実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~

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2-7.元凶を探す

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 次々と周囲のメンバーが倒れ伏せたことに、ミラは困惑した。

 とりあえず、ミラはすぐ近くにいたアリスのもとに駆け寄る。
 顔色は青くなっており、口から泡のようなものを吹いていた。

 縦ロールの後ろから首に手をかけて、持ち上げると声をかけた。

「大丈夫? 返事をして頂戴!」

「うぅ……」

 かすれた声が聞こえた。

「生きてるわ。よかった」

(でもこの症状って……)

 ミラは彼女の顔色や症状を見て、魔物の情報が書かれたさまざまな文献を頭に思い浮かべる。
 そして、似た症状に『スネークキング』という魔物が散布する強力な毒だと気づいた。

 即死毒ではないが、メンバーの毒消しを急がないと命に関わるため、ミラは急いで対処する。

 まずは、気弾の魔法で空気を循環させて、新鮮な空気に入れ替える。
 次に、すぐに中級の毒回復ポーションを取り出して、飲ませた。
 すると、苦しそうだった症状が少し和らいだ。そして、目を開けたアリスがうめきながら体を起こす。

「一体何が……」

「よかった、目を覚ましたのね」

 ミラは、アリスから手を離した。

「え? なにこれ……あっ、毒を受けたのね!」

 アリスは毒回復ポーションを見て、この倒れたメンバーたちが毒にかかったことを理解した。流石に冒険者をしているだけはある。

 ミラは、メンバー全員を毒回復ポーションで回復させた。
 次々と3人が立ち上がり、ミラたちを不思議そうな顔で見つめるのだった。


***


 しばらくして、ミラたちは周囲を警戒しつつ、草むらの中に隠れ潜んでいる魔物を探した。

「いませんね」

 メイはため息を付いた。
 ヴォルフは、代表してミラにお礼を言った。

「今回はありがとうございます。薬師の方がいなければあそこで全滅していました」

 ミラは頭を下げるヴォルフを手で制した。

「いえ、それより私はまだ正式に薬師ではないので」
「それでもです! 感謝してます」

 ミラは自分の口に人差し指を当てて、ジェスチャーでヴォルフに静かにするように伝える。

「何かいます」

 カサカサ。
 草むらから何かが動く音を聞いた。

 ミラはその場に駆け寄る。
 剣を抜くと、雑草の手前で剣先を下から上に切り上げる。
 その動きは、ほんの一瞬。ヴォルフが止める間もなかった。

 剣先から視線を上に向けると、蛇のような魔物が胴を切られて空中に舞った。
 地面に落ちた魔物を見つめるミラ。

「これってやっぱり……スネークキングだわ。しかも、生体器官が大きかった。たぶん異常個体だったのね」

 ミラはぼそっと言う。
 それにヴォルフが反応した。

「まさか! ランクCのスネークキングですか?」

「ええ、魔物の本で読んだのだけど、毒を空気中に散布して、獲物を弱らせてから巣に持ち帰る魔物と記述があったわ。本の挿し絵とも似ているし、間違いないはず。異常個体だったのなら」
「……ランクBオーバー」

 メイは口に手を当て、アリスは驚愕の表情で地面に倒れた魔物の死体を見つめた。
 アリスは呟いた。

「スネークキングがこんな森の浅いところにいたっていうの?」

 これは異常事態だった。そもそも低ランクの冒険者が普段出入りするような浅い場所に出る魔物ではない。そもそもこの辺の森にスネークキングがいることすら衝撃の情報だったのだ。

 ミラはメンバーの顔色や話す内容を聞いて、首を傾げた。

「そんなにおかしいことだったのですか?」

 それにアリスが答える。

「当たり前よ! 私達のようなランクの低い冒険者パーティが遭遇したら全滅するもの。ギルドがミスしたっていうよりも、ここにスネークキングがいるのがもうおかしいのよ」

「そうなのですか……」

 ミラは前回の深海クラゲといい、普通はいないはずの異常個体に遭遇した。

(もしかして……偶然じゃない?)

 メイが困惑して、ヴォルフに問う。

「それでどうしたらいい? 一度ギルドに帰る?」

「いや、スネークキングはすでに撃破したんだし意味ないだろう。とりあえず、依頼を達成した後にギルドに報告しておけばいい。それよりも、毒の方は大丈夫なのか? むしろ、続けるかどうかはそれ次第だ」

「私は大丈夫かな」

 メイだけでなく残りの2人も大丈夫と返事をする。

「じゃあ、このまま進むんですね?」

 ミラは問う。

「えっと、ミラさんは……大丈夫そうですね」


 ミラは、自分の体が毒に強くなっていることに気づいた。薬草を食べて体が毒に耐性をつけたのかも知れないと推測する。

「はい……。もし、毒を使う魔物がいても毒回復ポーションを持ってきているので大丈夫なはずです」

 しかし、スネークキングを後続の援護なく撃破した、という快挙は、このときはまだ誰も気づかなかった。
 スネークキングは、どんなに強い冒険者でも、あの強力な毒の餌食えじきになるため、毒消しポーションを持っていても対抗することはできない。
 気づいたときには意識を失って、体中が毒の痛みにむしばまれるためである。

 だから、スネークキングを倒すには、鉱山のカナリアのような役目を引き受けたメンバーから多数の犠牲を出した後に、後続が倒すほかない。

 メクがホッとした声で安堵する。

「ミラさんがいてよかったです」

「ええ、本当に運が良かったです」

 ミラは森に生えていた薬草に感謝した。食べたことで、ミラの体は体質の変化を起こしたから助かったのだと。

 今回、スネークキングの撃破に全員があっけにとられたこと、異常個体のインパクトで、誰もミラの力量を指摘する者はいなかった。
 ミラがただの付添人ではないということだけは誰もが感じていた。

 10分くらい歩いたところで、ヴォルフは森の前方を指差した。

「もうすぐトレントの生息域です」
「トレントとストーンゴーレム、ライノバイソンの順番で良かったんですよね?」
「そうだね。距離的にはこの順番かな」

 ミラは不穏なことを口にした。

「もう異常個体は出ないですよね……」
「あはは、あれはきっと突然変異ですよ。偶然のね。さすがに異常個体が何体も同じ森に出るなんて聞いたこともないですから」

 経験の浅いヴォルフでも熟練冒険者の話はよく聞いているが、異常個体に遭遇すること自体が稀で、しかも複数体なんてことが普通はありえない。

 メイも彼に同意する。

「だよね~。ありえないもん」

 ミラはうなずいた。

「そういうものなんですね」

 だから、メンバーたちは安心しきっていた。
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