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第3章
告白
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Cさんは、病院へ入院した。どうやら、あばら骨が折れたらしい。
その間に、男子グループは、全員が警察の取り調べを受けた。
直接Cさんに手を出した「リーダー格」の男子は逮捕され、他の者は、非行歴が付いた上に、全員退学処分となった。マスコミは、このニュースに色めき立ち、連日、校長先生や教育委員会の面々に、頭を下げさせた。
そして、被害者であるA君も、顔にモザイク。声も変えてもらって、沢山の取材を受けることになった。
その場で、全く抵抗しないCさんに、ひどい暴行を働いたリーダー。そして、周りでそれを見て楽しんでいた面々に対して、怒りの声を上げた。
その合間を縫って、Cさんの入院する病院に足しげく通い、毎回のように感謝と謝罪を繰り返した。Cさんは、
「もういいの。私、転校することに決めたから。少し遠いけど、A君も来ない?」
と、誘った。
しかし、A君は、家から学校まで遠くなること。通学の費用が高くなること。そして、悪者がいなくなったことで、転校の必要がなくなったと、即答で断ってしまった。
色々御託を並べていたが、結局は、今の学校でなら、エリートでいられること・・・。Cさんの行こうとしている高校は、レベルの高い私立高校だった。
そして、何よりも残忍なのが、Bさんのことを諦めきれないことだった。
そんな恩知らずな自分が嫌で、御託を並べていたのだ。そんな、最低な深層心理を持ちながら、自分の中で明確に気づいていないところが、A君のひどいところだった。
結局、Cさんのお誘いを無下にしたまま、Cさんは退院して、転校したため、せっかくかばってくれたのに、大したお別れも言えずに、会う事もなくなってしまった。
彼女からしたら、一生懸命にA君をかばい、そして、別の高校に一緒に転校したかった。そこまで熱心に関わろうとしたのも、A君に好意を寄せていたからだと、A君は、気づいていなかった。
しかし、Cさんの友人は、そのことをA君に伝えた。このままでは、あまりに不憫(ふびん)だと。
A君は、驚いた。もしそれが本当なら、一緒に転校、とまではいかなくても、週末に、デートなどすれば良かった。僕も、わが身を挺してかばってくれた、正義感のあるCさんの事が気になっていたから、病院にお見舞いに行ったのだ。
もし、もう一度チャンスがあるものなら、Cさんの事を大切にしたい。しかし、Cさんの友人も、もう連絡が取れない。この学校の面々とは、連絡を絶っていると、教えてくれた。
A君は、心に哀しみを刻み込んだが、過去は過去。どうしようもできないと、開き直った。
そして、何とかBさんと仲良くなれる方法を考え始めた。邪(よこしま)な気持ちで、勉強だけは頑張っていた。
しかし、それだけでは、「利用」されるだけで終わってしまう。そこで、丁度、同じ委員会や部活に入る事。そして、何かしら接点を持つことから始めようと、閃いた時だった。
先ほどの、Cさんの友人から、
「Cさんの住んでいるところは、変わっていないみたい。家に、連れて行ってあげようか?」
そう声を掛けられた。A君は、2つ返事で、Cさん宅を訪ねる事となった。しかし、あまりに楽観的なA君は、拒絶される可能性を「友人」から聞き、慌てて菓子折りを買いに行くほどだった。
昔から、いいところのお嬢さんだとは、聞いていた。だから、どんな邸宅。いや、豪邸に住んでいるのだろうと、とても気になった。
「ここよ!」
と、指さした先には、隣近所の家々の2倍の面積はあろうかという、広い2階建ての一軒家が、建っていた。
A君は、その堂々とそびえたつCさん宅に、圧倒された。ほおっておいたら、朝まで茫然(ぼうぜん)としているだろうと踏んだCさんの友人は、チャイムを鳴らした。
「ピンポーン ピンポーン」
A君は、その音で、我に返った。ここまで来たのは良いが、いったい、どんな顔をして会えば良いのだろう?
