5 / 25
賭け
しおりを挟む
夜。
葵のスマホが鳴る。
「・・・。もしもし。」
『エリックだ。アオイ、暇なんだよ~。カジノでも行かない?』
「日本ではカジノは違法よ。」
『でも、アオイなら知ってるだろ?連れていってくれよ?』
「・・・。わかったわ。後で行く。」
『そう?ありがとう。じゃあ、待ってる。』
昼間の銃撃の後、司と別れて自宅に居た葵にエリックからの誘いだった。
葵は電話を切るとリビングを見回した。
テーブルの裏側に手を添える。何かを探すようにグルリとテーブルの回りを廻ると手を止めた。
葵の手には盗聴機が握られていた。
その盗聴機を握り潰すと、テーブルの上に落とす。
「・・・。」
そのまま、マンションを後にした。
エリックの部屋のベルを押すと、ドアが開いた。
「待ってたよ、アオイ。」
「お待たせ。じゃあ、行こうか?」
「ああ。」
エリックと二人で訪れたのは、路地裏の人気の無いビルだった。
エレベーターで最上階の七階まで行くと重厚な扉がある。
その扉の前には、屈強な男が一人立っていた。
葵を見ると直ぐ様頭を下げる。
「世良様、お久しぶりです。今日はお連れ様とご一緒ですか?」
エリックを一瞥する。
「ええ。連れがどうしてもカジノで遊びたいみたいなの。良いかしら?」
「勿論です。どうぞ。」
扉に付いているセキュリティーを解除すると中に通してくれた。
扉の中は日本とは思えない空間が広がっている。
部屋の中央には噴水があり、ルーレット台やカード台があって沢山の客が賭に興じていた。
部屋の奥にはバーカウンターがある。
「へぇー?なかなか良いね?アオイは何がしたい?」
「私はいいわ。エリックがカジノに行きたいって言ったんでしょ?」
「良いじゃないか?たまには、ハメを外したって。」
エリックはバーカウンターで飲み物を受け取ると、カード台に座った。
葵は、酒を受け取り噴水近くのテーブルに着くとエリックを見つめた。
「・・・・。」
暫くカード台で遊んでいたエリックが葵の元にやってきた。
「どうだった?」
「ダメだ。負けたよ。」
「そう。残念だったわね?もう帰る?」
「何言ってるんだ?これからだろ?アオイも来いよ!」
エリックは葵の腕を掴むとルーレット台に向かった。
「アオイも賭けろよ?俺が奢るから。」
「私は良いわよ。」
「そう言うなって!」
エリックからチップを渡される。
すると、ディーラーがルーレットを回した。
他の客やエリックが次々とチップを賭けていく。
「アオイも賭けろよ?」
エリックに促される。
葵はディーラーの顔を見てルーレットを見つめた。
「ルージュの18に全部。」
「おいおい、いきなり全部かよ!」
エリックが呟く。
客達はルーレットを見つめると、ルージュの18にルーレットボールが入る。
「ルージュの18です。」
ディーラーが告げると、客は残念そうな声を上げた。
「凄いじゃないか?」
エリックは興奮気味に葵に言った。
「ほら、次だ!!」
「ノワールの14に全部。」
またもや、ルーレットボールはノワールの14に入る。
その後も葵の一人勝ちだった。
他の客がざわつきはじめた。
「エリック。もう良いでしょ?帰りましょ。」
「・・・。ああ。そうだな。」
二人はカジノを出るとエリックのホテルに戻ってきた。
「相変わらずの強運だな、アオイは。」
「別に・・・。はい、これ。」
換金したお金をエリックに渡す。
「何言ってる。これはアオイが稼いだ金だろ?」
「元はエリックのお金よ。」
「・・・。」
エリックはアオイを見つめた。
「なぁ?アオイ?お前は何で日本に居るんだ?」
「何でって・・・。日本は私の故郷よ?そこに居るのはおかしいかしら?」
「アメリカにだってアオイの居場所は有るだろ?なぜ、日本に拘る?何か理由があるのか?・・・例えば大切な人間が居るとか?」
エリックの綺麗なグリーンの瞳が葵を捕らえた。
「・・・ご想像にお任せするわ?」
「ふっ。図星か・・。でも、その大切な人を危険に晒して平気なのか?」
エリックの言葉は葵の心に突き刺さった。
「私が守るわ。」
強い意思を持ってエリックを見つめ返した。
「その考えは甘いんじゃないのか?アオイの居る世界はそんな甘い考えが通用する世界じゃない。そんな事ではいつか命を落とすぞ?」
「解ってる。でも、私も大切な人も必ず守るわ。」
「そんなに、そいつは大切なのか・・?」
葵は穏やかな笑顔を浮かべた。
「大切よ。何よりも。」
「っ・・。」
エリックの顔が一瞬歪んだ。
その頃、エリックに呼び出された司が部屋を訪れようとしていた。
葵のスマホが鳴る。
