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レオンの思い
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「・・・。」
葵はもう一度スマホを取り出すと電話を掛けた。
「佐々木さん?すみません、何度も。ちょっと調べて欲しいことがあるんですが・・・。」
電話を終え、リビングに戻るとレオンがまだテーブルに居た。
葵はレオンの隣に座ると、瑞希が朝食を出してくれた。
「ありがとう瑞希。」
「冷めないうちにどうぞ葵さん。」
コーヒーを飲んでいると黙っていたレオンが小声で葵に話しかけた。
「アオイ。食事が終わったら俺の部屋に来てくれる?話があるんだ。」
「・・・わかった。」
葵の返事を聞くと席を立ちリビングを出ていった。
レオンの居た席を見ると、朝食には殆ど手がつけられていなかった。
「レオン居る?葵だけど。」
部屋をノックするとドアが開いた。
「アオイ。どうぞ。」
室内に入るとレオンはベッドに腰掛けた。葵もレオンの隣に座る。
長い沈黙の後レオンが重い口を開いた。
「昨日の二人はどうなったの?」
「・・・。今アルミナ国に強制送還の手続きをしてる。」
「そう・・。何か聞き出せた?」
「軍の人間だってこと位かな。末端の人間みたいで何も知らないみたい。」
「そっか。」
「・・・・。」
「何も聞かないの?」
「最初に言ったけど話せるようになったら話してくれたらいいよ。私はレオンを守るだけだから。」
「アオイ・・・。」
レオンは目を伏せて何かを考え込んでいた。
「アオイには聞いてほしい。始まりは、半年前王位継承の話が出てからなんだ。現国王の父の体調が優れなくてね、継承順位的には俺が次期国王になる事になる。だけど、その頃から俺の回りでおかしな事が多くなってね。」
「おかしな事?」
「最初はただの偶然だと思ったんだ。だけど段々とエスカレートしていって暴走車が突っ込んできたり狙撃されたり・・・。そして、とうとう2ヶ月前、公務中に暴漢に襲われそうになった。その時俺を庇って従者が一人亡くなったんだ。彼は俺が幼い頃から身の回りの事や話し相手になってくれてた大事な人だった。」
「レオン・・・。」
「暴漢は逃走したがすぐに逮捕された。だけど薬物中毒者が錯乱しての犯行という事だった。でも、俺は見たんだ、あの時の犯人の目を!あれは薬物中毒者なんかじゃない。正気の人間の目だった!なのに、何で薬物中毒なんて・・。」
レオンは悔しそうに言った。
「・・おそらく、襲った時は正常だったんでしょうね。逮捕される前に自分で薬物を打ったんだと思う。」
「そんなっ!!・・・王族なんて華やかな世界だと思うでしょう?でもね、アルミナの王族は不慮の事故や原因不明の病などで亡くなる人が少なくない。恐らく何らかの力が働いているんだと思う。王族に巣くう魑魅魍魎が居るんですよ。俺はいつも守られてばかりで、本当は王位なんてどうでも良い。俺は俺の大切な人達と平穏に暮らしたいんだ!!」
「レオン。それは違うんじゃない?貴方は大切に大切に育てられた。王位継承権があるからじゃない。ちゃんと人として回りの人達が接してくれたんじゃない?レオンを庇った人も瑞希だって皆がレオンの事が大切なんだよ?確かに、大切な人を亡くしたのは辛い事だけど・・・だけど、その人の為にも強くならなきゃいけないと思わない?貴方には出来る事がまだまだあるはずだよ。」
「アオイは強いな。アオイも大切な人を亡くしたばかりだろう?俺もアオイのように強くなりたいよ。」
レオンの金色の瞳が葵を見つめた。
「私は強くなんてない。竜が死んでから何も手につかなくなった。死んだような日々をずっと送ってた。生きているのが辛かった。そんな時よレオンからの依頼が来たのは。竜が請け負ってた仕事をすることで何かが変わるかもしれないそう思ったの。」
「アオイが生きていてくれてよかったよ。俺も変われるかな?」
「ふふっ、もう変わってるんじゃない?レオンはきっと素晴らしい国王になれるわ。そしてアルミナ国の王族に巣くう魑魅魍魎を払うの。これ以上犠牲者を出さない為に、貴方にはそれが出来るはずよ?」
「アオイ・・・。ありがとう、もう俺は俺のすべき事から逃げないよ。」
