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賭け
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夜。
葵のスマホが鳴る。
「・・・。もしもし。」
『エリックだ。アオイ、暇なんだよ~。カジノでも行かない?』
「日本ではカジノは違法よ。」
『でも、アオイなら知ってるだろ?連れていってくれよ?』
「・・・。わかったわ。後で行く。」
『そう?ありがとう。じゃあ、待ってる。』
昼間の銃撃の後、司と別れて自宅に居た葵にエリックからの誘いだった。
葵は電話を切るとリビングを見回した。
テーブルの裏側に手を添える。何かを探すようにグルリとテーブルの回りを廻ると手を止めた。
葵の手には盗聴機が握られていた。
その盗聴機を握り潰すと、テーブルの上に落とす。
「・・・。」
そのまま、マンションを後にした。
エリックの部屋のベルを押すと、ドアが開いた。
「待ってたよ、アオイ。」
「お待たせ。じゃあ、行こうか?」
「ああ。」
エリックと二人で訪れたのは、路地裏の人気の無いビルだった。
エレベーターで最上階の七階まで行くと重厚な扉がある。
その扉の前には、屈強な男が一人立っていた。
葵を見ると直ぐ様頭を下げる。
「世良様、お久しぶりです。今日はお連れ様とご一緒ですか?」
エリックを一瞥する。
「ええ。連れがどうしてもカジノで遊びたいみたいなの。良いかしら?」
「勿論です。どうぞ。」
扉に付いているセキュリティーを解除すると中に通してくれた。
扉の中は日本とは思えない空間が広がっている。
部屋の中央には噴水があり、ルーレット台やカード台があって沢山の客が賭に興じていた。
部屋の奥にはバーカウンターがある。
「へぇー?なかなか良いね?アオイは何がしたい?」
「私はいいわ。エリックがカジノに行きたいって言ったんでしょ?」
「良いじゃないか?たまには、ハメを外したって。」
エリックはバーカウンターで飲み物を受け取ると、カード台に座った。
葵は、酒を受け取り噴水近くのテーブルに着くとエリックを見つめた。
「・・・・。」
暫くカード台で遊んでいたエリックが葵の元にやってきた。
「どうだった?」
「ダメだ。負けたよ。」
「そう。残念だったわね?もう帰る?」
「何言ってるんだ?これからだろ?アオイも来いよ!」
エリックは葵の腕を掴むとルーレット台に向かった。
「アオイも賭けろよ?俺が奢るから。」
「私は良いわよ。」
「そう言うなって!」
エリックからチップを渡される。
すると、ディーラーがルーレットを回した。
他の客やエリックが次々とチップを賭けていく。
「アオイも賭けろよ?」
エリックに促される。
葵はディーラーの顔を見てルーレットを見つめた。
「ルージュの18に全部。」
「おいおい、いきなり全部かよ!」
エリックが呟く。
客達はルーレットを見つめると、ルージュの18にルーレットボールが入る。
「ルージュの18です。」
ディーラーが告げると、客は残念そうな声を上げた。
「凄いじゃないか?」
エリックは興奮気味に葵に言った。
「ほら、次だ!!」
「ノワールの14に全部。」
またもや、ルーレットボールはノワールの14に入る。
その後も葵の一人勝ちだった。
他の客がざわつきはじめた。
「エリック。もう良いでしょ?帰りましょ。」
「・・・。ああ。そうだな。」
二人はカジノを出るとエリックのホテルに戻ってきた。
「相変わらずの強運だな、アオイは。」
「別に・・・。はい、これ。」
換金したお金をエリックに渡す。
「何言ってる。これはアオイが稼いだ金だろ?」
「元はエリックのお金よ。」
「・・・。」
エリックはアオイを見つめた。
「なぁ?アオイ?お前は何で日本に居るんだ?」
「何でって・・・。日本は私の故郷よ?そこに居るのはおかしいかしら?」
「アメリカにだってアオイの居場所は有るだろ?なぜ、日本に拘る?何か理由があるのか?・・・例えば大切な人間が居るとか?」
エリックの綺麗なグリーンの瞳が葵を捕らえた。
「・・・ご想像にお任せするわ?」
「ふっ。図星か・・。でも、その大切な人を危険に晒して平気なのか?」
エリックの言葉は葵の心に突き刺さった。
「私が守るわ。」
強い意思を持ってエリックを見つめ返した。
「その考えは甘いんじゃないのか?アオイの居る世界はそんな甘い考えが通用する世界じゃない。そんな事ではいつか命を落とすぞ?」
「解ってる。でも、私も大切な人も必ず守るわ。」
「そんなに、そいつは大切なのか・・?」
葵は穏やかな笑顔を浮かべた。
「大切よ。何よりも。」
「っ・・。」
エリックの顔が一瞬歪んだ。