女子生徒は、「じゃあね」と言って、速足で帰ってしまった。その後に、
「はーい」
という女性の声が、インターフォンから聞こえてきた。A君は、一気に緊張が高まりながらも、
「あのー、えっとAという者ですが、Cさんは、ご在宅でしょうか?」
と、何とか噛まずに伝えられた。
Cさんは出てきてくれるだろうか? 少し時間が経ってから、玄関の戸が開き、あのCさんが出てきた。思わずホッとしたA君だったが、Cさんの表情は、硬かった。
「どうしたの? A君」
「Cさん。まずは、転校のお誘いを無下にして、すみませんでした」
「いいえ、それならご家庭の事情もあるだろうし・・・私立だから、こちらこそA君の事情も知らずに、ごめんなさい」
「違うんだ! あの時、すぐに断ったのは、実は、片思いの人が・・・」
「えっ!」
Cさんは、あまりの衝撃に、口元を覆った。A君は、話を続けた。
「僕は、Cさんに助けられながら、感謝の気持ちはあっても、恋心は生まれなかった。さっき、同級生からあなたの気持ちを伝えられて、びっくりしたけど、今も、自分の気持ちが分からない。あなたに逢えば、自分の気持ちはどうなのか、分かると思ったけど、やっぱり、まだ分からない。突然押しかけて、こんな話でごめんなさい」
「・・・ひどい」
Cさんは、溢れんばかりの涙を堪えていた。だが、A君はかける言葉も見つからず、下を向いた。Cさんは、泣き崩れ、こんなタイミングで、雨まで降ってきた。
Cさんは、泣き崩れて動けない。A君も、このタイミングで帰るのは、非情な決断である気がして、只々、立ち尽くしていた。
そして、数分が経ったころ、Cさんの涙と、雨が止んだ。そして、雲の間から晴れた空に、虹が架かった。
二人はその虹に見とれ、段々と色が薄くなって、最後に消えてしまうまで見届けた。
その間に、男子グループは、全員が警察の取り調べを受けた。
直接Cさんに手を出した「リーダー格」の男子は逮捕され、他の者は、非行歴が付いた上に、全員退学処分となった。マスコミは、このニュースに色めき立ち、連日、校長先生や教育委員会の面々に、頭を下げさせた。
そして、被害者であるA君も、顔にモザイク。声も変えてもらって、沢山の取材を受けることになった。
その場で、全く抵抗しないCさんに、ひどい暴行を働いたリーダー。そして、周りでそれを見て楽しんでいた面々に対して、怒りの声を上げた。
その合間を縫って、Cさんの入院する病院に足しげく通い、毎回のように感謝と謝罪を繰り返した。Cさんは、
「もういいの。私、転校することに決めたから。少し遠いけど、A君も来ない?」
と、誘った。
しかし、A君は、家から学校まで遠くなること。通学の費用が高くなること。そして、悪者がいなくなったことで、転校の必要がなくなったと、即答で断ってしまった。
色々御託を並べていたが、結局は、今の学校でなら、エリートでいられること・・・。Cさんの行こうとしている高校は、レベルの高い私立高校だった。
そして、何よりも残忍なのが、Bさんのことを諦めきれないことだった。
そんな恩知らずな自分が嫌で、御託を並べていたのだ。そんな、最低な深層心理を持ちながら、自分の中で明確に気づいていないところが、A君のひどいところだった。
結局、Cさんのお誘いを無下にしたまま、Cさんは退院して、転校したため、せっかくかばってくれたのに、大したお別れも言えずに、会う事もなくなってしまった。
彼女からしたら、一生懸命にA君をかばい、そして、別の高校に一緒に転校したかった。そこまで熱心に関わろうとしたのも、A君に好意を寄せていたからだと、A君は、気づいていなかった。
しかし、Cさんの友人は、そのことをA君に伝えた。このままでは、あまりに不憫(ふびん)だと。