「うん。」
葵は優しく微笑んだ。
葵はもう一度スマホを取り出すと電話を掛けた。
「佐々木さん?すみません、何度も。ちょっと調べて欲しいことがあるんですが・・・。」
電話を終え、リビングに戻るとレオンがまだテーブルに居た。
葵はレオンの隣に座ると、瑞希が朝食を出してくれた。
「ありがとう瑞希。」
「冷めないうちにどうぞ葵さん。」
コーヒーを飲んでいると黙っていたレオンが小声で葵に話しかけた。
「アオイ。食事が終わったら俺の部屋に来てくれる?話があるんだ。」
「・・・わかった。」
葵の返事を聞くと席を立ちリビングを出ていった。
レオンの居た席を見ると、朝食には殆ど手がつけられていなかった。
「レオン居る?葵だけど。」
部屋をノックするとドアが開いた。
「アオイ。どうぞ。」
室内に入るとレオンはベッドに腰掛けた。葵もレオンの隣に座る。
長い沈黙の後レオンが重い口を開いた。
「昨日の二人はどうなったの?」
「・・・。今アルミナ国に強制送還の手続きをしてる。」
「そう・・。何か聞き出せた?」
「軍の人間だってこと位かな。末端の人間みたいで何も知らないみたい。」
「そっか。」
「・・・・。」
「何も聞かないの?」
「最初に言ったけど話せるようになったら話してくれたらいいよ。私はレオンを守るだけだから。」
「アオイ・・・。」
レオンは目を伏せて何かを考え込んでいた。
「アオイには聞いてほしい。始まりは、半年前王位継承の話が出てからなんだ。現国王の父の体調が優れなくてね、継承順位的には俺が次期国王になる事になる。だけど、その頃から俺の回りでおかしな事が多くなってね。」
「おかしな事?」
「最初はただの偶然だと思ったんだ。だけど段々とエスカレートしていって暴走車が突っ込んできたり狙撃されたり・・・。そして、とうとう2ヶ月前、公務中に暴漢に襲われそうになった。その時俺を庇って従者が一人亡くなったんだ。彼は俺が幼い頃から身の回りの事や話し相手になってくれてた大事な人だった。」
「レオン・・・。」
「暴漢は逃走したがすぐに逮捕された。だけど薬物中毒者が錯乱しての犯行という事だった。でも、俺は見たんだ、あの時の犯人の目を!あれは薬物中毒者なんかじゃない。正気の人間の目だった!なのに、何で薬物中毒なんて・・。」
レオンは悔しそうに言った。
「・・おそらく、襲った時は正常だったんでしょうね。逮捕される前に自分で薬物を打ったんだと思う。」
「そんなっ!!・・・王族なんて華やかな世界だと思うでしょう?でもね、アルミナの王族は不慮の事故や原因不明の病などで亡くなる人が少なくない。恐らく何らかの力が働いているんだと思う。王族に巣くう魑魅魍魎が居るんですよ。俺はいつも守られてばかりで、本当は王位なんてどうでも良い。俺は俺の大切な人達と平穏に暮らしたいんだ!!」
「レオン。それは違うんじゃない?貴方は大切に大切に育てられた。王位継承権があるからじゃない。ちゃんと人として回りの人達が接してくれたんじゃない?レオンを庇った人も瑞希だって皆がレオンの事が大切なんだよ?確かに、大切な人を亡くしたのは辛い事だけど・・・だけど、その人の為にも強くならなきゃいけないと思わない?貴方には出来る事がまだまだあるはずだよ。」
「アオイは強いな。アオイも大切な人を亡くしたばかりだろう?俺もアオイのように強くなりたいよ。」
レオンの金色の瞳が葵を見つめた。
「私は強くなんてない。竜が死んでから何も手につかなくなった。死んだような日々をずっと送ってた。生きているのが辛かった。そんな時よレオンからの依頼が来たのは。竜が請け負ってた仕事をすることで何かが変わるかもしれないそう思ったの。」
「アオイが生きていてくれてよかったよ。俺も変われるかな?」
「ふふっ、もう変わってるんじゃない?レオンはきっと素晴らしい国王になれるわ。そしてアルミナ国の王族に巣くう魑魅魍魎を払うの。これ以上犠牲者を出さない為に、貴方にはそれが出来るはずよ?」
「アオイ・・・。ありがとう、もう俺は俺のすべき事から逃げないよ。」
「うん。」
葵は優しく微笑んだ。
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