青年A

宇佐川 昭俊

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第5章

君と一緒に1

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 朝日が部屋に差し込み、A君は目を覚ました。寝ている間、ずっとBさんの事を、夢見ていた。誰も、落とせない。そんな難攻不落なBさんに受け入れられ、イチャイチャする。夢だけど、幸せな時間だった。

「うしっ! 今日も頑張るか!」

 気合を入れて、ベッドから飛び起きた。両親に勘繰られるほど、てきぱきと支度をして、意気揚々と学校へと向かった。いつもより早く学校に着き、予習しよう! と、教科書を引っ張り出していると、登校してきたBさんと目が合った。いつもより輝いた目。そして、大きな声で、

「おはよう!」

と挨拶したA君だったが、Bさんはびっくりした様子で、

「あ・・・おはよう」

と返しただけだった。

 それも当然。A君は、今日だけ、ピカピカと輝いているのだ。いつもは、挨拶すらしない仲だったのに。

 授業中も、誰より真剣だった。何せ、国立大学への進学と、Bさんからのリスペクトが掛かっている。教科によって、得手不得手はあれど、常に、勉強においてはBさんに頼られたい。そんな自分が居た。

 男は、頼られたい生き物だ。そこから、Bさんとの距離を縮めていく。その目標が、A君にとって、一筋の光。希望となっていた。

 やはり、普段から勉強の成果が出ていても、維持するためには、血の滲むような努力をしている。そこには、モチベーションがなければ、長くは続かない。だからこそ、この光明の光は、A君には必要不可欠だった・・・例え、Bさんと結ばれなくても。

 そんな、淡い恋のために頑張っていたA君だったが、流石に勉強が難解になり、「塾に行きたい!」
と親に頼んだ。勿論、両親はOKを出した。

 それから、週末。A君は家族と共に、近所にある塾を一通り見学し、値段。雰囲気。合格実績などを確認しながら、慎重に塾選びを行った。家族3人で検討し、最終的にはA君が決めた。

 初日。案内されたクラスに行くと、まだ、人はまばら。半数近くが知らない顔だ。最前列では、既にカリカリと自習をしている人たちもいた。A君は、中ほどに座り、このクラスの雰囲気を観察していた。そうしていると、例によって、Bさんが現れた。

 お互いに、目と目が合い、軽く頭を下げた。そして、彼女は、いつものように女子グループへと向かっていった。ただ、会ったその一瞬。彼女はびっくりしていた。

 あとで、話しかけられるかな、と期待していたら、キャーキャーと騒ぎながら、女子グループを引き連れて、こちらへと、やってきた。

「真面目くん。今日、初日?」

「うん。そうだよ。流石に学校の授業だけじゃ、付いていけなくなったから」

「うそ! 真面目くんでも、そんなことがあるんだ!」

「えー、意外!」

 そう言うと、女子グループは、きゃはは、と笑いながら前列に戻っていった。そして、講師が入ってくると、立ち話をしていた生徒たちが、一斉に席へと向かった。

 いざ講義が始まると、高校とは違い、無駄なおしゃべりをする者は一人も居なかった。素晴らしい! ただただ講師の声と、シャーペンでノートにまとめる、カリカリという音が聞こえるだけ。

 みんな、本気の目でノートを取っており、A君も、その雰囲気に乗せられて、勉強がはかどった。

 塾って、良いなあ。帰り道。一人で、のほほんと、そんなことを考えていた。

「あ!」

 そう。よく考えたら、Bさん宅も、帰り道が途中まで一緒なんだっけ? 塾の初日は、色々と疲れて、いの一番に出てきたんだった。待っていれば、彼女は来るだろうか? それとも、友達とお茶でもしてから、帰るのだろうか? 

 ここまでの感触では、女友達を大切にする方だ。諦めて帰ろう。疲れたし。

 その日は、そのまま、トボトボと家路についた。

 翌日、目が覚めると、体が重かった。Bさんとの接点が得られなかったからではない。学校と塾の掛け持ちに、まだ、体が慣れていないためだ。それでも、これは、自分で言い始めたこと。それに、体はきつかったが、メンタルは折れていなかった。

 この生活に、どれくらいしたら慣れるだろう? そんなことを考えながら、今日も、登校していた。頭がボーっとしたまま、気が付くと、クラスの自分の席に座っていた。はあ。少し寝ようか。机に突っ伏すと、すぐに夢の中へと落ちていった。

 夕方の河川敷。Bさんと手をつなぎ、その綺麗な夕日を眺めながら歩き、日が沈んでいくのを、河原に座って二人で・・・。

 突然、体に衝撃が走った。体を揺さぶられていると分かるまでに、三秒要した。

「ふわ?」

 見上げると、Bさんがいた。少し、怒っているようにも見える。

「A君。もう、授業が始まるよ!」

 そう言って、彼女は席に戻っていった。ああ、「ありがとう」も、言えなかったな。
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