入ると、新宿とは思えない静寂さだ。

「ここに、来たかったの?」

「・・・。ああ。」

「知らなかったわ、エリックにこんな信仰心があったなんて。」

「・・・。」

大鳥居をくぐり、三人で本殿を参拝する。
参拝が終わると、エリックは迷う事なく境内にある『威徳稲荷神社』へ向かった。
赤い鳥居が幾つも連なっている先に社殿がある。
鳥居をくぐり社殿の前で手を合わせていた。

「ここは、縁結びの神社だよ。」

司が葵に教えてくれる。

「そうなの?」

「ああ、花園神社には芸能の神社もあるんだけどな?」

司の言葉を聞きながらエリックの背中を見つめた。
その背中は、誰かと結ばれたいと言うよりは誰かの幸せを願っている様に葵には感じた。
随分と長い間手を合わせていたエリックが鳥居から出てきた。

「・・・。気はすんだ?」

「ああ。」

「そう?エリックの願いが叶うと良いね?」

葵はエリックを見上げた。

「どうだろうな・・・?」

エリックは酷く悲しそうな表情を浮かべて俯いた。

「エリック。他に行きたい所は無いのか?」

「そうだな。後はツカサに任せるよ。」

顔を上げたエリックはもう笑顔だった。
その後、三人は司の案内で都内の名所を回った。
ホテルに戻ったのは、午後8時頃だった。

「今日付き合ってくれたお礼にディナーでもどうかな?」

「別に気にする必要は無いよ?私達もそれなりに楽しんだし?」

「それじゃ、俺の気がすまないんだ。」

葵と司は顔を見合わせた。

「・・・。わかったわ。司もいいでしょ?」

「ああ。」

三人でホテルの最上階のレストランに向かった。
テーブルに着くと、エリックがコースメニューを三人分頼んだ。

「今日は本当にありがとう。」

シャンパンで乾杯をする。
程なくして、前菜の料理が運ばれてきた。
その時、葵のスマホのバイブレーションが鳴る。

「ごめん、電話だ。二人は先に食べてて?」

そう言い残すとレストランを出ていってしまう。
二人残された、エリックと司は前菜の料理を黙々と食べるが先にエリックが口を開いた。

「ツカサはアオイの仕事の事は知ってるよね?」

『仕事』とは裏の仕事の事だろう。司は一瞬逡巡する。

「ああ。知ってる。今は俺がパートナーだ。」

「パートナー?本当にアオイにとってパートナーって言えるのかな?」

「どういう意味?」

「アオイに守られている様じゃあパートナーとは言えないんじゃないか?」

「・・・。」

「悪いけど、ツカサの事調べさせてもらったよ?警察庁に居たんだって?」

「過去の話だ。」

「今からでも遅くない。君は君の居るべき場所に戻った方が良いんじゃないかな?」

「俺の居るべき場所は葵の側だよ。そこ以外に居るべき場所は無い。」

「・・・。それが、アオイの重荷になってもかい?今のツカサじゃ彼女を守るどころかアオイに守られてる。それは、ツカサが一番よく解ってるんじゃないか?」

エリックの言葉は司の胸を射ぬいた。確かに、葵を守る所か守られている。今朝の事故の時だってそうだった。
葵の咄嗟の判断が無ければ、間違いなく巻き込まれていた。

「それでも、俺は葵の側に居たい。」

司は目を逸らす事なくエリックに言った。

「アオイのいる世界はそんな甘い考えが通用する世界じゃない。」

「・・・。何が言いたいんですか?」

「ツカサ。君はアオイのパートナーを辞めるべきだ。取り返しがつかなくなる前に。キミがパートナーでいる限りアオイはいつか必ず命を落とす。必ずね・・・。」

エリックははっきりと、残酷な言葉を司に向けた。

「それは・・・。」

そこに、電話を終えた葵が戻ってきた。

「ごめん。・・・。どうしたの?二人共。」

二人の間の空気を察した葵が司に聞いてきた。

「いや。何でもないよ。」

何とか取り繕うが、内心では酷く動揺していた。
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