「・・・。もしもし。」
『エリックだ。アオイ、暇なんだよ~。カジノでも行かない?』
「日本ではカジノは違法よ。」
『でも、アオイなら知ってるだろ?連れていってくれよ?』
「・・・。わかったわ。後で行く。」
『そう?ありがとう。じゃあ、待ってる。』
昼間の銃撃の後、司と別れて自宅に居た葵にエリックからの誘いだった。
葵は電話を切るとリビングを見回した。
テーブルの裏側に手を添える。何かを探すようにグルリとテーブルの回りを廻ると手を止めた。
葵の手には盗聴機が握られていた。
その盗聴機を握り潰すと、テーブルの上に落とす。
「・・・。」
そのまま、マンションを後にした。
エリックの部屋のベルを押すと、ドアが開いた。
「待ってたよ、アオイ。」
「お待たせ。じゃあ、行こうか?」
「ああ。」
エリックと二人で訪れたのは、路地裏の人気の無いビルだった。
エレベーターで最上階の七階まで行くと重厚な扉がある。
その扉の前には、屈強な男が一人立っていた。
葵を見ると直ぐ様頭を下げる。
「世良様、お久しぶりです。今日はお連れ様とご一緒ですか?」
エリックを一瞥する。
「ええ。連れがどうしてもカジノで遊びたいみたいなの。良いかしら?」
「勿論です。どうぞ。」
扉に付いているセキュリティーを解除すると中に通してくれた。
扉の中は日本とは思えない空間が広がっている。
部屋の中央には噴水があり、ルーレット台やカード台があって沢山の客が賭に興じていた。
部屋の奥にはバーカウンターがある。
「へぇー?なかなか良いね?アオイは何がしたい?」
「私はいいわ。エリックがカジノに行きたいって言ったんでしょ?」
「良いじゃないか?たまには、ハメを外したって。」
エリックはバーカウンターで飲み物を受け取ると、カード台に座った。
葵は、酒を受け取り噴水近くのテーブルに着くとエリックを見つめた。
「・・・・。」
暫くカード台で遊んでいたエリックが葵の元にやってきた。
「どうだった?」
「ダメだ。負けたよ。」
「そう。残念だったわね?もう帰る?」
「何言ってるんだ?これからだろ?アオイも来いよ!」
エリックは葵の腕を掴むとルーレット台に向かった。
「アオイも賭けろよ?俺が奢るから。」
「私は良いわよ。」
「そう言うなって!」
エリックからチップを渡される。
すると、ディーラーがルーレットを回した。
他の客やエリックが次々とチップを賭けていく。
「アオイも賭けろよ?」
エリックに促される。
葵はディーラーの顔を見てルーレットを見つめた。
「ルージュの18に全部。」
「おいおい、いきなり全部かよ!」
エリックが呟く。
客達はルーレットを見つめると、ルージュの18にルーレットボールが入る。
「ルージュの18です。」
ディーラーが告げると、客は残念そうな声を上げた。
「凄いじゃないか?」
エリックは興奮気味に葵に言った。
「ほら、次だ!!」
「ノワールの14に全部。」
またもや、ルーレットボールはノワールの14に入る。
その後も葵の一人勝ちだった。
他の客がざわつきはじめた。
「エリック。もう良いでしょ?帰りましょ。」
「・・・。ああ。そうだな。」
二人はカジノを出るとエリックのホテルに戻ってきた。
「相変わらずの強運だな、アオイは。」
「別に・・・。はい、これ。」
換金したお金をエリックに渡す。
「何言ってる。これはアオイが稼いだ金だろ?」
「元はエリックのお金よ。」
「・・・。」
エリックはアオイを見つめた。
「なぁ?アオイ?お前は何で日本に居るんだ?」
「何でって・・・。日本は私の故郷よ?そこに居るのはおかしいかしら?」
「アメリカにだってアオイの居場所は有るだろ?なぜ、日本に拘る?何か理由があるのか?・・・例えば大切な人間が居るとか?」
エリックの綺麗なグリーンの瞳が葵を捕らえた。
「・・・ご想像にお任せするわ?」
「ふっ。図星か・・。でも、その大切な人を危険に晒して平気なのか?」
エリックの言葉は葵の心に突き刺さった。
「私が守るわ。」
強い意思を持ってエリックを見つめ返した。
「その考えは甘いんじゃないのか?アオイの居る世界はそんな甘い考えが通用する世界じゃない。そんな事ではいつか命を落とすぞ?」
「解ってる。でも、私も大切な人も必ず守るわ。」
「そんなに、そいつは大切なのか・・?」
葵は穏やかな笑顔を浮かべた。
「大切よ。何よりも。」
「っ・・。」
エリックの顔が一瞬歪んだ。
その頃、エリックに呼び出された司が部屋を訪れようとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる