【完結】Blue Blood 〜Murderous Melody〜【恋と瑠璃色の弾丸】

過去

「ツカサに話があるからちょっと来てくれ。鍵は開けておくから勝手に入ってきてくれて大丈夫だ。」

そうエリックから呼び出された。

（話って、あの事・・だよな？）

そんな事を思っているとエリックの部屋に着く。
言っていた通り部屋の鍵は開いていた。
入口のドアを開けると中から話し声が聞こえた。

（葵？）

室内へのドアが少し開いていた。





「もう、気がすんだでしょ？今夜は帰るわ。」

葵は立ち上がると帰ろうとする。

「アオイっ！」

エリックに腕を掴まれた。

「エリック？」

「俺が日本に来た本当の理由はアオイを迎えに来たんだ。一緒にアメリカに帰ろう？」

エリックの言葉に葵は目を瞬かせた。

「それは・・。」

「出来ない？ツカサが居るから？」

「・・・ごめん、帰るね？」

「帰さないよ？」

「エリッ・・んっ」

エリックは葵の腰を抱き寄せると唇を塞いだ。
深い口づけを交わす。

「はぁ・・エリック、駄目。」

「一緒に帰るって言うまで帰さない。」

「あっ・・。」

葵の首筋に顔を埋めた。

「アオイが好きなんだ。一緒に帰ろう？」

耳元で囁かれる。

「っ・・・。」

その時、ドアが開いて司が入ってきた。

「つかさ？」

葵の手を引くと、エリックから引き離す。

「ツカサ？人の恋路を邪魔すると馬に蹴られるよ？」

軽い口振りのエリックを睨んだ。

「嫌がってるだろ？」

「そんな怖い顔しないでよ？」

「帰るぞ。」

葵の手を引いて部屋を出ようとする。

「ツカサはアオイがアメリカに居たとき何て呼ばれてたか知ってる？」

試すような声色に苛立ちが募る。

「知らないし、知る必要無いだろ？」

「知ってた方が良いと思うよ？アオイはねBlue Bloodブルー ブラッドって呼ばれてたんだ。」

「エリック！！」

葵が止める間も無くエリックは続けた。

「冷酷で仕事は完璧。アオイに狙われたら死んだも同然。まるで青い血が流れているんじゃないかって誰かがそう呼び出したんだ。今のアオイからは想像出来ないだろ？だけど俺は何度も見てきた。あのアオイの冷たい表情を・・」

「もうやめてくれっ！過去は過去だ。今の葵は違う！」

「そうかな？ツカサが知らないだけなんじゃないのか？アオイの本当の姿を。それでもアオイの側に居たいと思うかなぁ？」

司はエリックを一瞥するとそのまま部屋を出ていった。
一人部屋に残されたエリックはため息を吐いてソファーに座った。

「離れた方が良いんだ・・・。」

呟かれた言葉はまるで自分に言い聞かせているようだった。




「司？」

「・・・。」

「つかさ！」

足を止めると、葵を見つめる。

「あんな話、俺は気にしない。俺の知ってる葵は今の葵だ。だからこれからも側に居る。」

「・・・。エリックの言った事は否定しない。確かにアメリカに居た頃そう呼ばれてた。」

「葵。」

「今もね心が凍てつく事がある。昔の自分に戻りそうな、、、」

「あおいっ！もういいんだ。」

司は葵を抱き寄せた。

「っ・・・。今日は送ってくれなくて大丈夫だから。」

「一人になんて出来るわけないだろっ！」

葵の手を握ると、タクシーでマンションに戻った。
ソファーに座らせるとキッチンでコーヒーを入れてきた。

「甘くしてある。少し落ち着け？」

「ありがと・・。」

司は葵の隣に座ると手を握った。
司の体温が手から身体に染み渡るようでホッとした。

「ごめんね？」

「何で謝るんだ？」

「嫌な思いさせたかと思って。」

「そんな事ない。大丈夫だよ？」

「でも、聞いてて気持ちのいい事じゃ無いでしょ？」

(それに、本当の私の過去を知ったら・・・。今まで通りじゃ居られなくなる・・よね。)

目を伏せて黙り込んでしまった。

「葵？」

司は葵の頬に手を伸ばした。
その時、玄関のドアが派手に開く音がした。