A君は、驚いた。もしそれが本当なら、一緒に転校、とまではいかなくても、週末に、デートなどすれば良かった。僕も、わが身を挺してかばってくれた、正義感のあるCさんの事が気になっていたから、病院にお見舞いに行ったのだ。
もし、もう一度チャンスがあるものなら、Cさんの事を大切にしたい。しかし、Cさんの友人も、もう連絡が取れない。この学校の面々とは、連絡を絶っていると、教えてくれた。
A君は、心に哀しみを刻み込んだが、過去は過去。どうしようもできないと、開き直った。
そして、何とかBさんと仲良くなれる方法を考え始めた。邪(よこしま)な気持ちで、勉強だけは頑張っていた。
しかし、それだけでは、「利用」されるだけで終わってしまう。そこで、丁度、同じ委員会や部活に入る事。そして、何かしら接点を持つことから始めようと、閃いた時だった。
先ほどの、Cさんの友人から、
「Cさんの住んでいるところは、変わっていないみたい。家に、連れて行ってあげようか?」
そう声を掛けられた。A君は、2つ返事で、Cさん宅を訪ねる事となった。しかし、あまりに楽観的なA君は、拒絶される可能性を「友人」から聞き、慌てて菓子折りを買いに行くほどだった。
昔から、いいところのお嬢さんだとは、聞いていた。だから、どんな邸宅。いや、豪邸に住んでいるのだろうと、とても気になった。
「ここよ!」
と、指さした先には、隣近所の家々の2倍の面積はあろうかという、広い2階建ての一軒家が、建っていた。
A君は、その堂々とそびえたつCさん宅に、圧倒された。ほおっておいたら、朝まで茫然(ぼうぜん)としているだろうと踏んだCさんの友人は、チャイムを鳴らした。
「ピンポーン ピンポーン」
A君は、その音で、我に返った。ここまで来たのは良いが、いったい、どんな顔をして会えば良いのだろう?
女子生徒は、「じゃあね」と言って、速足で帰ってしまった。その後に、
「はーい」
という女性の声が、インターフォンから聞こえてきた。A君は、一気に緊張が高まりながらも、
「あのー、えっとAという者ですが、Cさんは、ご在宅でしょうか?」
と、何とか噛まずに伝えられた。
Cさんは出てきてくれるだろうか? 少し時間が経ってから、玄関の戸が開き、あのCさんが出てきた。思わずホッとしたA君だったが、Cさんの表情は、硬かった。
「どうしたの? A君」
「Cさん。まずは、転校のお誘いを無下にして、すみませんでした」
「いいえ、それならご家庭の事情もあるだろうし・・・私立だから、こちらこそA君の事情も知らずに、ごめんなさい」
「違うんだ! あの時、すぐに断ったのは、実は、片思いの人が・・・」
「えっ!」
Cさんは、あまりの衝撃に、口元を覆った。A君は、話を続けた。
「僕は、Cさんに助けられながら、感謝の気持ちはあっても、恋心は生まれなかった。さっき、同級生からあなたの気持ちを伝えられて、びっくりしたけど、今も、自分の気持ちが分からない。あなたに逢えば、自分の気持ちはどうなのか、分かると思ったけど、やっぱり、まだ分からない。突然押しかけて、こんな話でごめんなさい」
「・・・ひどい」
Cさんは、溢れんばかりの涙を堪えていた。だが、A君はかける言葉も見つからず、下を向いた。Cさんは、泣き崩れ、こんなタイミングで、雨まで降ってきた。
Cさんは、泣き崩れて動けない。A君も、このタイミングで帰るのは、非情な決断である気がして、只々、立ち尽くしていた。
そして、数分が経ったころ、Cさんの涙と、雨が止んだ。そして、雲の間から晴れた空に、虹が架かった。
二人はその虹に見とれ、段々と色が薄くなって、最後に消えてしまうまで見届けた。
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