その頃、エリックに呼び出された司が部屋を訪れようとしていた。
葵のスマホが鳴る。
「・・・。もしもし。」
『エリックだ。アオイ、暇なんだよ~。カジノでも行かない?』
「日本ではカジノは違法よ。」
『でも、アオイなら知ってるだろ?連れていってくれよ?』
「・・・。わかったわ。後で行く。」
『そう?ありがとう。じゃあ、待ってる。』
昼間の銃撃の後、司と別れて自宅に居た葵にエリックからの誘いだった。
葵は電話を切るとリビングを見回した。
テーブルの裏側に手を添える。何かを探すようにグルリとテーブルの回りを廻ると手を止めた。
葵の手には盗聴機が握られていた。
その盗聴機を握り潰すと、テーブルの上に落とす。
「・・・。」
そのまま、マンションを後にした。
エリックの部屋のベルを押すと、ドアが開いた。
「待ってたよ、アオイ。」
「お待たせ。じゃあ、行こうか?」
「ああ。」
エリックと二人で訪れたのは、路地裏の人気の無いビルだった。
エレベーターで最上階の七階まで行くと重厚な扉がある。
その扉の前には、屈強な男が一人立っていた。
葵を見ると直ぐ様頭を下げる。
「世良様、お久しぶりです。今日はお連れ様とご一緒ですか?」
エリックを一瞥する。
「ええ。連れがどうしてもカジノで遊びたいみたいなの。良いかしら?」
「勿論です。どうぞ。」
扉に付いているセキュリティーを解除すると中に通してくれた。
扉の中は日本とは思えない空間が広がっている。
部屋の中央には噴水があり、ルーレット台やカード台があって沢山の客が賭に興じていた。
部屋の奥にはバーカウンターがある。
「へぇー?なかなか良いね?アオイは何がしたい?」
「私はいいわ。エリックがカジノに行きたいって言ったんでしょ?」
「良いじゃないか?たまには、ハメを外したって。」
エリックはバーカウンターで飲み物を受け取ると、カード台に座った。
葵は、酒を受け取り噴水近くのテーブルに着くとエリックを見つめた。
「・・・・。」
暫くカード台で遊んでいたエリックが葵の元にやってきた。
「どうだった?」
「ダメだ。負けたよ。」
「そう。残念だったわね?もう帰る?」
「何言ってるんだ?これからだろ?アオイも来いよ!」
エリックは葵の腕を掴むとルーレット台に向かった。
「アオイも賭けろよ?俺が奢るから。」
「私は良いわよ。」
「そう言うなって!」
エリックからチップを渡される。
すると、ディーラーがルーレットを回した。
他の客やエリックが次々とチップを賭けていく。
「アオイも賭けろよ?」
エリックに促される。
葵はディーラーの顔を見てルーレットを見つめた。
「ルージュの18に全部。」
「おいおい、いきなり全部かよ!」
エリックが呟く。
客達はルーレットを見つめると、ルージュの18にルーレットボールが入る。
「ルージュの18です。」
ディーラーが告げると、客は残念そうな声を上げた。
「凄いじゃないか?」
エリックは興奮気味に葵に言った。
「ほら、次だ!!」
「ノワールの14に全部。」
またもや、ルーレットボールはノワールの14に入る。
その後も葵の一人勝ちだった。
他の客がざわつきはじめた。
「エリック。もう良いでしょ?帰りましょ。」
「・・・。ああ。そうだな。」
二人はカジノを出るとエリックのホテルに戻ってきた。
「相変わらずの強運だな、アオイは。」
「別に・・・。はい、これ。」
換金したお金をエリックに渡す。
「何言ってる。これはアオイが稼いだ金だろ?」
「元はエリックのお金よ。」
「・・・。」
エリックはアオイを見つめた。
「なぁ?アオイ?お前は何で日本に居るんだ?」
「何でって・・・。日本は私の故郷よ?そこに居るのはおかしいかしら?」
「アメリカにだってアオイの居場所は有るだろ?なぜ、日本に拘る?何か理由があるのか?・・・例えば大切な人間が居るとか?」
エリックの綺麗なグリーンの瞳が葵を捕らえた。
「・・・ご想像にお任せするわ?」
「ふっ。図星か・・。でも、その大切な人を危険に晒して平気なのか?」
エリックの言葉は葵の心に突き刺さった。
「私が守るわ。」
強い意思を持ってエリックを見つめ返した。
「その考えは甘いんじゃないのか?アオイの居る世界はそんな甘い考えが通用する世界じゃない。そんな事ではいつか命を落とすぞ?」
「解ってる。でも、私も大切な人も必ず守るわ。」
「そんなに、そいつは大切なのか・・?」
葵は穏やかな笑顔を浮かべた。
「大切よ。何よりも。」
「っ・・。」
エリックの顔が一瞬歪んだ。
その頃、エリックに呼び出された司が部屋を訪れようとしていた。
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